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なぜAppleはiCloudにGoogle Cloud Platformを使っているのか? #GCPUG #gcpja

Last updated at Posted at 2018-02-27

前置き

アップル、「iCloud」の「Google Cloud」利用を認める--「Azure」から変更か

GoogleがGoogle Cloud Platformの顧客としてAppleと契約
Amazon Web Services(AWS)への依存度を大幅に減らした

こんな記事が出ていましたので,ちょっとざっくり比較しながら理由を考えてみます.

以降,GCSとはGCP(Google Cloud Platform)のストレージサービス,S3とはAWS(Amazon Web Services)のストレージサービスになります.Azureって何だっけ

おことわり

客観的な立場から書くことを努めはしますが,Google Cloud Platform User Groupにちょいちょい生息しているということは開示しておきます.
それから,結構ざっくりです.読みやすいからいいよね

価格

単純比較では案外GCSが安いわけではないようです.高かったり安かったり.

GCS S3
標準(/GB/月) $0.02 $0.023
低頻度アクセス(/GB/月) $0.01 $0.0125
超低頻度アクセス(/GB/月) $0.007 $0.004
ネットワーク上り(/GB) 無料 無料
ネットワーク下り(/GB) $0.12 $0.09

(いずれもオレゴン同士で比較,詳細は省略)

マルチリージョン

ただマルチリージョン(S3ではクロスリージョンレプリケーション)を構成するのであれば,S3では単純に倍の費用がかかります.
更にバージョニング有効化が必要でその分余計に費用もかかったり,その他細かい制限もあったりするようです1
 
GCSではバケット自体に最初からマルチリージョン設定することが可能で,費用も1.3倍です.

iCloudにおいて,バックアップであれば可用性はあまり求められませんが.冗長性は必要でしょう.写真や書類などでは更に可用性も求められると思います.
このような場合はGCSのほうが明らかに安くなるでしょう.

コンピューティング

あるいは単なるデータ保管だけでなく,演算もクラウドで行わせている可能性はあるでしょう.
詳細は省きますが,費用はGCE(GCPのコンピューティングサービス)のほうが安価になりがちですし,性能や機能としても目を見張るものがあります(下記記事など参照).

運用フェーズにおけるGCPとAWSの違いについて
GCEのライブマイグレーションのすごさをまとめてみた #gcpja
Google Compute Engineのココがイケてるイケてない
GoogleのHTTPロードバランサーの破壊力があり過ぎる #gcpja
Google Compute Engine が便利で良かった件

最初の記事で言えば,チャンク分割や暗号化はクラウドで行っている,かもしれません(文脈的には自社でしていそうな気もしますが).

「iCloudによってファイルがチャンクに分割され、AES-128と、各チャンクのコンテンツから導出される、SHA-256を使用する鍵を使って暗号化される。それらの鍵とファイルのメタデータはApple によってユーザの iCloud アカウントに保存される。暗号化されたファイルのチャンクは、S3やGoogle Cloud Platformのような他社のストレージサービスを利用して、ユーザーを特定する情報を含めずに保存される」

性能

2年前と少し古い記事ですが,アップロード/ダウンロードの比較記事がありました.
https://thinkit.co.jp/story/2015/03/30/5801?page=0%2C1
こちらによると以下の通りだったようです.

GCS S3 S3 CloudFront経由
上り速度 17.856 sec 1 min 28.246 sec N/A
下り速度 4.453 ms 19.596 ms 7.270 ms

古い情報とは言え,インフラ特にネットワーク周りを改善するのは容易でないでしょうから,未だに差があるとは思われます2
 
あるいは超低頻度アクセスストレージに関しても,S3のもの(Glacier)はアクセスに分~時間単位かかる場合がありますが,GCSのもの(Coldline)はmsです.

性能周りではGCSが強そうです.

セキュリティ

権限を細かく設定できる,という運用的な意味でのセキュリティでは,S3のほうに一日の長があるでしょう.

クラウドのシステム自体のセキュリティとしては,スイッチから何から自社で作りまくっているGoogleのほうが良さそうに思われます(セキュリティのためだけの独自マイコンチップすらGCPに投入しています3).
 
ISO 270xxやPCI DSS, NIST 800-xxなどの準拠状況は両者同様ですね.

経営的側面

https://support.apple.com/ja-jp/HT201238
公式サイトによると,米国でのiCloudの価格は以下の通りです.

容量 価格
50 GB $0.99
200 GB $2.99
2 TB $9.99

もし全て標準ストレージだとすると,$0.02*50=1.0$ あるいは$0.023*50=1.15$と上回ってしまいますので,案外ぼったくってはいないのですね.
しかし,だからこそ節約は心掛けたくなるところですね4
とすると例えば,基本的にはGCS,超低頻度アクセスストレージはS3などとしているのでしょうか.

あるいはこの記事ここまで全部ひっくり返すような元も子もない話になりますが(!),GoogleはiOSでの検索を占拠するマン費として,Appleに多額の費用を払う契約があります.
例えばこういった契約と絡めて,GCPが非常に安く使える,といった可能性もあるかもしれません(AmazonとApple間の契約はなさそう).

その他

AWSのドキュメント読みづらい(効果には個人差があります)

GCPはドキュメント和訳遅い(効果には個人差があります5
あとでもう少し追記するかも.

まとめ

性能によって選択された可能性は高いかもしれません.
場合によってはセキュリティや価格面もメリットと考えられた可能性は十分あります.
というかそもそも大人の事情かもしれません.

間違いやつっこみなどの各種マサカリはお気軽にどうぞ.

良かったらGCPUGよろしくね.
gcpug
http://gcpug.jp/join
 
 
 
 


  1. 【新機能】S3でCross-Region Replicationが出来るようになりました! 

  2. その他,Googleは基本的に基礎・基盤技術が優れていますね.枚挙にいとまがないですが, YAPC Asia 2015「Google Cloud Platformの謎テクノロジーを掘り下げる」のまとめ あるいは 専門家なしで誰でも使える(ガチ勢でも便利),機械学習の大本命 Google Cloud AutoML 発表 などいかがでしょう. 

  3. やっぱGoogle頭おかしい.詳細はTitan in depth: Security in plaintext 

  4. 唐突のApple視点! 

  5. ありません. 

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