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Freer Effectsが、だいたいわかった: 3. 型シノニム族(TypeFamilies拡張)の解説

Last updated at Posted at 2017-09-20

Freer Effectsが、だいたいわかった: 3. 型シノニム族(TypeFamilies拡張)の解説

目次

(0). 導入

  1. Freeモナドの概要
    • Freeモナドとは
    • FreeモナドでReaderモナド、Writerモナドを構成する
  2. 存在型(ExistentialQuantification拡張)の解説
  3. 型シノニム族(TypeFamilies拡張)の解説
  4. データ族(TypeFamilies拡張)の解説
  5. 一般化代数データ型(GADTs拡張)の解説
  6. ランクN多相(RankNTypes拡張)の解説
  7. FreeモナドとCoyoneda
    • Coyonedaを使ってみる
    • FreeモナドとCoyonedaを組み合わせる
      • いろいろなモナドを構成する
  8. Freerモナド(Operationalモナド)でいろいろなモナドを構成する
    • FreeモナドとCoyonedaをまとめて、Freerモナドとする
    • Readerモナド
    • Writerモナド
    • 状態モナド
    • エラーモナド
  9. モナドを混ぜ合わせる(閉じた型で)
    • Freerモナドで、状態モナドとエラーモナドを混ぜ合わせる
  10. 存在型による拡張可能なデータ構造(Open Union)
  11. 追加の言語拡張
    1. ScopedTypeVariables拡張
    2. TypeOperators拡張
    3. KindSignatures拡張
    4. DataKinds拡張
    5. ...
  12. モナドを混ぜ合わせる(開いた型で)
    • FreeモナドとOpen Unionを組み合わせる
    • 状態モナドにエラーモナドを追加する
  13. Open Unionを型によって安全にする
  14. Freer Effectsで、IOモナドなどの、既存のモナドを使用する
  15. 関数を保管しておくデータ構造による効率化
  16. いろいろなEffect
    • 関数handleRelayなどを作成する
    • NonDetについて、など

はじめに

Freer Effectsは、型族(TypeFamilies拡張)を使用せずに構成できる。ここで、型族を解説するのは、Freer Effectsで使用する一般化代数データ型(GADTs拡張)を説明するうえで、型族を導入としたほうが、わかりやすいと考えたからだ。

型シノニム族とは

型シノニムの定義って何かに似てる。なんとなく関数定義と似てる気がする。型シノニムの例として、つぎのような定義をみてみよう。

type Foo x = Either x Bool

これと、つぎのような、関数定義の例とをくらべてみる。

foo x = mod x 8

似ている。また、これを、それぞれ、型や値に適用する。

Foo Integer ==> Either Integer Bool
foo 123 ==> mod 123 8

これも、また似ている。型シノニムの定義は、型に対する関数を定義していると考えられる。さて、関数の仮引数としてリテラルを指定することができる。

foo 4492 = 2944
bar "hello" = 1234

おなじことを型シノニムでもやりたいとする。Foo IntegerはBoolに、Foo DoubleはCharにしたいとしよう。つぎのように、なるだろうか。

type Foo Integer = Bool
type Foo Double = Char

標準的なHaskellでは、このように型シノニムの仮引数に具体的な型の名前を置くことはできない。GHCではTypeFamilies拡張を使い、型Fooを明示的に型族としてやれば、上記のような定義が可能になる。つぎのように、ファイルtypeFamily.hsを作成する。

typeFamily.hs
{-# LANGUAGE TypeFamilies #-}

type family Foo x

type instance Foo Integer = Bool
type instance Foo Double = Char

さて、値に型(type)があるように、型には種類(kind)がある。そのまま使える型Int, Double, Charなどの種類は*であり、型引数をひとつとる型Maybeや[]などの種類は* -> *であり、型引数をふたつとる型Eitherや(,)などの種類は* -> * -> *である。型Fooの種類を、みてみよう。

> :load typeFamily.hs
> :kind Foo
Foo :: * -> *
> :kind Foo Integer
Foo Integer :: *

この:kindというコマンドに、!をつけた:kind!というコマンドがある。これを使うと、型シノニムを正規化された型に変換して、表示してくれる。

> :kind! Foo Integer
Foo Integer :: *
= Bool
> :kind! Foo Double
Foo Double :: *
= Char

型シノニム族を使うと、関数定義でリテラルを仮引数とするのとおなじように、型シノニムの定義で型仮引数に、型変数ではなく、具体的な型の名前を使うことができるようになる。

型シノニム族を使う

型シノニム族は、ある型と別の型とを関連づけたいときに使える。たとえば、リストをその要素の型によって、より空間効率のいい構造に変換することを考える。たとえばユニット型の値のリストは、その長さを表す整数に置き換えることができる。また、真偽値型の値のリストは、長さを表す整数と、それぞれのビットのオン/オフを表す整数に置き換えることができる。8ビット非負整数のリストはByteString型の値に置き換えられる。またDouble型の値のリストは、そのままのリストとすることにする。

もとのリストの要素の型と、それの空間効率のいい表現との対応を示す。

() ==> Int
Bool ==> (Int, Integer)
Word8 ==> Data.ByteString.ByteString
Double ==> [Double]

ファイルpackable.hsを作成し、型族を使って、この対応を表現してみよう。必要なモジュールの導入などの記述も、あらかじめしておこう。

packable.hs
{-# LANGUAGE LambdaCase #-}
{-# LANGUAGE TypeFamilies #-}

{-# OPTIONS_GHC -Wall -fno-warn-tabs #-}

import Control.Arrow
import Data.Bits
import Data.Bool
import Data.Word

import qualified Data.ByteString as BS

type family List x

type instance List () = Int
type instance List Bool = (Int, Integer)
type instance List Word8 = BS.ByteString
type instance List Double = [Double]

さて、もとのリストの要素の型と、対応する構造との組を定義することができた。つぎにしたいことは、当然、リストからの変換とリストへの変換になるだろう。それらの型は、つぎのようになるはずだ。

fromList :: [a] -> List a
toList :: List a -> [a]

これらの関数は、型変数aの型によって、定義のしかたが変わる。よって、型クラスのクラス関数にする必要がある。ファイルpackable.hsに、つぎのように追加しよう。

packable.hs
class Packable p where
        fromList :: [p] -> List p
        toList :: List p -> [p]

それぞれの型に対する関数fromList, toListを定義する。

packable.hs
instance Packable () where
        fromList = length
        toList = (`replicate` ())

instance Packable Bool where
        fromList = \case
                [] -> (0, 0)
                b : bs -> (+ 1) *** (bool 0 1 b .|.) . (`shiftL` 1)
                        $ fromList bs
        toList (l, n) | l <= 0 || n < 0 = []
        toList (l, n) = n `testBit` 0 : toList (l - 1, n `shiftR` 1)

instance Packable Word8 where
        fromList = BS.pack
        toList = BS.unpack

instance Packable Double where
        fromList = id
        toList = id

試してみよう。

> :load packable.hs
> fromList [(), (), (), (), ()]
5
> toList it :: [()]
[(),(),(),(),()]
> fromList [True, False, False, True, False]
(5,9)
> toList it :: [Bool]
[True,False,False,True,False]
> fromList [100 :: Word8, 123, 115, 120, 125]
"d{sx}"
> toList it :: [Word8]
[100,123,115,120,125]
> fromList [3.5 :: Double, 8.2, 1.3]
[3.5,8.2,1.3]
> toList it :: [Double]
[3.5,8.2,1.3]

型クラスと関連づけられた型シノニム族

型シノニム族は、たいていは、型クラスに含まれるクラス関数によって処理される。そのため、型クラスと型シノニム族を関連づける書きかたがある。うえの例では、型クラスと型シノニム族の定義は、つぎのように関連づけて書くことができる。

packableC.hs
class Packable p where
        type List p
        fromList :: [p] -> List p
        toList :: List p -> [p]

型クラスの定義のなかにあることで、型シノニム族であることは明確なので、予約語familyを書かなくていい。おなじように、型シノニム族のインスタンス宣言も、インスタンス宣言のなかに書く。

packableC.hs
instance Packable () where
        type List () = Int
        fromList = length
        toList = (`replicate` ())

このような、型クラスと関連づけて定義された型シノニム族においては、型シノニム族のインスタンスの定義を、インスタンス宣言の外に書くことはできない。たいていの場合で、こちらの書きかたのほうが、コードが読みやすくなる。

閉じた型シノニム族

ここまでにみてきた型シノニム族では、そのインスタンスを型シノニム族の宣言から離れたところで、定義できる。異なるモジュールで定義することさえできる。ときには、そうでなく、型シノニム族のインスタンスを、型シノニム族を定義した時点で、決められたもののみに制限したいこともある。つぎのように「閉じた型シノニム族」を定義することができる。

type family Foo x where
        Foo Int = Char
        Foo Double = Bool

こうしておけば、この型シノニム族が引数としてとる型は型IntとDoubleに制限される。Foo IntegerとかFoo Boolとかは、定義されないことが保証される。これだけだと、「安全性」というだけの話である。しかし、インスタンスを、まとまめて定義しなければならないという制限によって、逆に、できることが増えるという側面がある。このような定義では、型シノニムの定義の「順番」をあてにした定義が可能だ。

ここでは説明していないDataKinds拡張を使った例だが、つぎのような定義ができる。

type family Elem t ts where
        Elem _ () = 'False
        Elem t (t, _) = 'True
        Elem t (_, ts) = Elem t ts

型シノニム族Elemの定義は、それぞれのインスタンスの定義されている「順番」に依存した定義になっている。Elem t (_, ts)で使われているパターンは、型tとワイルドカードで表される位置の型とが、おなじであっても、マッチする。しかし、閉じた型シノニム族では、マッチは「うえから順に」試される。よって、一番最後の行にまで試行が到達したなら、それらが異なる型であることが保証される。

この型Elemで使われている言語拡張や、型Elemの使用例については、「タプルで作ったリストの要素を型で取り出す」という記事にまとめたので、よろしければ参照してください。

参考

Wikibooks: GHC/Type families

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