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仕様駆動開発(Spec Driven Development)について

Last updated at Posted at 2025-07-21

はじめに

「コードを書く前に、まず仕様を明確にしよう」

これが仕様駆動開発(Spec Driven Development)の基本的な考え方です。近年、AI支援型の開発ツールや自動生成ツールの普及とともに、この開発手法が再注目されています。

仕様駆動開発とは?

**仕様駆動開発(Spec Driven Development)**とは、ソフトウェア開発の初期段階で「仕様(Spec)」を明確かつ構造的に記述し、その仕様を軸に設計・実装・テスト・ドキュメント化までを一貫して行う開発手法です。

基本的な開発フロー

仕様駆動開発では、以下のような流れで開発を進めます:

1. 事前準備

  • 開発するシステムや機能の目的・概要・ゴール・制約を整理

2. 要件定義

  • システムが満たすべき条件や仕様(requirements)を詳細に文書化

3. 設計フェーズ

  • 要件に基づいた設計(設計書やAPIスキーマ、各種仕様書)の作成

4. 実装計画

  • 設計内容に沿ったタスクや開発計画の整理

5. 実装・検証

  • 仕様・設計に沿ってコーディング、テスト、ドキュメント化など一連のサイクル

このプロセスは「コードを書く前に"考える"フェーズ」を明確にし、プロジェクトの"前提"や"根拠"を曖昧にせず残すことで一貫性と品質を高めることができます。

仕様駆動開発の代表的な手法

1. API仕様駆動開発(スキーマ駆動開発)

最も一般的な仕様駆動開発の形態です。OpenAPI(Swagger)、GraphQL、gRPCなどのAPI仕様/スキーマをまず設計し、その仕様をベースにサーバ/クライアント双方のコード自動生成やテスト、ドキュメントまで統一管理します。

具体的な流れ:

  1. OpenAPI仕様でAPIの設計を記述
  2. 仕様からサーバー・クライアントのコードを自動生成
  3. 仕様から自動的にAPIドキュメントを生成
  4. 仕様に基づいたテストケースを作成

2. AIアシスタントを活用した新しいSpec Driven Development

KiroなどのAI IDEを使うことで、自然言語で仕様や要件を入力し、そこから設計・実装・テストに落とし込むワークフローを自動化できます。

具体的な流れ:

  1. 自然言語で機能要件を記述
  2. AIが仕様書や設計書を生成
  3. 生成された設計に基づいてコードを実装
  4. 仕様に沿ったテストを自動生成

仕様駆動開発のメリット

🎯 開発の一貫性が高まる

仕様が全工程の"単一の信頼できる情報源"となり、設計・実装・テスト・ドキュメントの食い違いが減少します。

🔄 手戻りや認識ズレの削減

プロジェクトの初期段階で関係者間の認識合わせやレビューがしやすくなり、後工程での大幅な修正を防げます。

⚡ 自動生成による効率化

スキーマや仕様からコード、テスト、APIドキュメントを自動生成できるため、生産性や保守性が向上します。

📝 変更管理が容易

仕様や設計の修正が即座に各工程へ反映されやすく、変更の影響範囲を把握しやすくなります。

👥 新規メンバーにも分かりやすい

体系立った仕様が残っていることで、プロジェクトに途中参加したメンバーのキャッチアップがしやすくなります。

仕様駆動開発のデメリット・注意点

💰 初期コストとモデリングスキル

初期段階で仕様をしっかり記述する必要があり、要件整理やモデリング能力が求められます。

🔧 要求変更に対する柔軟性

要件が頻繁に変化する場合、仕様やスキーマの修正・メンテナンスに手間がかかります。

🛠️ ツールへの依存リスク

自動生成や仕様管理のツールに依存することになるため、ツール選定や運用ルールの整備が必要です。

📚 学習コスト

新しい開発フローやツールに慣れるまで学習速度や生産性が一時的に低下する場合があります。

他の開発手法との違い

開発手法 中心となるもの 目的・特徴
仕様駆動開発 仕様(Spec, スキーマ) 前提・要件を明確化し、全工程を仕様中心で進行
テスト駆動開発 テスト(Test) 先にテストケースを定義し、テストをクリアする形で実装
振る舞い駆動開発 振る舞い(BDD) ユーザー視点の振る舞いシナリオ記述に基づき実装
コードファースト コード まず手を動かし、随時仕様をまとめる従来型フロー

実践のポイント

1. 段階的な導入

いきなり全てを仕様駆動で進めるのではなく、まずは小さなモジュールやAPIから始めて、チームが慣れてから範囲を拡大していきましょう。

2. 仕様の粒度を適切に

細かすぎる仕様は保守が大変になり、粗すぎる仕様は実装時の判断に迷いが生じます。プロジェクトの性質に応じて適切な粒度を見極めることが重要です。

3. ツール選定の慎重さ

自動生成や仕様管理のツールは、チームのスキルレベルや既存の開発環境との親和性を考慮して選択しましょう。

4. 継続的な仕様メンテナンス

仕様は「書いて終わり」ではなく、実装の進捗や要件変更に応じて継続的に更新していく必要があります。

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