はじめに
サークル内でAIを使った記事の話題になり、いかにもAIが書いたような書き出しのものがどれだけあるのか気になったので調査してみることにしました。
結論
- 生成AIの返答の書き出し「はい、承知いたしました」が記事の冒頭にそのまま残った記事は、Zenn・Qiitaともに多く見積もっても0.03%以下です。
- Qiitaの本文検索で探しても、冒頭に残っている記事は現存4件だけでした。文言を含む記事の大半は、AIとの会話を「引用」として紹介する記事でした。
何を「AIの痕跡」とみなしたか
生成AIに「記事を書いて」と頼むと、次のような返事が返ってくることがあります。
はい、承知いたしました。〇〇に関する技術記事を、指定された条件で作成します。
この1行目を消し忘れたまま投稿すると、記事が「はい、承知いたしました」で始まります。今回はこれをAIの出力をそのまま貼った痕跡とみなしました。
判定の条件は次のとおりです(ザッと調査するために筆者が決めたもので、厳密性は全然ありません)。
| 判定 | 条件 |
|---|---|
| 冒頭の痕跡 | 本文の最初の段落が「はい、承知いたしました」で始まる |
| 締めの痕跡 | 本文の最後の段落に「お役に立てれば幸いです」がある |
| 数えない | 引用・コードブロックの中にある場合(AIの返答を紹介しているだけなので) |
調べ方
| Zenn | Qiita | |
|---|---|---|
| 全記事数(サイトマップに載っている記事) | 277,648件 | 1,237,219件 |
| 無作為に選んだ件数 | 10,000件 | 10,000件 |
| 本文の取得方法 | Zennの記事API | Qiita公式API v2 |
| 取得できなかった記事 | 0件 | 2件(削除済み) |
- 乱数の初期値を固定して選んだので、同じ手順で同じ記事を選び直せます。
- サーバーに負担をかけないよう、取得は1件ずつ間隔を空けて行いました(Qiitaは1時間1,000件の上限内)。
結果1: 無作為に選んだ1万件
| Zenn | Qiita | |
|---|---|---|
| 冒頭が「はい、承知いたしました」 | 0件 | 0件 |
| → 全体での割合の上限(95%) | 0.03%(約83件まで) | 0.03%(約371件まで) |
| 最後の段落に「お役に立てれば幸いです」 | 14件 | 17件 |
1万件中0件でも「全体で0件」とは言えないので、統計的に「多くてもこの割合まで」という上限を出しています(Clopper–Pearson法という、0件のときにも使える標準的な計算方法)。
「お役に立てれば幸いです」はAIの痕跡としては使えませんでした。 見つかった31件の最後の段落を読むと、「個人的な備忘録を兼ねて書きましたが、どなたかのお役に立てれば幸いです」のような、普通の締めの挨拶ばかりでした(Qiitaってそもそも「お役に立てれば幸い」精神で書くものだしね)。
結果2: Qiitaの本文検索で探した80件
無作為抽出では見つからなかったので、Qiitaの検索機能で「はい、承知いたしました」を含む記事を探しました(2026年10月20日時点)。
| 文言の位置 | 件数 |
|---|---|
| 冒頭(AIの出力をそのまま貼った痕跡) | 4件(2025年4〜9月、すべて別の著者) |
| 冒頭以外 | 74件 |
| 検索には出たが、判定では見つからない | 2件 |
冒頭以外の74件の多くは、「AIにこう聞いたらこう返ってきた」と会話を引用して紹介する記事でした。AIの利用方法などについての記事ということですね。
注意点
- 消された記事は数えられない: 調査のきっかけになった「はい、承知いたしました」で始まる記事は、数日後に削除されていました。こうした記事が運営により消されているなら、今回の数字は実際に投稿された数より少なくなります。
- この1文で判定できるのは、ごく一部: 1行目を消してから投稿したAI生成記事は、今回の方法では見つかりません。「AIで書かれた記事の割合」ではなく、「AIの返事を消し忘れた記事の割合」を測った調査です。
- 検索の件数は、Qiitaの検索の仕様に依存します。
まとめ
AIで書きました候の文章がホイホイ出てくるものかと思いきや、無作為に抽出すると全然出てこなかったのが意外でした。本人が投稿後に気づいて消しているなどの原因が考えられるので、AI丸出し文章が見られたあなたはラッキーということでいいんじゃないでしょうか。(コインを12回投げて全部表が出る確率が4,096分の1(約0.024%)なのでそれくらい)
データの取得について
今回のデータ収集では、各サービスの規約に沿うよう次の点に気をつけました。
- Qiita: 公式に公開されている Qiita API v2 を使い、アクセストークンで認証したうえで、1時間あたり1,000件の利用上限内で取得しました。記事の一覧は、検索エンジンなどの機械向けに公開されているサイトマップから取得しています。Qiitaの利用規約に、APIでの取得を禁止する条項はありません。
- Zenn: Zennのサイトが内部で使っているAPIから、1秒に1件の間隔で取得しました。公式に公開されたAPIではありませんが、Zennの利用規約に取得を禁止する条項はありません。
- 個人情報: 著者のユーザー名などは集計に使わないため、手元のデータからも削除しました。この記事にも、個別の記事や著者が分かる情報は載せていません。
- 著作権: 記事本文は判定のために一時的に読み込んだだけで、記事に載せているのは集計結果のみです。日本の著作権法 第30条の4は、統計的な分析(情報解析)のために著作物を利用することを認めています。
※ 上記は筆者が規約を読んだ範囲での理解であり、法的な判断ではありません。
この記事のデータ収集・集計はプログラムで行い、執筆は筆者が行っています。