はじめに
Windsurf愛用者の皆さん、右上のモデル選択画面に見慣れない 「ペンギン」 はいませんか?
その名も 「Penguin Alpha」。
一部のユーザーの間では「ステルスモデル」と呼ばれ、「とにかく速い」「今のところ無料(制限あり)」 と噂されています。
「タダで使えるなら、使い倒すのが礼儀」
そう考えた私は、Windsurf標準の賢いモデル 「Cascade (SWE-1)」 と、この新参者 「Penguin Alpha」 を同じプロンプトで戦わせてみました。
結論から言うと、「ペンギンは爆速だが、たまに自分の足で転ぶ愛すべきやつ」 でした。
本記事では、実際のコード比較を通じて、その実力と「盛大なやらかし(グリッチ)」をレポートします。
検証ルール:100件のデータを1ファイルで
AIにとって「短距離走(スピード)」と「長距離走(記述量)」の両方を試すため、以下の特盛プロンプトを用意しました。
指令:
React + Tailwind CSSで「暗号資産トレーディングダッシュボード」を作れ。
- データ生成: 100件のダミーデータを生成すること。
- 機能: リアルタイム更新、ソート、フィルタ機能を実装すること。
- 制約: 1つのファイルに完結させ、最速で出力すること。
Round 1: 衝撃の「ツール呼び出しエラー」
まず、Penguin Alphaに指示を投げた瞬間です。
猛烈なスピードで思考ログが流れ始めたかと思うと……
ドンッ!!
Penguin Alpha: 「ツール呼び出しのJSON形式が無効です」
転びました。
どうやら、張り切りすぎてスピードを出した結果、Windsurfの「ファイル書き込みツール」への命令文(JSON)を書き損じたようです。
この「じゃじゃ馬感」、ベータ版らしくて逆に燃えますね。
気を取り直して、「ファイルを作らなくていいから、チャット欄にコードを書いて」 と優しく諭すと、今度は完走してくれました。
Round 2: コードの品質比較(優等生 vs 力技)
出力されたコードを、標準モデルの SWE-1 (Cascade) と比較してみます。性格の違いがはっきりと出ました。
🐢 SWE-1 (Cascade):論理的な優等生
SWE-1は、100件のデータを生成するために「アルゴリズム」を書きました。
// SWE-1: スマートな実装
const generateDummyData = () => {
const pairs = ['BTC/USDT', 'ETH/USDT', ...]; // 10個くらい定義
// ループでランダムに組み合わせる
const data = Array.from({ length: 100 }, (_, i) => {
// ...ロジックで生成
});
return data;
};
「通貨ペアのリストは最小限にして、あとはロジックで増やす」。
非常にエンジニアらしい、効率的なアプローチです。
🐧 Penguin Alpha:力技のビジュアル担当
一方、Penguin Alphaのコードを見て爆笑しました。
// Penguin Alpha: 圧巻のハードコード
const cryptoPairs = [
'BTC/USDT', 'ETH/USDT', 'BNB/USDT', 'ADA/USDT', 'XRP/USDT',
// ... (中略) ...
'SPELL/USDT', 'IMX/USDT', 'SAND/USDT' // ←本当に100個近く書いてある!
];
全部手書き(ハードコード)してきました。
「100件データを作れ」と言われて、律儀に(あるいは思考停止で)大量の通貨ペアを列挙するこのパワープレイ。64kトークンという広いコンテキストウィンドウを「辞書」として使ってきました。
しかも「オシャレ」にうるさい
さらにPenguinは、頼んでもいないのにUIを凝り始めました。
// Penguin Alpha: 謎のこだわり
<h1 className="... bg-gradient-to-r from-blue-400 to-purple-500 bg-clip-text text-transparent">
Crypto Trading Dashboard
</h1>
<div className="w-2 h-2 bg-green-400 rounded-full animate-pulse"></div>
-
グラデーションテキスト (
bg-gradient-to-r) -
パルスアニメーション (
animate-pulse)
SWE-1が「機能要件」を満たすことに集中したのに対し、Penguinは 「デモ映え」 を最優先しています。
Round 3: 結論(使い分け戦略)
今回の検証で、Windsurfにおける「脳(SWE-1)」と「脊髄(Penguin)」の役割分担が明確になりました。
| 特徴 | 🐢 Cascade (SWE-1) | 🐧 Penguin Alpha |
|---|---|---|
| 速度 | 普通(思考時間あり) | 爆速(思考ゼロ) |
| アプローチ | ロジカル。アルゴリズムで解決する。 | 直感的。力技とハードコードで解決する。 |
| 得意技 | 複雑な設計、リファクタリング、バグ調査 | UIモック作成、デモアプリ、単純作業の量産 |
| 弱点 | 初動が少し遅い | 複雑なツール操作で転ぶことがある |
私の推奨ワークフロー
-
Penguin Alphaで「0→1」:
「なんかカッコいいダッシュボード作って!アニメーション付きで!」と投げる。
→ 爆速で「映える」モックが出てくる。 -
SWE-1で「1→10」:
「このハードコードされた配列を直して、コンポーネントに分割して」と指示する。
→ 堅牢なコードに生まれ変わる。
Penguin Alphaは、「細かいことはいいから、とりあえず動くカッコいい画面が見たい!」 という欲望に、光の速さで応えてくれる最高の相棒です。
今はまだ「ステルス」な存在ですが、このスピード感と「お茶目なグリッチ」は一度味わうとクセになります。
皆さんも、無料枠が生きているうちに、ぜひこの 「暴走ペンギン」 を手懐けてみてください。
🔗 著者情報
山本 勇志 (Yushi Yamamoto)
株式会社プロドウガ代表 / フルスタックエンジニア
「AIは育ててこそ、最強の参謀になる」。WindsurfやCursorなどのAIエディタを使い倒し、泥臭い検証結果をQiitaで発信中。
- X (Twitter): @UshiAiPro
- Company: PRODOUGA
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