きっかけ
先日、営業現場の後輩から「前の入居者の家具が写り込んでる物件写真、どうにかならない?」という相談を受けました。確かに、ベッドやソファが置いてある写真だと、新しい入居者は自分の生活をイメージしづらい。
以前であればPhotoshopでちまちま消そうかと思ったんですが、「Geminiの画像生成モデル(Nano Banana)が結構使える」という話もあり「家具設置がいけるなら除くこともできるのでは」と、試してみることにしました。
結論から言うと、同じプロンプトを繰り返すだけで、かなり実用的な空室写真が作れることが分かりました。今回は、その具体的な方法をまとめてみます。
パターン①
before
after
パターン②
before
after①
after②
もちろん、AIには癖がある
Nano Banana(Gemini 2.5 Flash Image)を使ってみて最初に気づいたのは、「単に"家具を消して"と言っても、思った通りにはいかない」ということ。
例えば:
- そもそも家財・残置物が全然消えない
- 壁際の本棚を消したら、壁も一緒に消えた
- なぜか新しい家具が追加された(?)
でも、いろいろ試していくうちに、完成像を先に言語化することで安定することが分かってきました。つまり、「○○を消して」じゃなくて「退去後の空室として仕上げて」という指示の方が効くんです。
実戦で使える3つのプロンプト
試行錯誤の結果、以下の3パターンに落ち着きました。コピペで使えるように、原文のまま載せておきます。
①標準版(まずはこれから)
この写真を**退去後の空室写真**として仕上げてください。固定設備(壁・床・天井・巾木・窓/サッシ・建付け照明/スイッチ・エアコン・カーテンレール・鏡)は保持し、**可動物はすべて撤去**。**画角/パース・光の方向/影・窓外の見え方・鏡と床の反射**は元画像に一致。**縦横比とフレーミングは変更しない**。**新規物体の追加や色/材質変更は禁止**。
ポイントは、何を残すか(固定設備)と何を消すか(可動物)を明確に分けていること。あと、物理的な整合性(影とか反射)もちゃんと指定してます。
②厳格版(頑固な家具に)
**空室レンダリング(厳格)**:固定設備のみ残し、家具・衣類・小物・段ボール・家電・ケーブル等**可動物は完全撤去**。**鏡/床の反射と窓外**は実景に**厳密一致**。**縦横比・フレーミング固定**。**追加物・色/材質変更・不要なぼかし**は一切禁止。
標準版で消えきらない時の切り札です。「家具・衣類・小物・段ボール」と具体的に列挙することで、AIの理解度が上がります。
③保守版(仕上げ用)
**空室化の微修正**:固定設備は保持、残る可動物のみ自然に撤去。**テクスチャは保持**し、過度な平滑化はしない。**画角・光・反射・窓外**は一致。**縦横比/フレーミング固定**、**追加物と色変更は禁止**。
9割方うまくいった後の最終調整用。テクスチャを保持して、のっぺりした感じを防ぎます。
実際のワークフロー(ここが肝)
1. 基本は「同じプロンプトを繰り返す」
最初は信じられなかったんですが、同一のプロンプトを2〜5回繰り返し実行するだけで、どんどん綺麗になっていきます。
1回目:大きな家具が消える
2回目:細かい物が消える
3回目:反射や影が自然になる
4〜5回目:微調整される
毎回違うプロンプトを考える必要はありません。同じものをコピペで投げ続けるだけ。
2. プロンプトの使い分け
3. その他Tips
実際に使っていて起きた問題と解決策:
問題 | 対処法 |
---|---|
アスペクト比が変わる | プロンプト末尾に「トリミングは行わない」を追記(1回だけ) |
色味が変わる | 「ホワイトバランスは元画像に一致」を追記 |
新しい家具が出現 | ②厳格版を1回使って、すぐ①に戻す |
反射に家具が残る | そのまま同じプロンプトを繰り返す(大体3回目で消える) |
品質チェックのポイント
完了判定は以下の3つのうち2つを満たせばOKとしています:
- 可動物が目視でゼロ
- 鏡・床の反射が室内と論理的に一致
- 縦横比・フレーミングが原図通り(巾木や窓枠に歪みがない)
特に「反射の整合性」は見落としがちなので要注意。床がピカピカの物件だと、消した家具の反射だけ残ることがあります。
実際に使ってみた感想
正直、最初は「いちいちプロンプトつくるためのメタプロンプト作るのめんどくさー」と思っていました。でも、この「同じプロンプトを繰り返す」方式なら、特別な知識がなくても使えます。
もちろん、プロのレタッチャーさんの仕事と比べると、細部のクオリティは劣ります。でも、イメージ画像として「家具がない状態をイメージしてもらう」という目的なら、十分実用レベルだと感じました。
何より、1物件あたり5〜10分で処理できるのは大きい。以前なら半日かかっていた作業が、お昼休みの間に終わります。
まとめ
Nano Bananaを使った家具除去、営業後輩の反応を見るに、思っていたより実用的かもしれません。ポイントは:
- 完成像を先に言語化する(「空室として仕上げて」)
- 同じプロンプトを繰り返す(2〜5回)
- 物理的整合性を明示する(反射・影・アスペクト比)
この3つを押さえれば、誰でもそれなりの結果になるはずです。
他にも「こんな使い方があるよ」というアイデアがあれば、コメントで教えてもらえると嬉しいです。
それでは、良いAIライフを!
参考:英語版プロンプト
海外の物件や、英語環境で使う場合はこちらをどうぞ:
英語版プロンプト(クリックで展開)
①Standard
Render this photo as a **vacant, move-out room**. **Keep** fixed elements (walls, floor, ceiling, baseboards, windows/frames, built-in lights & switches, AC, curtain rail, mirrors). **Remove all movable items**. **Match** original **perspective, lighting/shadows, window view, and mirror/floor reflections**. **Do not change** aspect ratio or framing. **Do not add** new objects or change colors/materials.
②Strict
**Vacant rendering (strict)**: Keep only fixed elements; **fully remove** furniture/clutter/clothes/boxes/appliances/cables. **Exactly match** mirror/floor reflections and the window view. **Lock** aspect ratio & framing. **No new objects, no color/material changes, no artificial blur.**
③Conservative
**Vacancy fine-tune**: Keep fixtures, remove remaining movable items only. **Preserve textures** (no over-smoothing). Match perspective, lighting, reflections, and window view. **Lock** aspect ratio/framing; **no new objects or color changes**.
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