なぜ、今AI人材育成なのか
日本のIT人材不足は深刻で、2030年には最大約79万人不足と予測されています。
IT人材が不足する大きな理由に「IT需要の拡大」「労働人口の減少」「IT技術の進展による需要構造の変化」などが挙げられます。
さらに近年は、AI技術の急速な進化により、ソフトウェア開発の現場は大きな転換期を迎えており、従来のコーディング中心の開発スタイルから、AIを活用して生産性を飛躍的に高める「AI駆動開発」へのシフトが業界全体で加速、既存エンジニアのスキル転換が急務となっています。
そこで山一情報システム(略:YIS)では、社内向けのAI教育カリキュラムを作成し、AI駆動開発を多くの社員に体感してもらう取り組みを進めています。
AIの基礎知識やツールの活用方法だけでなく、実際の開発を通じてAI駆動開発の考え方や進め方を身につけることで、これからのAI時代に対応できるエンジニアの育成を目指しています。
YISのAI人材育成カリキュラム
YISのAI人材育成カリキュラムでは、いきなりAIにコードを書かせるのではなく、まずはエンジニアとして必要となるプログラミングの基礎から学びます。
「AIがコードを書いてくれるのに、プログラミングを学ぶ必要があるの?」
と思うかもしれません。確かに、AIを活用した開発では、すべてのコードを自分で書く必要はなく、特定のプログラミング言語のスペシャリストになることが目的でもありません。
ただ、AIと一緒に開発を進めていると、プログラムの構造や処理についてAIから説明を受けたり、技術的な判断を求められたりする場面があります。そこでAIが何を言っているのかを理解し、適切な指示や判断をするためには、ある程度のプログラミングの基礎知識が必要です。
そこで、バックエンドではPython、フロントエンドではTypeScript(React)を題材に、Webアプリケーション開発の基本的な知識・技術を身につけます。
基礎を身につけた上で、AIを活用した実践的な開発へと進みます。単にAIにコードを生成させるだけではなく、AIと対話しながら設計・実装を進める「AI駆動開発」や、仕様を起点としてAIとともに開発を進める「仕様駆動開発」を実際に体験します。
「プログラミングの基礎を学ぶ」
→「AIを活用して開発する」
→「AIとともに開発プロセスそのものを変える」
という段階を踏むことで、AI時代に求められる新しいエンジニアリングスキルの習得を目指しています。
カリキュラムの具体例
以下は、研修資料の一部です。
ここでは、AI駆動開発で利用する「Rules」「Workflows」「Skills」などを学びます。
社員は日々の業務を担当しているため、研修だけに多くの時間を確保することはできません。
そこでYISでは、短時間のイントロダクションと、実践を中心とした教材を組み合わせたカリキュラムを設計しています。
- イントロダクション:8時間 × 2回(計16時間)
AI駆動開発に必要となる事前準備や基礎知識を学び、AIを活用した開発を始めるための土台をつくる。
- 実践教材:40時間
実際にAIツールを使ってアプリケーションを開発し、AI駆動開発や仕様駆動開発を体験する。
合計56時間のカリキュラムですが、すべてを一度に受講するのではなく、実際の業務と並行しながら、自分のペースで実践教材に取り組める構成としています。
質問はTeamsのチャネルへ
研修はオンラインで受講できる形式とし、業務と両立しながら自分のペースで学べるようにしています。
受講中に分からないことや困ったことがあれば、社内のTeamsでいつでも質問できる環境を整えています。
アンケートで研修を改善
研修の最後には、受講者へのアンケートを実施しています。研修内容や学習環境についての意見を集め、受講者の声をもとに教材やカリキュラムを見直し、次の研修の改善につなげています。
集まった回答をもとに改善案を立案し、次の教材設計と受講計画に反映します。
「研修を実施して終わり」ではなく、受講 → 振り返り → 改善を繰り返しながら、より実践的なAI人材育成カリキュラムへとアップデートしていきます。
AI駆動開発を実際にやってみる
YISのAI人材育成カリキュラムは、座学とハンズオンの両方で構成しています。
受講者はまず「AIはコパイロットであり、パイロットではない」というAI駆動開発の基本を学び、その上で実際のAI開発ツールを使って開発を進めます。AIに任せる部分と自分で判断する部分を、手を動かしながら切り分けていきます。
AI駆動開発のカリキュラム
研修では、Webアプリケーションの開発を題材に、以下のような内容を実践します。
単にAIにコードを生成させるだけではなく、仕様を整理し、AIに指示を出し、生成されたコードを確認・修正するという一連の開発プロセスを体験します。
研修から実践へ。社内PoCにも挑戦
AI人材育成の目的は、研修を受けてAIの知識を身につけることだけではありません。
身につけたスキルを実際の仕事で活用し、そこから新しい価値を生み出すことが重要だと考えています。
そのためYISでは、社内研修と並行して、AI駆動開発の社内PoCにも取り組んでいます。
PoCでは、AIを活用したWebアプリケーションの高速開発やAIエージェントの制作など、実際の開発をテーマに検証を行っています。開発には「Claude Code」を使っています。
社内PoCについてはこちらの記事をご覧ください。
そして、これからは「FDE」
ここまで、YISが取り組んでいるAI人材育成について紹介してきました。
AIによって開発そのものが効率化されていく中で、エンジニアに求められる役割も変わりつつあります。「AIを使ってコードを書く」その先には、AIを活用して顧客の課題を見つけ、解決までつなげるエンジニアの姿があります。
私たちがその先のエンジニア像として注目しているのが、FDE(Forward Deployed Engineer)
FDEとは、顧客の業務や組織、社内システムを深く理解して課題を明確にし、解決するためのシステムを実装するエンジニアです。システム開発では生成AIを活用し、検証と実装のサイクルを高速に回します。
米OpenAI(オープンAI)と米Anthropic(アンソロピック)が2026年5月、FDEのチームを抱える新会社を相次いで立ち上げたことで、FDEへの関心が高まっています。
YISでも、AI人材育成やAI駆動開発、社内PoCを通じて、AIを使ってコードを書くことだけではなく、AIを武器に顧客の課題を解決できるエンジニアへの転換を目指しています。



