背景と目的
【時間を考える】での宿題がいくつかある。
- 進化、深化、探求、調和の思想を含む家訓(憲章、社訓)のようなもの
- "応答"をするために"個人と集団のそれぞれ意味"を維持できる組織には?
成立しそうな応答を生み出すには、進化、深化、探求、調和の思想を含む家訓(憲章、社訓)のようなものが基礎にあり、一定の方向性をもった組織が仕事を為す。
【時間を考える②】社会と周期より
"応答"をするために"個人と集団のそれぞれ意味"を維持できる組織となっている必要がある。
今の時代の前提から導き出すと、新しい課題への応答には、グリーン、ティールの組織が適切な形と言える。
【時間を考える③】応答と飽和より
宿題のヒントになりそうな、
日本に独特な概念である"道"について、整理する。
1. 道という言葉
1.1. 道という漢字の由来
道(=どう)は、首と辵(しんにょう、歩く、行くの意味)を組み合わせ形。
さらに又(手の形)を組み合わせた字は、導。
古い時代には、他の民族のいる土地は、その氏族の霊や邪霊がいて災いをもたらすと考えられたので、異族の人の首を手に持ち、その呪力で邪霊を祓い清めて進んだ。その祓い清めて進むことを導といい、祓い清めたところを道といい、「みち」の意味に用いる。
「常用字解 第二版」
1.2. 中国語の道
道 (ピンインdào)
01 (〜儿)〔‘条’+〕道,道路.⇒街道 jiēdào ,铁道 tiědào .
02 水路,流れ.⇒河道 hédào ,下水道 xiàshuǐdào .
03 (行動する場合の)方向,道筋.⇒同道 tóngdào ,志同道合 zhì tóng dào hé .
04 (〜儿)〔‘条’+〕方法,手段.⇒门道 mén・dao .
05 道理,条理.⇒得道多助 dé dào duō zhù ,头头是道 tóu tóu shì dào .
06 道徳.⇒人道1 réndào .
07 (学問・宗教の)教え,道.⇒传道 chuán//dào ,卫道 wèidào .
08 道家.
09 道教.⇒老道 lǎodào .
10 宗教関係の事物または宗教団体の名称に用いる.⇒一贯道 yīguàndào .
11 (〜儿)〔‘条’+〕筋,線.
白水社 中国語辞典:道 dao
1.3. 日本語の道
"道"は、訓読みで"みち"、"道う=いう"。音読みで、"どう"、"とう"。
①みち。(ア)通りみち。「道路」「水道」(イ)人の守るべきみち。物事のみちすじ。「道義」「道徳」
②老子の教え。「道家」「道教」
③てだて。方法。また、技芸・学芸。「道具」「書道」「武道」
④い(言)う。となえる。「報道」「道破」
⑤「北海道」の略。「道立」「道央」
漢字ペディア:漢字一字 道
①道路。「舗装された―」
②距離。「―が遠い」
③途中。「公園への―すがら」
④進路。「これが私の進むべき―だ」
⑤道徳。「―ならぬ恋」
⑥手段。方法。「これ以外助かる―はない」
⑦分野。方面。「学問の―一筋
漢字ペディア:言葉-道=みち
話す。言葉を述べる。説く。
漢字ペディア:言葉-道う=い-う
日本の"道"の使い方で特質的なものが、てだて、技芸、学芸の道だろう。
2. 武と芸と心
2.1. 有名な道
分類 | 名称 | 概要・特徴 | 起源・背景 |
---|---|---|---|
武道 | 柔道 | 投げ技・寝技を中心とする格闘技。講道館柔道として近代化。 | 嘉納治五郎によって体系化(1882) |
武道 | 剣道 | 剣術を近代化した武道。竹刀と防具を用いた打突競技。 | 明治期に剣術から発展 |
武道 | 弓道 | 弓術を精神修養と結びつけた武道。礼法と型を重視。 | 武家文化と神道の影響 |
武道 | 合気道 | 相手の力を利用して制する武道。円の動きと調和を重視。 | 植芝盛平によって創始(20世紀) |
武道 | 武士道 | 武士階級の倫理・美学・死生観。忠義・名誉・克己など。 | 中世〜近世の武士階級。儒教・禅・神道の影響を受ける |
芸道 | 茶道 | 茶の湯を通じて和敬清寂の精神を体現。 | 千利休によって大成(16世紀) |
芸道 | 書道 | 漢字・仮名の筆法を通じて美と精神性を追求。 | 中国から伝来、日本で独自発展 |
芸道 | 華道 | 花を生けることで自然との調和と美を追求。 | 池坊流などが体系化(室町期) |
芸道 | 能道 | 能楽の演技・所作・型を通じて幽玄を表現。 | 室町時代に世阿弥が体系化 |
芸道 | 香道 | 香を聞くことで感性と精神性を磨く芸道。 | 室町時代に成立 |
宗教道 | 神道 | 神々との関係性を重視する日本固有の信仰。 | 古代から続く自然崇拝。古事記、日本書紀で明文化 |
宗教道 | 仏道 | 仏教の教えに基づく修行・慈悲・悟りの道。 | インド発祥、中国経由で伝来 |
宗教道 | 禅道 | 座禅・公案を通じて悟りを目指す修行法。 | 中国禅宗、日本で臨済・曹洞に発展 |
宗教の範囲は広く、形を一意に定義しにくいため、
武芸に関わる道を深掘りしていく。
日本では武芸の中に、その基盤にある宗教性が見えてくる。
2.2. すべきこと
多くの"道"で登場する言葉がある。
- "徳目"
- "心得"
- "師匠"
- "規則"
- "作法"
a. 徳目 とくもく
徳を分類した細目。儒教における仁・義・礼・智・信や古代ギリシャでの知恵・勇気・正義・節制、キリスト教における信仰・希望・愛など。
”webilio:徳目”より
徳(とく、希: ἀρετή(アレテー)、 羅: virtūs(ヴィルトゥス)、英: virtue(ヴァーチュー))は、社会通念上よいとされる、人間の持つ気質や能力である]。
"wikipedia:徳"より
b. 心得 こころえ
- 心がまえ。心がけ。
「―がよくない」- 技能などを身につけていること。たしなみ。
「武術の―」
c. 師匠 ししょう
し‐しょう〔‐シヤウ〕【師匠】
1 学問または武術・芸術の師。先生。
2 歌舞音曲などの遊芸を教える人。
3 寄席芸人に対する敬称。
weblio:師匠より
稽古を師匠や門下員と行う、
稽古とは、古を考えることである。
日本では『古事記』太安万侶序文末に「稽古」がありその意味は、
「古(いにしへ)を稽(かむがへ)ること」である。
同文の「照今」(今に照らす)とあわせ、「稽古照今」という熟語としても使用される。
wikipedia:稽古
古(いにしえ)をうむために、反復的な訓練を行う。
本人が考え気づき、稽古が積まれる。
師匠は、本人が気づかない点を、何かしらの方法で"気づき"の手伝いを行う。
d. 規則 きそく
徳目や心得を行動するときの補助線を示したものになる。
善いとする方法や善くないとする方法が示させれる。
武道の場合、罰則などもここに含まれる。
芸道の場合、△△より、〇〇などと対比し示される。
e. 作法 さほう
さ‐ほう【作法】
① 物事を行なう方法。仕方。やりかた。
② 立居ふるまいの仕方。起居動作の法式。礼儀作法。行儀作法。
③ 正式のこと。定式にかなったもの。しきたり。きまり。慣例。さだめ。
④ 世のならい。ありかた。ありさま。
⑤ 文章、詩歌などを作る方法。さっぽう。→さくほう(作法)。
コトバンク:作法
道の中では、②にあたる起居動作の法式にあたる意味と③の正式を示す。
正しいやり方を示したものになる。
整理
徳目や心得の確認は、日常の稽古では、はじめと最後に行われる。
(関係するものや対するものへの感謝など)
日常の稽古の中で、作法や規則に従い訓練を行う。
下図は、稽古における本人と師匠の動きをOODAループに合わせたものになる。
2.3. すべきでないこと
NG領域は、明確に規則にかかれる。
ただし、徳目と心得の内容は一意ではないため、OK領域や未規定領域は場によって変わる。
9. リンク
URL
白水社 中国語辞典:道 dao
漢字ペディア:漢字一字 道
漢字ペディア:言葉-道=みち
漢字ペディア:言葉-道う=い-う
note:「道」とは
note:#4. 道に関する語源メモ *weǵʰ- [way/विवाह]
漢和_漢字_語源辞典:「道」という漢字
wikipedia:柔道
講道館:講道館柔道の歴史
wikipedia:武士道
wikipedia:葉隠
日本香堂:香道とは
松栄堂:香道について
公益財団法人 合気会:合気道とは
神社本庁:神道とは
wikipedia:茶経
wikipedia:徳
wikipedia:Virtue
wikipedia:稽古
wikipedia:規則
書籍
白川 静(2012).常用字解[第二版].平凡社.
ベン・ホロウィッツ, 浅枝 大志(訳), 関 美和(訳)(2020).Who You Are(フーユーアー)君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる.日経BP.
新渡戸 稲造, 大久保 喬樹 (訳)(2015).新訳 武士道 ビギナーズ 日本の思想.KADOKAWA.
岡倉 覚三, 村岡 博 (訳)(1961).茶の本.岩波書店.
大道寺 友山(著), 古川 薫(訳)(2013).[新訳]武道初心集 いにしえの教えに学ぶ組織人の心得.PHP研究所.
淡交社編集局(2013).利休百首ハンドブック.淡交社.
オイゲン・ヘリゲル, 柴田 治三郎(訳)(1982).日本の弓術.岩波書店.
ダニエル・コイル, 楠木 建(監訳), 桜田 直美(訳)(2018).THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法.かんき出版.
澤田 智洋(2025).人生にコンセプトを.筑摩書房.
武田 双雲(2021).丁寧道 ストレスから自由になれる最高メソッド.祥伝社.
変更履歴
2025/08/23 新規作成
2025/08/24 2.2.追記