LaTeX Workshop をもっと使いこなす
LaTeX Workshop | James Yu
投稿時; ver.8.14.0(2020/12 現在)、最終更新時; ver.8.28.0
本記事ではもっと使いこなすと銘打っているので、最大限使っていきたい。
ホバーによるプレビュー機能とインテリセンス機能、エラー等のメッセージについて紹介していく。
これらのホバーやインテリセンス、メッセージはデフォルトでは有効 (true
) になっている。このままでも全く問題ないが、不必要に感じる機能があれば無効化させておくと良いだろう。
関連記事は # この節 にあります。
○ Hover & IntelliSense
■ 概要
まずはざっくりと一覧を示しておきたい。そのあとにそれぞれの詳細を与えていく。
正直どちらの機能なのか分からないような場合があるが、設定で "~.hover.++"
となっていればホバー機能、"~.intellisense.++"
となっていればインテリセンス機能としている。
▼ Hover
エディタ画面で特定のコマンド等にマウスポインタを合わせると、様々な情報をホバーウィンドウによって閲覧することが出来る。
ホバーで見ることのできるものの一覧は以下のようなものになる。
-
\usepackage
で読み込まれるパッケージ(ここからローカルにあるドキュメントや CTAN を開けることも可能) - コマンドからどのパッケージから提供されているのかを見る
- 特定の数式環境のプレビュー表示
-
\newcommand
で定義されたコマンドの数式のホバー - 相互参照で
\ref
となっている数式
-
-
\includegraphics
で読み込まれる画像ファイル -
\cite
で参照された引用
▼ IntelliSense
以下のオートコンプリート(サジェストを表示して補完する機能)が有効になる。
相互参照や新たに定義したコマンドなど(パッケージ名やデフォルトのスニペット以外)のオートコンプリートは保存時に解析が実行され有効になるようだ。
- 文書クラス名、パッケージ名のオートコンプリート(CTAN 提供のもの)
- コマンドや環境名のオートコンプリート
- 相互参照の際の
\ref
コマンドに対する label 名のオートコンプリート - BibTeX のオートコンプリート
- ファイル名のオートコンプリート
インテリセンスをより拡張したり個人的なインテリセンスを作成したい場合には、以下の記事を参照してほしい。
■ パッケージ
パッケージ名の自動補完し、\usepackage
の上にマウスポインタを置くと View documentation が表示され、ここから texdoc を利用してパッケージドキュメントを開くことができる。
パッケージガイドを開くための texdoc のコマンドと引数は以下のように設定されている。おおよそこのままで問題ないと思われる。
"latex-workshop.texdoc.path": "texdoc",
"latex-workshop.texdoc.args": ["--view"],
また、パッケージから提供されるコマンドの上にマウスポインタを置くと、ざっくりとしたコマンドの使い方とView documentation for package(s) hoge が表示され、パッケージドキュメントを開くことが出来る。
※ パッケージ名と CTAN での登録名が異なる場合、texdoc によるパッケージドキュメントの表示が不可能な場合やオートコンプリートは効かない場合がある。(例: mathrsfs)
これは texdoc そのものの問題であり LaTeX Workshop 側の問題ではない。場合によっては CTAN をインターネット検索して探す方が早い。
■ 数式
数式環境の \begin{
にマウスポインタを合わせるとホバーで数式をレンダリングして表示することが出来る。MathJax を使ってその都度レンダリングしている。
おそらく一番多くの人がありがたく感じる機能の 1 つ。
ホバーウィンドウでサポートされている数式環境は次のもの。
\[ , $ , $$ , array, subarray, eqnarray(*), equation(*), align(*), alignat(*), gather(*), multline(*), cases, split, aligned, alignedat, gathered, matrix, smallmatrix, bmatrix, Bmatrix, pmatrix, vmatrix, Vmatrix |
---|
ホバープレビューの最大行数は 20 行となっている。("~.hover.preview.maxLines": 20
) あまり行数を多くするとレンダリングが重くなる可能性があるため、このままで問題ないだろう。
この他、MathJax のバージョン更新に伴っていくつかのパッケージを取り込むことが出来るようになった。以下の記事に詳しいため参照してほしい。
▼ ホバーサイズの変更
"latex-workshop.hover.preview.scale": 1
ホバーサイズの変更ができる。
ホバープレビューのデフォルトサイズは 1
となっている。小さく感じる場合はもう少し大きくしてもいいかも知れない。
▼ カーソルのレンダリング
数学プレビューではデフォルトでカーソルもレンダリングされる。このときのカーソルの記号と色を構成することが出来る。
設定 | 構成 (デフォルト) |
説明 |
---|---|---|
latex-workshop.hover.preview.cursor.enabled |
boolean ( true ) |
カーソルを表示させるか |
latex-workshop.hover.preview.cursor.symbol |
string ( "\\!|\\!" ) |
カーソルの形状 |
latex-workshop.hover.preview.cursor.color |
string ( "auto" ) |
カーソルの色 |
カーソルの色は 19 色と "auto"
(デフォルト)が使用できる。
"black" , "darkgray" , "gray" , "lightgray" , "white" , "brown" , "magenta" , "red" , "pink" , "orange" , "yellow" , "green" , "olive" , "lime" , "blue" , "cyan" , "teal" , "purple" , "violet" , |
---|
ただし、数学記号の間であればカーソルがレンダリングされるが、\alpha
などの途中でカーソル置いてもレンダリングされない。
▼ 数学プレビューパネル
ホバーウィンドウで数式を確認しながら打ちたい場合には、Math Preview Panel から数式をリアルタイムプレビューしながら編集すると良いだろう。
キーボードショートカット Ctrl+Alt+M
から開くことが出来る。
また、このプレビューパネルを表示する位置を変更することが出来る。
"latex-workshop.mathpreviewpanel.editorGroup": "<panel-position>"
<panel-position> |
Description |
---|---|
below (デフォルト) |
エディタの下側 |
above |
エディタの上側 |
right |
エディタの右側 |
left |
エディタの左側 |
current |
現在のエディタグループ |
■ 画像
"latex-workshop.intellisense.includegraphics.preview.enabled": true
\includegraphics
の際にファイル名を補完することが出来る。
また、\includegraphics
の上にマウスポインタを置くと画像がプレビューされる。対応するファイル形式は、PNG、JPEG、PDF のようだ。ただし、PDF をプレビューするには SNIPPET VIEW を一度開ける必要がある。
■ 相互参照
\ref
とすると \label
から参照名を読みとって自動的に補完してくれる。
ラベル名が少し間違っているために相互参照が上手くいかないという現象をほとんどなくしてくれるであろう、地味ながらかなりありがたい機能。
また、\ref
に関連するコマンドの上にマウスポインタを置くと数式・図表のプレビュー ("~.hover.ref.enabled"
) と参照番号 ("~.hover.ref.number.enabled"
)、View on PDF が表示される。この “View on PDF” をクリックすると対応する PDF 1 上の数式・図表に飛ぶことが出来る。(下の Gif では小さくて確認しづらいかもしれない)
書いた後からどのラベルを参照しているのか確認するのに非常に楽になる。
この相互参照による機能は amsmath から提供されている \eqref
や \newcommand
で定義し直した参照コマンドに対しても有効になるようだ。
また、\cite
に対してもホバーウィンドウからプレビューを見ることが出来る。
タイプセットした際の実行状況やエラー等のメッセージを見ることが出来る。使っていればなんとなく分かるようになるが、一応確認しておきたい。
○ Error message
LaTeX のメッセージは以下のような場所から表示される。
設定 | メッセージ内容 | 表示場所 |
---|---|---|
~.message.error.show |
エラー | ポップアップ |
~.message.warning.show |
警告 | ポップアップ |
~.message.information.show ※ |
information | ポップアップ |
~.message.badbox.show |
badbox エラー | PROBLEM パネル |
~.message.log.show |
デバッグログ | OUTPUT パネル |
※ false
となっている。
ポップアップはウィンドウ右下の から表示される。PROBLEM パネルは Ctrl+Shift+M
から、OUTPUT パネルは Ctrl+Shift+U
から開くことが出来る。
PROBLEM パネルに表示されているエラーや警告の数は、ウィンドウ左下ステータスバーの や に表されている。
もしもポップアップによる表示が邪魔に感じる場合は、上の設定を無効にしてステータスバーを確認するようにしても良いだろう。ただし、~.message.badbox.show
や ~.message.log.show
に関しては表示させておくと良いだろう。
より詳細には以下の記事を参照してほしい。
参考
- 公式 Wiki
関連記事
LaTeX Workshop に関する記事は以下の 5 つがあります。本記事と合わせてご覧ください。
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LaTeX Workshop を使って TeX ファイルをタイプセットして PDF を作成するまでを紹介します。
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LaTeX Workshop をもう少し使いこなす - Qiita
LaTeX Workshop で利用できるスニペットやコマンドを紹介します。また、他のカスタマイズを考えます。
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LaTeX Workshop をもっと使いこなす - Qiita ← 本記事 :slime:
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Zotero から bib ファイルを出力して LaTeX Workshop でフォーマットするする方法を紹介します。
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LaTeX Workshop の数式プレビューを使いこなす - Qiita
数式プレビューをもっと使えるようにカスタマイズします。
余談
スニペット以外にもかなりサポートされていて LaTeX 初心者でも間違いを少なく作成することが出来るようになるのではないかと思う。しかし、使っていても知らない機能があると宝の持ち腐れになってしまうこともある。この記事から拡張機能をより利用できるようになることを願う。
追記
- 2021/06/20: いくつかの項目で公式 Wiki から Gif 画像を引用。
- 2021/07/23: 関連記事リンクを追加。
- 2022/07/29: Ver.8.28.0 に対応。軽微修正。
-
"latex-workshop.view.pdf.ref.viewer": "auto"
によって自動的にビューワを選択してくれる。 ↩