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【参加レポート】Cursor Meetup Tokyo #2:エンジニア、デザイナー、PMの境界線がなくなるという話、Cursor vs TRAEの話

Last updated at Posted at 2025-11-09

はじめに

2025年10月29日、生成AI搭載エディタ「Cursor」のユーザーコミュニティイベント「Cursor Meetup Tokyo #2」に参加してきました。

本イベントではAI駆動開発の輝かしい未来が語られた一方で、日々激化するAIツール競争の最前線にいる一エンジニアとしては、ツールの「熱量」や「持続可能性」について冷静に考えさせられる場でもありました。
本記事では、感銘を受けたセッションの内容と、競合ツール(TRAE)ユーザーとしての率直な感想を共有します。

イベント概要

  • イベント名: Cursor Meetup Tokyo #2 | AIAU
  • 主催: AIAU(AI Agent User Group)
  • 主要テーマ: AI駆動開発の実践事例、セキュリティ、デザインとの融合、AIへの委任判断基準

最も刺さったセッション:Ryo氏が語る「ビルダーの再統合」

CursorのDesign LeadであるRyo氏のセッションは、AI時代における開発者の在り方を再定義する、非常に示唆に富んだものでした。

「ビルダー」への再統合

かつて、ソフトウェアを作る人は職能で分断されておらず、全員が「作り手(ビルダー)」でした。しかし、効率化の過程でエンジニア、デザイナー、PMといった専門分化が進み(何なら、プロダクトエンジニア、UIデザイナー、プロダクトマネージャーなどもっと細かく職種が分けられている)、結果としてプロダクトの本質的な改善スピードは落ちてしまっているそうです。
Ryo氏は、AI(Cursor)がこの分断を再び繋ぎ合わせ、私たちを本来の**「ビルダー」へと再統合する**と語りました。エンジニアもデザイナーも、AIという共通言語を通じて、再びプロダクトそのものに向き合えるようになるというビジョンです。
これについては、私もこのような世界になると感じていて、なぜかというと、AIの出現によって極端に言えば、営業や経理、建築現場の人であっても、AIツールを使えばアプリケーションの開発ができてしまうわけです。こうなると、AIによって職種の境目がChatGPT出現前のような明確な線引きは無くなって、営業もできる、開発もできる、デザインもできるマネージャー、みたいな職種混合の、言ってしまえば「百姓」のような人がこれから必要とされるのではないかなと思っています。

「UIとUX」は切り離せない

この「再統合」の概念は、UI/UX論にも通じます。Ryo氏は**「より良いプロダクトのために、UIとUXを切り離すべきではない」**と指摘しました。
印象的だったのは、「当たり前の設計を疑う」というトレーニングの話です。

「なぜ椅子と机はセットなのか?」

私たちは普段、椅子と机がセットであることを疑いません。しかし、「なぜ分かれているのか?」「一つではいけないのか?」と、当たり前の設計に疑問を持つこと。こうした根源的な問いかけこそが、本質的な体験(UX)と実装(UI)を同時に鍛える鍵になるという話は、非常に腑に落ちるものでした。


その他のセッションハイライト(ざっくりまとめ)

  • 非エンジニアの台頭: CISOやデザイナーがCursorで独力開発する事例が増加。エンジニアの役割は「整地」や「レビュー」へシフトしつつある。
  • セキュリティの脅威: AIエージェントは便利だが、Web検索機能などを通じて悪意あるプロンプトを拾うリスク(プロンプトインジェクション)がある。
  • 任せる判断軸: 長く使う「幹」のコードは人間が把握し、使い捨ての「枝葉」はAIに任せるべき。

セキュリティの脅威については、私の勉強不足でわからない部分も多かったが、これらのセッションは全体的にそれほど驚愕する内容ではなかったです。新たな気づきは、ほぼなかったと言っていいと思います。


率直な感想:競合「TRAE」ユーザーから見たCursorの現在地

ここからは、少しシビアな個人的見解を述べます。
Cursorの色々な使い方が発表された一方で、実は「Cursorそのものの魅力」はあまり伝わってきませんでした。私は普段、ByteDance発のAIエディタ「TRAE」を使用しており、それと比較して「熱量」や「企業体力」の差を感じてしまったのが正直なところです。

1. 「熱量」と「企業体力」の差

AIツール開発は長期戦であり、背後にある企業の「本気度」や「体力」がモノを言います。
TRAEを開発するByteDanceのイベントに先日リアルで参加した際、「Googleの隣にオフィスを構え、Googleが消灯するまで帰らない」という凄まじい熱量が語られていました。実際のイベントでも豪華な弁当が振る舞われたり、イベント内でVibe Codingをして評価されたプロダクトに賞金が出たりと、資金力とコミュニティへの投資姿勢が明確です。
翻って今回のMeetupでは、そこまでのヒリヒリするような熱量や、圧倒的な企業体力を感じることはできませんでした。長く戦っていくツールとして、資金面での見劣りは否めません。

2. コストパフォーマンスと機能差

現実的なコストの問題もあります。

  • TRAE: $10 / 月(プランはシンプルで1つだけ)
  • Cursor: Pro·$20 / 月、Pro+. $60 / 月、Ultra. $200 / 月

同じようなスペックであれば、安い方を選ぶのが自然です。TRAEでは月額内でGPT-5-high/mediumやGrok4などが利用可能です。APIシークレットを入れればClaude 4.5 Sonnet(※近々使えるようになるという噂を聞いた気がします)なども利用できます。
モデルの選択肢に大きな差がない現状で、倍以上の料金を払う意味をどこに見出すかは難しい問題です。

簡単な比較表も作ってみました。

Cursor vs TRAE 機能比較表

機能/特徴 Cursor TRAE 比較コメント
Vercel連携 (拡張機能) ✅ 可能 (シームレス) ✅ 可能 (シームレス) どちらもVS Code拡張機能がそのまま動くため、同等に可能です。
Git/デプロイ操作 ✅ 可能 ✅ 可能 標準的なGit操作は両者とも問題なし。
AIによるエラー修正 ✅ 得意 ✅ 得意 ビルドエラーをAIに投げて修正案をもらう流れは両者ともスムーズです。
AIの応答速度/体験 🚀 高速 ⚡️ 超高速 TRAEは後発だけあり、応答速度やストリーミングの滑らかさに非常に力を入れています。
コンテキスト管理 ✅ 手動/自動 (詳細設定可) ✅ より自動化 TRAEは関連ファイルを自動で検知する能力が比較的高く、「勝手に文脈を理解している」感覚が強いです。
日本語対応 🔺 部分的 (UIは英語中心) ✅ 標準対応 TRAEはUIの日本語化が進んでいます(設定で変更可能)。
安定性・実績 🎖️ 高い 🆕 これから 業務で安心して使えるのは現時点ではCursorです。

3. セキュリティリスクに対する考え方

「中国企業(ByteDance)製は危険では?」という声もありますが、個人的にはどのAIツールを使ってもリスクは五十歩百歩だと考えています。
めちゃくちゃ訓練されたAIモデルに我々のやり取りが学習利用されたとしても、膨大なデータから見れば「海にコップ一杯の赤い溶液を垂らす」程度の影響しかないでしょう。実利を取るべきフェーズだと感じています。
ただ、これは共有になりますが、省庁が運営するシステムに、何らかのAI機能を搭載しようとして、それが中国製であると検知された場合、危険とみなされて搭載できないことがありますので、そこの注意は必要です。TRAEについては、これをシステムで直接使用するわけではないので、その点では不安に思う必要はありません。


まとめ

Cursorが掲げる「ビルダーの再統合」という哲学には強く共感しました。
しかし、ツール選定という現実的なレイヤーにおいては、「熱量」「資金力」「コスパ」で勝る競合がひしめいています。
現状では、安全性をとってCursorを選ぶか、圧倒的なコスパをとってTRAEを取るか、という戦いな気がします。

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