生成AIの業務活用が進む中、AWSでも複数の関連サービスが登場しています。
この記事では、以下の3つの主要サービスの違いと使い分けを、公式のAWS Generative AI Stackをもとに整理します。
- Amazon Q
- Amazon Bedrock
- Amazon SageMaker
各サービスのレイヤーと役割
引用:(https://speakerdeck.com/icoxfog417/aws-mission-and-generative-ai-services-programs?slide=24)
🟩 レイヤー①:生産性を向上させるアプリケーション
● Amazon Q
特徴的なポイント
- AWSが提供する生成AIアシスタントのブランド名
- 主に2つの製品がある:
- Amazon Q Business:社内業務支援・ナレッジ検索
- Amazon Q Developer:開発者支援・コーディング補助
- ノーコードなチャットUIで、自然言語による対話が可能
- IAMやSSO連携によりセキュアな情報アクセス管理が可能
代表的なユースケース
シーン | 使用するAmazon Q | 活用例 |
---|---|---|
社内の問い合わせ対応を自動化 | Q Business | 「就業規則どこ?」に即時回答、PDFも自動要約 |
社内文書を横断検索 | Q Business | SharePointやS3をまたいだキーワード検索 |
AWSリソースの構築支援 | Q Developer | 「EC2にNginxを立てる構文を教えて」→コード出力 |
コーディング補助 | Q Developer | IDE上での補完、構文チェック、バグ解析 |
強み
- 業務部門〜開発者までカバーする広範な用途
- AWSサービスとの統合性が非常に高い
- 非エンジニアでも使いやすいUI(チャット形式)
- ナレッジ管理 + 会話履歴に対応しており業務継続性が高い
注意点
- 独自モデルの構築・学習は不可(それはSageMakerの領域)
- UIは柔軟だが、回答ロジックはブラックボックス
- 特定業界の専門用語などには対応不足の可能性あり(カスタマイズ性は限定的)
🟧 レイヤー②:生成AIアプリケーションを構築するためのモデル・ツール
● Amazon Bedrock
特徴的なポイント:
- Claude、Llama、Mistral、TitanなどをAPIで使える
- RAGやFine-tuneによるカスタマイズが可能
- ノーコードUI(Bedrock Studio)で試すことも可能
- AWSサービス(Lambda, S3, CloudWatchなど)との連携が容易
ユースケース例:
- Webアプリに生成AIを組み込みたい
- 音声認識→要約→保存などのAIパイプライン
- FAQ自動回答Bot
主なモデルと特徴:
モデル | 提供元 | 特徴 |
---|---|---|
Claude 3 | Anthropic | 高精度・長文対応、会話に強い |
Llama 3 | Meta | 軽量・オープンソース系、社内環境にも最適 |
Titan | AWS | AWS独自、信頼性とコスト効率を両立 |
Mistral | Mistral AI | 軽量高速、低コスト推論に向く |
🟪 レイヤー③:AIモデルを構築・学習させるためのインフラストラクチャ
● Amazon SageMaker
特徴的なポイント:
- 生成AIだけでなく、画像認識・分類・時系列予測などにも対応
- SageMaker StudioでクラウドJupyter環境が使える
- AutopilotでAutoML、自動チューニングにも対応
- AWS Trainium / Inferentiaなどの専用チップにも対応
ユースケース例:
- 独自データで生成AIモデルを再学習したい
- セキュリティ重視で自社内完結のAI開発が必要
- モデルの継続改善をCI/CD化したい(MLOps)
構成モジュールと機能:
モジュール | 内容 |
---|---|
Studio | ブラウザ上の統合IDE(Jupyterベース) |
Autopilot | データだけ指定すれば最適モデルを自動選定・訓練 |
JumpStart | 事前学習済みモデルのテンプレ利用 |
Pipelines | モデル学習やCI/CDの自動化パイプライン |
共通点と相違点の整理
比較項目 | Q Business | Bedrock | SageMaker |
---|---|---|---|
利用対象 | 業務ユーザー | アプリ開発者・MLOps担当 | データサイエンティスト |
主な用途 | 社内業務支援・FAQ対応 | アプリへの生成AI統合 | モデルの構築・学習 |
モデル選択 | AWS提供のQ専用モデル | Claude, Llama, Mistral等 | 自作またはOSSモデル |
ノーコード対応 | ◎ | ◎ | △ |
チューニング | × | 一部可(Fine-tune/RAG) | ◎ |
まとめ:選ぶ基準は「誰がどう使うか」
- Amazon Q → ノーコードで業務改善に直結
- Bedrock → APIでアプリやサービスにAIを統合したいとき
- SageMaker → 高度なモデル構築やチューニングが必要なとき
誰が使うかと何をしたいかによって、ベストな選択肢が変わることが重要です。
参考リンク
この記事が「どのサービスを選ぶべきか」に迷う方の一助になれば嬉しいです!
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