はじめに
API開発において、仕様書の管理、テスト実行、モックサーバーの構築は重要な作業です。
私は長年Postmanを使用してきましたが、以下の課題を感じていました。
Postmanで感じていた課題
- Swaggerとの二重管理: API仕様書をSwaggerで管理し、テストをPostmanで実行するため、仕様変更時に両方を更新する必要があった
- CORSエラーの発生: クラウドMockを使用する際にCORSエラーが発生し、フロントエンド開発時にはプロキシ設定が必要
// vite.config.tsでのプロキシ設定例
export default defineConfig({
server: {
proxy: {
'/api': {
target: 'https://mock.postman.com',
changeOrigin: true,
secure: false
}
}
}
})
- データ型の可視性不足: リクエストとレスポンスのデータ型が分かりづらく、開発効率が低下
これらの課題を解決するため、最近注目されている「Apidog」を実際に使用してみました。本記事では、その使用感とPostmanとの違いについて詳しく解説します。
対象読者
- API開発者
- フロントエンド・バックエンドエンジニア
- 現在Postmanを使用している方
Apidogとは
Apidogは、API開発に特化した統合開発ツールです。API仕様書の作成、テスト実行、モックサーバーの構築を一元管理できます。
公式サイト: https://apidog.com/jp/
PostmanとApidogの違い
Postmanの特徴
対象: API利用者(テスト・デバッグ)
主な用途: APIのテスト実行、コレクション管理
メリット:
- 豊富なテスト機能
- 大規模なコミュニティ
- 多くの統合機能
デメリット:
- 仕様書管理が別途必要
- モックサーバーでCORSエラーが発生
- データ型の可視性が低い
Apidogの特徴
対象: API開発者(設計・開発・テスト)
主な用途: API仕様書作成、モックサーバー、テスト実行
メリット:
- 仕様書・テスト・モックの一元管理
- CORS設定が不要
- データ型が視覚的に分かりやすい
- 既存のAPI仕様をコピペで簡単に移行可能
デメリット:
- 比較的新しいツールのため、コミュニティが小さい
- 一部の高度なテスト機能が不足
比較表
| 項目 | Postman | Apidog |
|---|---|---|
| 仕様書管理 | 別途必要 | 統合済み |
| モックサーバー | CORSエラー発生 | CORS設定不要 |
| データ型表示 | 限定的 | 視覚的で分かりやすい |
| 移行コスト | - | 低い(コピペ対応) |
| テスト機能 | 豊富 | 基本的な機能 |
| チーム協業 | コレクション共有 | 仕様書共有 |
Apidogの主要機能
1. API仕様書の一元管理
Apidogでは、API仕様書を視覚的に作成・管理できます。
特徴:
- データ型がすぐに確認できる
- リクエスト・レスポンスの構造が分かりやすい
- チーム内での仕様共有が容易
- API仕様書の作成をコピペで簡単に設定可能
2. 様々なフォーマットからのインポート
対応フォーマット:
- OpenAPI/Swagger
- Postman
- Insomnia
- curl
メリット:
- 既存のAPI仕様を簡単に移行可能
- 初期コストが低い
3. モックサーバー機能
クラウドモックサーバー
// 例: ユーザー情報取得APIのモックレスポンス
{
"id": 1,
"name": "田中太郎",
"email": "tanaka@example.com",
"created_at": "2024-01-01T00:00:00Z"
}
特徴:
- CORS設定が簡単
- IP制限が可能
- チーム全体でモックの挙動を統一
- モックサーバーの設定をJSONのコピペで簡単に実装可能
フロントエンド開発での活用
Postmanとの違い: ApidogのモックサーバーはCORS設定が不要で、フロントエンドから直接呼び出し可能です。
// フロントエンドからモックAPIを呼び出し(CORSエラーなし)
const response = await fetch('https://mock.apidog.com/api/users/1');
const user = await response.json();
console.log(user); // モックデータが返される
実際の開発フロー:
- バックエンド開発者がApidogでAPI仕様書を作成
- モックサーバーを設定
- フロントエンド開発者がモックAPIを直接呼び出し
- プロキシ設定不要で開発を開始
実際の使い方
1. プロジェクトの作成
- Apidogにログイン
- 「新しいプロジェクト」をクリック
- プロジェクト名と説明を入力
2. API仕様書の作成
エンドポイントの追加
- こちらの手順はPostmanとほぼ同じですがCookieの設定などがApidogの方がわかりやすい印象でした
レスポンス例の設定
{
"id": 1,
"name": "田中太郎",
"email": "tanaka@example.com",
"created_at": "2024-01-01T00:00:00Z"
}
3. モックサーバーの設定
- APIエンドポイントを選択
- 「モック」タブをクリック
- JSONレスポンスをコピペで設定(既存のAPIレスポンスをそのまま貼り付け可能)
- モックURLを取得
コピペでの設定例
- 既存のAPIレスポンスをコピペ
{
"status": "success",
"data": {
"users": [
{
"id": 1,
"name": "田中太郎",
"email": "tanaka@example.com"
}
],
"pagination": {
"page": 1,
"limit": 10,
"total": 100
}
}
}
4. テストの実行
curlでのテスト例
# curlでのテスト例
curl -X POST https://mock.apidog.com/api/users \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"name": "山田花子", "email": "yamada@example.com"}'
JavaScriptでのテスト例
// フロントエンドでのAPI呼び出し例
async function createUser(userData) {
try {
const response = await fetch('https://mock.apidog.com/api/users', {
method: 'POST',
headers: {
'Content-Type': 'application/json',
},
body: JSON.stringify(userData)
});
if (!response.ok) {
throw new Error(`HTTP error! status: ${response.status}`);
}
const result = await response.json();
console.log('ユーザー作成成功:', result);
return result;
} catch (error) {
console.error('エラーが発生しました:', error);
}
}
// 使用例
createUser({
name: "山田花子",
email: "yamada@example.com"
});
5. 実際の開発での活用例
バックエンド開発者向け
- API仕様書の作成: 既存のSwaggerファイルをインポート
- モックデータの設定: 実際のレスポンス形式に合わせてJSONをコピペ
- チーム共有: フロントエンド開発者にモックURLを提供
フロントエンド開発者向け
- モックAPIの利用: バックエンドの実装を待たずに開発開始
- データ型の確認: Apidogの仕様書でリクエスト・レスポンスの型を確認
- テストデータの活用: モックサーバーから返されるデータでUIをテスト
チーム開発での活用
仕様書の共有
- チームメンバー全員が同じ仕様書を参照
- 変更履歴の管理
- コメント機能での議論
モックサーバーの統一
- フロントエンド・バックエンドで同じモックデータを使用
- 開発環境の統一
注意点
- データの機密性: モックサーバーに機密データを設定しない
- パフォーマンス: 大量のリクエストには制限がある
- バージョン管理: API仕様の変更時は適切にバージョニングする
まとめ
Apidogは、API開発の効率化に特化したツールです。特に以下の点で優れています:
主なメリット
- 一元管理: 仕様書・テスト・モックを統合し、Postmanの二重管理問題を解決
- CORS問題の解決: フロントエンド開発時のプロキシ設定が不要
- データ型の可視性: リクエスト・レスポンスの構造が視覚的に分かりやすい
- 低い移行コスト: 既存のAPI仕様をコピペで簡単に移行可能
- チーム協業: 仕様の共有とモックの統一により、開発効率が向上
導入を検討すべきケース
- PostmanでSwaggerとの二重管理に悩んでいる
- フロントエンド開発でCORSエラーに困っている
- API仕様書の可視性を向上させたい
- チームでのAPI開発効率を向上させたい
デメリット・注意点
- 比較的新しいツールのため、コミュニティが小さい
- 高度なテスト機能はPostmanの方が充実している
- 既存のPostmanワークフローを大幅に変更する必要がある
API開発を効率化したい方、特にPostmanの課題を感じている方は、ぜひApidogを試してみてください。
今後について
今後の活用予定
- AI機能: API仕様書の自動生成やテストケースの提案
- MCP Server: Cursorなどの開発環境との連携強化
- チーム導入: 現在のプロジェクトでのApidog活用をチーム全体に展開
期待している機能
- より高度なテスト自動化機能
- CI/CDパイプラインとの連携
- パフォーマンステスト機能の充実