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Freer Effectsが、だいたいわかった: 1. Freeモナドの概要

Last updated at Posted at 2017-09-13

Freer Effectsが、だいたいわかった: 1. Freeモナドの概要

目次

(0). 導入

  1. Freeモナドの概要
    • Freeモナドとは
    • FreeモナドでReaderモナド、Writerモナドを構成する
  2. 存在型(ExistentialQuantification拡張)の解説
  3. 型シノニム族(TypeFamilies拡張)の解説
  4. データ族(TypeFamilies拡張)の解説
  5. 一般化代数データ型(GADTs拡張)の解説
  6. ランクN多相(RankNTypes拡張)の解説
  7. FreeモナドとCoyoneda
    • Coyonedaを使ってみる
    • FreeモナドとCoyonedaを組み合わせる
      • いろいろなモナドを構成する
  8. Freerモナド(Operationalモナド)でいろいろなモナドを構成する
    • FreeモナドとCoyonedaをまとめて、Freerモナドとする
    • Readerモナド
    • Writerモナド
    • 状態モナド
    • エラーモナド
  9. モナドを混ぜ合わせる(閉じた型で)
    • Freerモナドで、状態モナドとエラーモナドを混ぜ合わせる
  10. 存在型による拡張可能なデータ構造(Open Union)
  11. 追加の言語拡張
    1. ScopedTypeVariables拡張
    2. TypeOperators拡張
    3. KindSignatures拡張
    4. DataKinds拡張
    5. ...
  12. モナドを混ぜ合わせる(開いた型で)
    • FreerモナドとOpen Unionを組み合わせる
    • 状態モナドにエラーモナドを追加する
  13. Open Unionを型によって安全にする
  14. Freer Effectsで、IOモナドなどの、既存のモナドを使用する
  15. 関数を保管しておくデータ構造による効率化
  16. いろいろなEffect
    • 関数handleRelayなどを作成する
    • NonDetについて、など

モナドのおさらい

つぎのような関数が定義できるような型mをモナドと呼ぶ。

pure :: a -> m a
(>>=) :: m a -> (a -> m b) -> m b

おなじことを、つぎの、みっつの関数でも表現できる。

fmap :: (a -> b) -> m a -> m b
pure :: a -> m a
join :: m (m a) -> m a

このことは、つぎのように示すことができる。

fmap = flip (>>=) . (pure .)
join = (>>= id)

(>>=) = flip $ (join .) . fmap

Freeモナドを理解するうえで、モナドがfmap, pure, joinのみっつで表現されるという側面をおさえておくことも、助けとなるだろう。モナドとは、つぎのような操作ができる文脈mと言える。

  • 値に、文脈をつけることができる (pure :: a -> m a)
  • 文脈のなかの値に、関数を適用できる (fmap :: (a -> b) -> m a -> m b)
  • 二重になった文脈を、一段の文脈にほどくことができる (join :: m (m a) -> m a)

ファンクタからモナドへ

ファンクタとは、つぎのような関数をもつ型fのことである。

fmap :: (a -> b) -> f a -> f b

つまり、モナドとはファンクタであるような型fに、さらにつぎの、ふたつの関数を追加したものである。

pure :: a -> m a
join :: m (m a) -> m a

モナドにできて、ファンクタにできないこと: リストの例

ここで、つぎのような演算子を定義する。

listExample.hs
(>>-) :: Functor f => f a -> (a -> f b) -> f (f b)
(>>-) = flip fmap

ファイルlistExample.hsに定義しておく。モナドのbind関数と比較してみよう。

(>>-) :: Functof f => f a -> (a -> f b) -> f (f b)
(>>=) :: Monad m => m a -> (a -> m b) -> m b

ファンクタのほうの演算子では、文脈が二重になっているのがわかる。ファイルlistExample.hsを読み込んで、つぎのように試してみよう。

> [1, 2] >>= \x -> "abc" >>= \y -> [False, True] >>= \z -> [(x, y, z)]
[(1,'a',False),(1,'a',True),(1,'b',False),(1,'b',True),(1,'c',False),
(1,'c',True),(2,'a',False),(2,'a',True),(2,'b',False),(2,'b',True),
(2,'c',False),(2,'c',True)]
> [1, 2] >>- \x -> "abc" >>- \y -> [False, True] >>- \z -> [(x, y, z)]
[[[[(1,'a',False)],[(1,'a',True)]],[[(1,'b',False)],[(1,'b',True)]],
[[(1,'c',False)],[(1,'c',True)]]],[[[(2,'a',False)],[(2,'a',True)]],
[[(2,'b',False)],[(2,'b',True)]],[[(2,'c',False)],[(2,'c',True)]]]]

ファンクタのほうの演算では、リストがネストしていってしまう。

Freeモナドとは

もとの型がファンクタであれば、それを変換してモナドにすることができるデータ型。つぎのような定義となる。

data Free t a
        = Pure a
        | Join (t (Free t a))

再帰的な定義となっていて、たとえばリストでは、つぎのような値を定義することができる。

Join [Join [Join [Join [Pure True]]]] :: Free [] Bool

Join [...]を何重に入れ子にしても、おなじ型Free [] Boolとして、あつかうことができる。つまり、もとの型によるデータ構造が、何重にネストしてしまったとしても、この型の値に変換することで、ネストのない型として、あつかうことができるということになる。

[[[[True]]]] :: [[[[Bool]]]]
Join [Join [Join [Join [Pure True]]]] :: Free [] Bool

値はネストしても、型はネストしない。このように、値はネストしたままで、関数joinと同様の効果を、得ることができる。

リストの例

リストはファンクタなので、Freeモナドによる変換が可能だ。ここでは、対話環境で表示できるように、リスト専用のデータ型を用意して、それを使ってみよう。つぎのデータ型を定義する。ファイルfreeList.hsを作成し、つぎのように定義しよう。

freeList.hs
data FreeList a
        = PureL a
        | JoinL [FreeList a]
        deriving Show

整数をたし算、または、かけ算で、つぎつぎにつないでいったときの、すべての組み合わせをもとめることを考える。つぎのような関数を演算子(>>=)でつないでいけばいい。ファイルfreeList.hsに、つぎの関数を追加しよう。

freeList.hs
mulAdd :: Integer -> Integer -> [Integer]
mulAdd y x = [x + y, x * y]

まずは、ふつうに、リストモナドとして試してみる。

> :load freeList.hs
> return 5 >>= mulAdd 3 >>= mulAdd 8 >>= mulAdd 11
[27,176,75,704,34,253,131,1320]

これは、つぎのような計算をしたということだ。

[
5 + 3 + 8 + 11, (5 + 3 + 8) * 11, (5 + 3) * 8 + 11, (5 + 3) * 8 * 11,
5 * 3 + 8 + 11, (5 * 3 + 8) * 11, 5 * 3 * 8 + 11, 5 * 3 * 8 * 11
]

おなじことを、Freeモナドで試してみる。まずは、データ型FreeListをFunctorクラスのインスタンスにする。

freeList.hs
instance Functor FreeList where
        f `fmap` PureL x = PureL $ f x
        f `fmap` JoinL xs = JoinL $ fmap f `map` xs

PureLに対しては、なかの値xに関数fを適用すればいい。JoinLに対しては、関数fmapをリストの要素すべてに、再帰的に、適用している。おなじように、Applicativeクラスのインスタンスにする。

freeList.hs
instance Applicative FreeList where
        pure = PureL
        PureL f <*> mx = f <$> mx
        JoinL fs <*> mx = JoinL $ (<*> mx) `map` fs

クラス関数の定義の、うえの2行については、だいたいわかるだろう。3行目はリストfsの要素に対して(<\*> mx)を、再帰的に、適用している。Monadクラスのインスタンスにする。

freeList.hs
instance Monad FreeList where
	PureL x >>= f = f x
	JoinL xs >>= f = JoinL $ (f =<<) `map` xs

(>>=)を再帰的に適用している。ここで、リストという構造に対しては、関数mapというファンクタ的な演算を、使用していることに注意しよう。それによって、リストはネストしてしまう。そのリストのネストはJoinLによって、型としては解消されている。

リストモナドについて定義したのと、おなじ関数を型FreeListについても、定義してみよう。

freeList.hs
mulAddF :: Integer -> Integer -> FreeList Integer
mulAddF y x = JoinL [PureL $ x + y, PureL $ x * y]

対話環境で試してみる。

> :reload
> return 5 >>= mulAddF 3 >>= mulAddF 8 >>= mulAddF 11
JoinL [JoinL [JoinL [PureL 27,PureL 176],JoinL [PureL 75,PureL 704]],
JoinL[JoinL [PureL 34, PureL 253],JoinL[ PureL 131,PureL 1320]]]
> :type it
it :: FreeList Integer

値としては、おこなった操作の手順を反映した、ネストしたリストとなっているが、型としてはネストのない型となっている。

FreeList型からリスト型の値にするには、リストに対する演算子(=<<)である関数concatMapを使えばいい。

freeList.hs
runList :: FreeList a -> [a]
runList (PureL x) = [x]
runList (JoinL xs) = runList `concatMap` xs

試してみよう。

> :reload
> return 5 >>= mulAddF 3 >>= mulAddF 8 >>= mulAddF 11
JoinL [JoinL [JoinL [PureL 27,PureL 176],JoinL [PureL 75,PureL 704]],
JoinL[JoinL [PureL 34, PureL 253],JoinL[ PureL 131,PureL 1320]]]
> runList it
[27,176,75,704,34,253,131,1320]

IOの例

入出力の例をみてみよう。freeIO.hsを作成し、つぎのように定義する。

freeIO.hs
data FreeIO a
        = PureIO a
        | JoinIO (IO (FreeIO a))

ファンクタ、アプリカティブ、モナドの定義を追加する。

freeIO.hs
instance Functor FreeIO where
        f `fmap` PureIO x = PureIO $ f x
        f `fmap` JoinIO m = JoinIO $ fmap f <$> m

instance Applicative FreeIO where
        pure = PureIO
        PureIO f <*> mx = f <$> mx
        JoinIO mf <*> mx = JoinIO $ (<*> mx) <$> mf

instance Monad FreeIO where
        PureIO x >>= f = f x
        JoinIO mx >>= f = JoinIO $ (f =<<) <$> mx

入出力の例として、引数の整数を表示して、それをカウントアップしてかえす機械を考える。まずは、通常のIOについて試す。ファイルfreeIO.hsに、つぎの関数を追加する。

freeIO.hs
count :: Integer -> IO Integer
count n = putStrLn ("n = " ++ show n) >> return (n + 1)

対話環境で試してみよう。

> :load freeIO.hs
> count 8 >>= count >>= count >>= count
n = 8
n = 9
n = 10
n = 11
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おなじ機械のFreeIO型バージョンを書く。

freeIO.hs
countF :: Integer -> FreeIO Integer
countF n = JoinIO $ putStrLn ("n = " ++ show n) >> return (PureIO $ n + 1)

FreeIO型の値は、そのままでは表示も実行もできないので、関数runIOを定義する。ここでは、LambdaCase拡張を使っている。ファイルの先頭に{-# LANGUAGE LambdaCase #-}を追加しよう。

freeIO.hs
runIO :: FreeIO a -> IO a
runIO = \case
        PureIO x -> return x
        JoinIO m -> m >>= runIO

対話環境で試してみよう。

> :reload
> action = countF 8 >>= countF >>= countF >>= countF
> runIO action
n = 8
n = 9
n = 10
n = 11
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FreeIO型の値はIO型の値が入れ子になっている状態であり、それぞれの入出力はまだ合成されていない。それを示すために、関数runWithを定義する。

freeIO.hs
runWith :: FreeIO a -> IO b -> IO a
runWith fio act = case fio of
        PureIO x -> return x
        JoinIO m -> act >> m >>= (`runWith` act)

対話環境で試す。

> :reload
> action = countF 8 >>= countF >>= countF >>= countF
> action `runWith` putStrLn "hello"
hello
n = 8
hello
n = 9
hello
n = 10
hello
n = 11
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FreeIO型では、それぞれの入出力がばらばらで保管されているため、このように、あいだにほかの入出力をはさむことができる。

Freeモナドを使って、いろいろなモナドの機能を定義する

Freeモナドを定義

データ型Freeを定義しておこう。ファイルFree.hsを作成し、つぎのように定義する。

Free.hs
module Free (Free(..)) where

data Free t a
        = Pure a
        | Join (t (Free t a))

instance Functor t => Functor (Free t) where
        f `fmap` Pure x = Pure $ f x
        f `fmap` Join tx = Join $ fmap f <$> tx

instance Functor t => Applicative (Free t) where
        pure = Pure
        Pure f <*> m = f <$> m
        Join tf <*> m = Join $ (<*> m) <$> tf

instance Functor t => Monad (Free t) where
        Pure x >>= f = f x
        Join tx >>= f = Join $ (f =<<) <$> tx

型FreeLやFreeIOと、ほぼ、おなじ定義だ。だいたいの感じとしては、Pureならそのまま適用、Joinなら再帰的に適用していく、といった定義になっている。

Readerモナド

まずは、Freeモナドを使ってReaderモナドの機能を定義してみよう。ファイルfreeMonads.hsを作成して、つぎのような定義を追加する。

freeMonads.hs
import Free

data Reader e a = Reader (e -> a)

instance Functor (Reader e) where
        f `fmap` Reader k = Reader $ f . k

ask :: Free (Reader e) e
ask = Join $ Reader Pure

runReader :: Free (Reader e) a -> e -> a
runReader m e = case m of
        Pure x -> x
        Join (Reader k) -> runReader (k e) e

関数askでは、Pureによって、Reader e aのaのところを、Free (Reader e) e型の値としている。さらに、値構築子JoinによってFree (Reader e) e型の値を構成する。関数runReaderでは値構築子Readerのもつ(e -> Free (Reader e) a)型の値を、値eに適用することでFree (Reader e) a型の値を取り出し、それに対して関数runReaderを再帰的に適用している。試してみる。

> :load freeMonads.hs
> :module + Data.Char
> (`runReader` 100) $ do x <- ask; return $ chr x
'd'

Writerモナド

つぎにWriterモナドの機能を定義する。

freeMonads.hs
data Writer w a = Writer w a

instance Functor (Writer w a) where
        f `fmap` Writer w a = Writer w $ f a

tell :: w -> Free (Writer w) ()
tell w = Join . Writer w $ Pure ()

runWriter :: Monoid w => Free (Writer w) a -> (a, w)
runWriter = \case
        Pure x -> (x, mempty)
        Join (Writer w m) -> second (w <>) $ runWriter m

関数tellでは、Pure ()によってWriter w aの、aのところをFree (Writer w) ()型としている。関数runWriterでは、値構築子Writerのもつ、ふたつめの値であるmに対して、関数runWriterを再帰的に適用し、その結果であるタプルの、ふたつめの値に対して、値構築子Writerの、ひとつめの値であるwを追加している。試してみる。

> :load freeMonads.hs
> runWriter $ do tell "x = 8\n"; x <- return 8; tell "y = 5\n"; y <- return 5; tell $ "x * y = " ++ show (x * y); return $ x * y
(40,"x = 8\ny = 5\nx * y = 40")

ReaderとWriterの両方

ReaderとWriterの両方の機能をもつモナドを作ってみよう。ファイルreaderWriter.hsを作成し、つぎのように定義する。

readerWriter.hs
import Control.Arrow
import Data.Monoid

import Free

data RW e w a
        = Reader (e -> a)
        | Writer w a

instance Functor (RW e w) where
        f `fmap` Reader k = Reader $ f . k
        f `fmap` Writer w x = Writer w $ f x

ask :: Free (RW e w) e
ask = Join $ Reader Pure

tell :: w -> Free (RW e w) ()
tell w = Join . Writer w $ Pure ()

例として、つぎの式を定義する。

readerWriter.hs
sample :: Free (RW String String) (String, String)
sample = do
        x <- ask
        tell $ "I say " ++ x ++ ".\n"
        y <- ask
        tell $ "You say Good-bye!\n"
        return (x, y)

ReaderとWriterの意味論をそのままに

さて、まずはReaderとWriterの、もともとの意味論を、そのままにして計算してみよう。askは環境から値を読み出し、tellはログに値を記録する。

readerWriter.hs
runRW :: Monoid w => Free (RW e w) a -> e -> (a, w)
runRW m e = case m of
        Pure x -> (x, mempty)
        Join (Reader k) -> runRW (k e) e
        Join (Writer w m') -> second (w <>) $ runRW m' e

サンプルの式の評価を、試してみよう。

> :load readerWriter.hs
> sample `runRW` "hello"
(("hello","hello"),"I say hello.\nYou say Good-bye!\n")

式askのかえす値は、環境に定義された値"hello"であり、変化しない。また、関数tellでは、引数に指定した値がログに記録される。

ReaderとWriterで状態モナドとする

さて、ここで「『読み出し』と『書き込み』ができるのなら状態モナドが作れるのでは」と、思うだろう。それは正しい。ReaderとWriterから状態モナドを作ってみる。

hoge.hs
runStateRW :: Free (RW s s) a -> s -> (a, s)
runStateRW m s = case m of
        Pure x -> (x, s)
        Join (Reader k) -> runStateRW (k s) s
        Join (Writer s' m') -> runStateRW m' s'

サンプルの式の評価を、試してみよう。

> :reload
> sample `runStateRW` "hello"
(("hello","I say hello.\n"),"You say Good-bye!\n")

式askのかえす値は、状態の値である。関数tellは状態の値を変化させていく。

おなじモナドの例が、2通りに

ひとつの例sampleが、runRWで評価されるのと、runStateRWで評価されるのとで、異なる結果となった。これは、Freeモナドでは、バインド(>>=)の意味の決定を、モナドを合成しているときではなく、後回しにすることができるということだ。実際の計算をする代わりに、データ構造に保管していると考えることができる。

まとめ

Freeモナドについて見てきた。Freeモナドは、ファンクタであるようなデータ構造をモナドに変換する仕組みだ。バインド(>>=)によって作られる構造は、データの構造として保管される。そのため、モナドの合成のあとから、バインドの動作を決定することができる。

参考

Freeモナドって何なのさっ!?
そろそろFreeモナドに関して一言いっとくか

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