こんにちは!2ちゃんねる互換掲示板システム「 つゔぁいちゃんねる(2ch.biz) 」の開発録、第49回です。
Webアプリケーションのデバッグにおいて、最も開発者を苦しめるのは「エラーメッセージが出るバグ」ではありません。
最も恐ろしいのは、 「エラーも出ず、通信も発生せず、何も起きないままUIが静かにフリーズするバグ」 です。
前回(第48回)までに、モバイル向けのドロワー式トグルメニューを実装し、UIの使い勝手は申し分ない状態になりました。
しかし、QAテスト中に突如として不可解な現象が報告されました。
「『既存の部屋に参加』タブでルームIDとパスワードを入れてボタンを押すと、 そのまま画面が固まって部屋に入れない! 」
「Networkタブを見てもAPIリクエストすら飛んでいない。何が起きているのか全く分からない!」
ボタンを押してもサーバーへリクエストすら送信されない――。
本稿では、ブラウザの内部ストレージ(IndexedDB)のバージョンアップと接続ロックが引き起こしていた「目に見えないデッドロック」の真相と、非同期処理の完全非ブロッキング化による解決劇をお届けします!
1. 異変の観測:ネットワーク通信すら始まらない沈黙
通常、通信に失敗したのであれば fetch のエラーハンドラが動き、404や500のエラーが返るはずです。
しかし、今回のバグでは ブラウザのDevTools Networkタブが完全に無反応 でした。
コードを1行ずつブレークポイントで追跡したところ、入室関数の冒頭にある await this.historyStore.getRoomMeta(roomId) の行で、 Promiseの解決が永久に止まっている(ハングアップしている) ことが判明しました。
2. 原因究明:IndexedDB open に潜む「デッドロックの罠」
第47回で、私たちは部屋名を端末に保存するため、IndexedDBのスキーマバージョンを 1 から 2 に引き上げました(rooms オブジェクトストアの新設)。
実は、ここにブラウザの仕様による 巨大な落とし穴 がありました。
IndexedDBは、スキーマバージョンを変更(マイグレーション)する際、 「同一オリジン内で開かれているすべての古いバージョンのDB接続が完全にクローズされるまで、新しいDBオープンを保留(ブロック)する」 という極めて厳格な排他制御を行います。
ユーザーが掲示板の別タブを開いていたり、バックグラウンドに以前のチャットタブが残っていた場合、onblocked イベントが発生し、req.onsuccess コールバックが 1ミリ秒も発火しなくなっていたのです。
その結果、historyStore.readyPromise は永遠に未解決のままとなり、それに依存していた入室処理全体が道連れになってフリーズしていたのでした。
3. 解決策:非同期ストレージ待機でネットワークを絶対に止めるな
この教訓から私たちが導き出した鉄則は、 「チャットの入室という最優先のリアルタイム通信を、ローカルストレージの準備待ちに巻き込んではならない」 というアーキテクチャの分離でした。
4. 実装の全貌
(1) getRoomMeta の完全同期・非ブロッキング化
部屋名のメタデータは、重たいIndexedDBのオープンを待たずとも、ブラウザの同期ストレージ(localStorage)のインメモリキャッシュから 0ミリ秒で即座に取得・返却 できるように改修しました。
/**
* 部屋メタデータの即時同期取得
*/
getRoomMetaSync(roomId) {
try {
const raw = localStorage.getItem(`p2p_room_meta_${roomId}`);
if (raw) {
return JSON.parse(raw);
}
} catch (e) {
// 例外時も処理を止めない
}
return null;
}
(2) IndexedDB初期化のタイムアウト保護とブロック解除
initDB() において、1秒(1,000ms)経過してもDBが開かない場合は強制的にPromiseを解決し、インメモリモードで進行させます。また、onblocked および onversionchange を適切に処理して別タブとの競合を即座に解消します。
initDB() {
return new Promise((resolve) => {
let isResolved = false;
// ★1秒タイムアウトガード:DBが詰まってもアプリ全体を道連れにしない!
const timer = setTimeout(() => {
if (!isResolved) {
isResolved = true;
console.warn('[STORAGE] IndexedDB open タイムアウト。インメモリモードで進行します。');
resolve();
}
}, 1000);
try {
const req = indexedDB.open(this.dbName, 2);
// 別タブが古い接続を開いている場合のブロック検知
req.onblocked = () => {
console.warn('[STORAGE] IndexedDB が別タブによってブロックされています。');
if (!isResolved) {
isResolved = true;
clearTimeout(timer);
resolve();
}
};
req.onupgradeneeded = (e) => {
// スキーマ構築...
};
req.onsuccess = (e) => {
this.db = e.target.result;
// 別タブが新しいバージョンを開いた時は古い接続を自動で閉じる
this.db.onversionchange = () => {
this.db.close();
};
if (!isResolved) {
isResolved = true;
clearTimeout(timer);
resolve();
}
};
req.onerror = () => {
if (!isResolved) {
isResolved = true;
clearTimeout(timer);
resolve();
}
};
} catch (err) {
if (!isResolved) {
isResolved = true;
clearTimeout(timer);
resolve();
}
}
});
}
(3) 入室ハンドラの例外完全防御
ボタン押下時のイベントリスナー全体を try-catch で包み込み、いかなる想定外のエラーが発生してもローディングスピナーを解除して親切なメッセージを表示するようにしました。
5. 自動テストによるハングアップ防止の検証
テストスクリプトを実行し、あえてIndexedDBをロック・未解決状態にした環境で入室ボタンを押すシミュレーションを行いました。
| テスト環境 | 修正前 | 修正後(本改修) |
|---|---|---|
| 正常系 | 入室成功(約200ms) | 入室成功(約20ms: 10倍高速化 ) |
| 別タブが古いDBを開いている時 | 永久フリーズ(画面沈黙) | 0ms でシグナリングへ直行し即座に入室成功! |
| IndexedDBが無効なシークレットモード | エラーで停止 | インメモリにフォールバックして問題なく稼働 |
6. まとめと次回予告
「ストレージの非同期待機に、リアルタイムな通信を巻き込んではならない」――。
IndexedDBのマイグレーションと排他ロックが引き起こしたサイレントハングを、タイムアウトガードと同期キャッシュの二重構造によって完全に解消しました。
これで通信の信頼性は盤石になりました。
しかし、チャットが広く使われるようになるにつれ、今度は 「プライバシーに関する衝撃的なセキュリティインシデント」 が発覚します。
「スレッドに貼られた招待URLを踏んでチャットに入ると、 ブラウザのアドレスバーにパスワード(合言葉)が丸見えのまま残っている! 」
「そのURLを別のスレにコピペした瞬間、秘密の合言葉まで全員に漏洩してしまう!」
次回は、 【第050回】招待URLから合言葉が漏洩する大ピンチ!アドレスバーの&key=完全撤去とメモリ内管理 をお届けします。お楽しみに!
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