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前回のレイヤードアーキテクチャに続き、今回ははパイプラインアーキテクチャについてです
これからもアーキテクチャについて書いていこうと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします

パイプラインアーキテクチャとは?

データ処理が中心となるシステムにおいて、驚くほどシンプルでありながら強力な解決策を提供してくれるのが「パイプラインアーキテクチャ」です
このアーキテクチャは、複雑な処理を小さな独立したステップに分解し、それらを一列に連結することで、全体のデータフローを構築します
その構造の明快さから、開発経験が浅い方でも直感的に理解しやすいという大きな利点があります

パイプラインアーキテクチャは、データを一方向に流す「パイプ」と、各段階で特定の処理を行う「フィルター」から構成されることから、「パイプとフィルター」アーキテクチャとしても知られています
この概念は、実は多くのエンジニアが日常的に触れているものです。例えば、Unix/Linuxのシェルコマンドはその典型例です。
例)
history | grep "git" | wc -l
結果:「過去に自分が何回 git コマンドを使ったか」という数字だけが表示
 history: 全履歴を出す
 grep "git": "git" を含むものだけ選別する
 wc -l: その選別された行数を数える

個別のコマンド(フィルター)が、パイプ記号 | で連結されています
各コマンドは前のコマンドの出力を受け取り、自身のタスクを実行して次のコマンドに結果を渡します
このように複数の単純な処理を組み合わせることで、一つの複雑なタスクを実現するのが、パイプラインアーキテクチャの基本的な考え方になります

アーキテクチャの基本構造

パイプラインアーキテクチャの魅力は、その単純な構造です
データを運ぶ「パイプ」と、データを処理する「フィルター」という、たった2種類の構成要素で成り立っています

パイプ:データの通り道

パイプは、データがフィルターからフィルターへと流れるための経路です
その役割は非常にシンプルですが、以下の重要な特性を持っています。

  • 一方通行の通信チャンネル
    データは必ず一方向にのみ流れます
    これにより、処理の流れが単純明快になり、システム全体の予測が簡単になります
  • ポイントツーポイント接続
    パイプは通常、一つのフィルターの出口と、次の一つのフィルターの入口を直接つなぎます
    これにより、データが意図しない場所に流れることを防ぎます
  • 軽量なデータ形式の推奨
    パフォーマンスを最大限に引き出すため、パイプを流れるデータは、できるだけ軽量な形式であることが好まれます
    例えば、JSONなどです

フィルター:単一タスクを実行する処理装置

フィルターは、パイプラインアーキテクチャにおける「処理装置」です
各フィルターは自己完結しており、他のフィルターから独立しています
そして最も重要な原則は、一つのフィルターは単一のタスクのみを実行するということです
この原則により、各フィルターの再利用性やテストの容易性が高まります

フィルターはその役割に応じて、以下の4種類に分類されます。

フィルターの種類 説明
プロデューサー パイプラインの開始点となるフィルター。外部からデータを取り込み、パイプラインに最初のデータを流し込みます
トランスフォーマー パイプからデータを受け取り、そのデータを加工・変換して、次のパイプへ送るフィルター。計算、フォーマット変更、情報の付加などを行います
テスター データを受け取り、特定の条件に基づいてデータを検査するフィルター。条件を満たすデータのみを次のパイプへ流したり、条件によって流す先を分岐させたりします 
コンシューマー パイプラインの終着点となるフィルター。処理された最終的なデータを受け取り、データベースへの保存や、外部システムへの送信、UIへの表示などを行います

アーキテクチャの評価

利点

パイプラインアーキテクチャは、特にそのシンプルさとモジュール性に由来するいくつかの明確な利点を提供します

  • シンプルさと低コスト
    このアーキテクチャは、通常モノリシックな(単一のユニットとしてデプロイされる)構成を取るため、分散アーキテクチャのようなネットワーク通信やサービス間連携の複雑さがないです
    そのため構造が直感的で理解しやすく、構築や維持にかかるコストを比較的低く抑えることができます
  • モジュール性
    各フィルターが独立した単一の責務を持つコンポーネントであるため、高いモジュール性を実現します
    あるフィルターのロジックを変更したり、新しいフィルターに置き換えたりする場合でも、他のフィルターに影響を与えることなく作業を進めることが可能です
    これにより保守性と拡張性が向上します

欠点

  • モノリシックな性質
    アプリケーション全体が通常、単一のユニットとしてデプロイされます
    これは、たとえごく一部のフィルターに小さな変更を加えただけでも、アプリケーション全体を再デプロイする必要があることを意味します
    これにより、デプロイのリスクと手間が増大してしまいます
  • 低いスケーラビリティと弾力性
    アプリケーション全体としてしかスケールできないため、特定のフィルター(例えば、処理負荷が非常に高いトランスフォーマー)だけを独立してスケールさせることが困難です
    このため、システム全体の性能は、最も遅いフィルターの性能に制約されてしまいます
  • 耐障害性の欠如
    モノリシックな構造のため、パイプラインの一部で致命的なエラー(例:メモリ不足)が発生すると、アプリケーション全体が停止してしまいます
    特定のフィルターの障害がシステム全体の可用性に影響を及ぼすため、ミッションクリティカルなシステムには不向きな場合があります

最後に

パイプラインアーキテクチャは、シンプルで一方向のデータ処理タスクに最適な選択肢です
特に、ETL処理、データ変換、簡単なバッチ処理など、高いスケーラビリティや耐障害性が絶対条件ではないアプリケーションにおいて、そのシンプルさとモジュール性は大きな価値を発揮します
一方で、複雑なビジネスロジックや、高いパフォーマンスと可用性が求められる大規模システムを構築する際には、他のアーキテクチャスタイルを検討するべきです
アーキテクチャの選択は常にトレードオフの連続ですこのパイプラインアーキテクチャの特性を正しく理解し、解決すべき問題の本質と照らし合わせることが大切です

ここまで読んでいただきありがとうございました!!!

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