背景と目的
長期思考をする上で"豊かさ"が大きな視点だった。
豊かさを因数分解している中で"礼(れい)"が重要な要因に見えてきている。
礼について、考えてみる。
1. 礼とは何か?
1.1. 日本語の礼
礼の旧字は、"禮"である。
そもそも文字の中に"豊"が含まれている。
まず、"礼"の意味を並べてみる。
①秩序ある社会生活を営むうえでの定まった作法や儀式。のり。「礼儀」「礼節」
②うやまう。敬意をはらう。「礼賛」「拝礼」
③感謝の気持ち。「礼状」「謝礼」
漢字ペディア:礼より
社会生活を送る上で定まった行動規範。
うやまう。もてなす。敬意を表す。敬意をはらう。
感謝の気持ちを表す。また、そのための金品や言葉。
礼について記した書物。
漢字辞典オンライン:漢字「礼」についてより
①「人のふみ行うべき規範」、「心に敬意を抱き、それを行動として外に示す事」
②「作法」、「礼儀作法」
③「儀式」
④「国家・社会の秩序を維持する組織やおきて」
⑤「贈り物」
⑥「うやまう」、「敬意を表す」(例:敬礼)
⑦「礼について書いた経書」(礼記(らいき)、周礼(しゅらい)、儀礼(ぎらい)の三書の事を言う)
語源辞典:「礼/禮」という漢字より
まとめ
礼を示す書物以外での整理をすると、
大きくは下記の3つに集約できる。
a1 感謝の気持ちを表す。
a2 うやまう。敬意をはらう。
a3 秩序ある社会生活を営むうえでの定まった作法や儀式。
a1 感謝,a2 敬意は、主に個と個の関係での実践である。
a3 作法や儀式は、個と集団の関係での実践である。
礼とは"関係における実践"である。
礼の意義は2つあり、社会秩序の維持と相互関係の構築になる。
1.2. 儒教の礼
儒教の四書五経の中に『礼記(らいき)』がある。
礼記には、後漢の時代に全49篇がおさめられているが、雑多に編纂されたものになる。
朱熹がこのうちの2篇を四書として分離し、『大学』『中庸』にしている。
礼記には、礼だけでなく、雑多な物事が示されている。
一番目の曲礼で五礼として、5つに分類をしている。
五礼の整理
| 区分 | 名称 | 主な内容 | 目的・役割(分類概要) |
|---|---|---|---|
| 吉礼 | 祭祀の礼 | 天神・地祇・祖先への祭祀(禋祀・実柴・槱燎・血祭など) | 天地・祖先との関係を整え、国家と家の安定を祈る「祈福」の礼 |
| 凶礼 | 喪葬・災害の礼 | 喪礼・弔礼・荒礼・檜礼・恤礼など | 死・災害・不幸に対する「哀悼・弔慰・救済」の礼 |
| 賓礼 | 賓客・外交の礼 | 朝・宗・覲・遇・会・同・問・視など | 君臣・諸侯・国家間の秩序を保つ「外交・接遇」の礼 |
| 軍礼 | 軍事・国家事業の礼 | 大師・大均・大田・大役・大封など | 軍事行動や国家的大事業の正統性を示す「軍政・国家運営」の礼 |
| 嘉礼 | 慶事・人生儀礼の礼 | 冠礼・婚礼・射礼・宴会・賀慶など | 人生の節目や慶事を整える「祝賀・社会秩序形成」の礼 |
論語の礼
論語の第1篇となる学而(がくじ)で礼と和の比較が示される。
有子がいった。
「礼(儀礼のさだめ)の活用は、和と一緒になってうまくいく。
かつての聖王のやり方も、礼と和が両輪となって立派だった。
実際には和を大切にするだけではうまくいかないことがある。
和の精神がわかっていて仲良くしていても
礼でけじめをつけないとうまくいかない」
齋藤 孝(訳)(2016).論語.筑摩書房. 学而第一 12
和=調和は、単独ではうまくいかないことがある。
礼があることで、けじめ(=区別、隔て)ができてうまくいく。
和については、同と和の比較で示している。
先生がいわれた。
「君子は人と和らぎ協調するが、やたらとつるんだりしない。
反対に、小人はよくつるむが、協調性はない」
齋藤 孝(訳)(2016).論語.筑摩書房. 子路第十三 23
和とは違いがあるものごとが前提にある、それらが協調し善い状態を維持する。
その状態を"和"としている。
礼とは、和=協調だけでうまくいかない状態を"礼"というけじめにより、
協調をしやすくする方法を指す。
2. 輻輳と優先
2.1. 輻輳(ふくそう)
IT業界で"輻輳"は、アクセスが集中している状態を示す。
人が少ない状態では、人が集中する状態がめったに発生しない。
人が多くなると、集中する状態が発生しやすくなる。
集中している状態で、"礼"が必要になってくる。
逆に集中していない状態では、"礼"はあまり必要ではない。
礼とは"輻輳"が起こる環境での実践として生まれたと推測する。
輻輳時は、頻繁に衝突が発生する。
衝突を少なくするために、時間で区切ったり、優先度を設けたりする。
OSのタスク制御と同じ仕組みである。
人間社会の中で和(≒儒教の仁)という目的を達成するために実践として、
礼=プロトコルがあるといえる。
ただ、輻輳がしなくなった時には、プロトコルもしくはモードを変えるべきだろう。
2.2. 優先
衝突回避のためのプロトコルとしての、礼がある。
もうひとつ和(=協調、調和)としての軸は、敬意=お互いを尊重する意志である。
和を大切にするだけではうまくいかない状態が、
左上の状態である。
9. リンク
qiita
【深化のプロセスを考える④】変化の書~易経(The Book of Changes)~
URL
漢字ペディア:礼
漢字辞典オンライン:漢字「礼」について
wikipedia:礼(儒教)
語源辞典:「礼/禮」という漢字
wikipedia:礼記
wikisource:禮記
wikipedia:周礼
wikipedia:儀礼(儒教)
wikipedia:五常
『礼』とは?|論語、素読会
論語における「禮(礼)」
論語 ― 全文全訳
ntt docomo:輻輳(ふくそう)とは
官公庁資料
書籍
野中 根太郎(訳)(2016).全文完全対照版 論語コンプリート.誠文堂新光社.
齋藤 孝(訳)(2016).論語.筑摩書房.
クリスティーン・ポラス, 夏目 大(訳)(2019).Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である.東洋経済新報社.
Christine Porath(2016).Mastering Civility: A Manifesto for the Workplace.Balance.
秋田 道夫(2023).機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方.ダイヤモンド社.
澤田 智洋(2022).わたしの言葉から世界はよくなる コピーライター式ホメ出しの技術.宣伝会議.
変更履歴
2026/01/01 新規作成
