AWS vs GCP セキュリティ設計の違いの整理
はじめに
私自身はAWSをこれまで仕事で利用してきましたが、個人研究用途(データサイエンティスト的利用方法)ではGCPが魅力的に見えてきたため、両者の比較をしようと思い立ちました。
AWSとGCPは、それぞれ異なる設計思想でセキュリティを実現しています。本記事では、両者の違いを客観的に比較し、選択の判断材料を整理したいと思います。
この記事は優劣を論じるものではありません。両クラウドとも高度なセキュリティを提供しており、自社の要件に合った選択が重要です。
セキュリティ設計の比較
基本方針の違い
| 項目 | AWS | GCP |
|---|---|---|
| 設計思想 | 柔軟性を重視した選択型 | 一貫性を重視した統合型 |
| デフォルト設定 | 必要な機能を選択して有効化 | 主要機能が初期状態で有効 |
| カスタマイズ性 | 高度に細かい設定が可能 | シンプルで統一された設定 |
| 学習曲線 | 多機能で習得に時間がかかる | 比較的シンプルで理解しやすい |
主要機能の比較
| セキュリティ機能 | AWS | GCP |
|---|---|---|
| データ暗号化 | 各サービスで個別に設定 | 全サービスでデフォルト有効 |
| 監査ログ | CloudTrail(設定必要) | Cloud Audit Logs(自動記録) |
| ネットワーク | VPC、Security Group、ACL | VPC Service Controls |
| アクセス管理 | IAM(詳細な条件設定可) | IAM(プロジェクト単位) |
| 脅威検知 | GuardDuty、Inspector | Security Command Center |
| ゼロトラスト | Verified Access(追加機能) | BeyondCorp(標準組み込み) |
設計アプローチの特徴
AWS のアプローチ
特徴
- 豊富な機能から必要なものを選択
- 詳細な設定によるきめ細かい制御
- 多様なユースケースに対応
このアプローチが適する場合
- 複雑な要件がある
- 既存のAWS環境やスキルがある
- 特定のAWSサービスが必要
- 詳細なカスタマイズが求められる
GCP のアプローチ
特徴
- セキュリティ機能が標準で組み込み
- 統一された設計思想
- ゼロトラストが基盤
このアプローチが適する場合
- シンプルな構成を求める
- 設定ミスを減らしたい
- データ分析・機械学習が中心
- ゼロトラストを迅速に導入したい
具体例:暗号化とログ
データ暗号化の扱い
AWS
S3バケットの暗号化: 個別に設定が必要
RDSの暗号化: 作成時にオプション指定
EBSの暗号化: ボリューム作成時に選択
GCP
Cloud Storageの暗号化: 自動的に有効
Cloud SQLの暗号化: デフォルトで有効
Persistent Diskの暗号化: 自動的に有効
監査ログの扱い
AWS
- CloudTrailの有効化が必要
- ログの保存先(S3)を設定
- GuardDutyで脅威検知(有効化必要)
GCP
- Cloud Audit Logsが自動的に記録
- 管理アクティビティログは無料
- Security Command Centerで統合管理
選択時の考慮事項
既存環境がある場合
| 状況 | 考慮点 |
|---|---|
| 既存AWS環境 | AWSの継続利用で移行コスト削減 |
| 既存GCP環境 | GCPの継続利用で移行コスト削減 |
| オンプレミス | 要件に応じてどちらも選択可能 |
組織体制による考慮
| 組織の状況 | AWS | GCP |
|---|---|---|
| セキュリティ専門チーム | ○ 詳細設定可能 | ○ シンプル管理可能 |
| 少人数チーム | △ 学習コスト高 | ○ 設定がシンプル |
| 複数プロジェクト | ○ 柔軟な分離 | ○ プロジェクト単位管理 |
技術要件による考慮
| 要件 | AWS | GCP |
|---|---|---|
| 詳細なカスタマイズ | ○ 高い柔軟性 | △ 標準的な設定 |
| 迅速な構築 | △ 設定項目多い | ○ デフォルト設定 |
| コンプライアンス | ○ 多数の認証 | ○ 主要認証対応 |
| ゼロトラスト | ○ 構築可能 | ○ 標準実装 |
まとめ
AWSとGCPは、どちらも高度なセキュリティ機能を提供していますが、そのアプローチが異なります。
設計思想の違い
- AWS: 「選択肢の豊富さ」を提供。詳細な設定により多様な要件に対応
- GCP: 「統一された安全性」を提供。デフォルトで安全な設定
選択のポイント
選択は「優劣」ではなく「適合性」で判断します:
- 既存環境・スキルの有無
- 組織の体制と規模
- カスタマイズの必要性
- 構築・運用の優先事項
マルチクラウド戦略
実際には、用途に応じて両方を使い分ける企業も増えています。それぞれの強みを活かす選択も有効です。