この記事は「[開発をちょっと楽にしたTipsを投稿しよう!by DoctorNet Advent Calendar 2026の記事です。
1.はじめに
AIのコーディングアシスタントを毎日使うようになって、ひとつ気づいたことがあります。
それは、同じAIを使っていても、
「すぐ思い通りに動いてもらえる人」 と 「何度もやり直しになる人」 がいる
ということです。
そして、その差は プログラミングの経験年数 でも AIの性能 でもなく、AIへの「頼み方」の考え方のちがい から生まれていました。
今回は「AIに頼んでも、結局自分で直すことになる…」と感じている方に向けて、その「考え方のちがい」を具体例でくらべながら、わかりやすくまとめてみました。
この記事でわかること
- AIに何度もやり直しをさせてしまう「頼み方」の正体
- AIに一発で動いてもらうための 心得5か条
- そのままコピーして使える 頼み方テンプレート
2.お題を考えてみよう
まず、こんな作業を考えてみてください。
作りたいもの
- 社内の「会員管理システム」の改修
- 画面は
React+TypeScriptで作られている - 会員一覧画面に「検索ボックス」を追加したい
使う人
- 店舗の 受付スタッフ
- お客様からの 電話を受けながら、会員を探す
- 会員数はおよそ 3,000人
使える材料
| 材料 | 中身 |
|---|---|
| 既存のコード |
MemberList.tsx(一覧画面)useMembers.ts(データ取得) |
| 会員データの項目 | 会員No / 氏名 / よみがな / 電話番号 / 最終来店日 |
| チームのルール | 入力欄などの部品は components/ui の社内部品を使う |
あなたならAIにどう頼むか、もしお時間があったら考えてみてください。
登場人物
本記事では、次の二人が 同じAIに同じ作業を頼む 過程をくらべながら、その考え方のちがいを整理してみます。
- ベテランエンジニアのAさん
- 入社8年目。責任感が強く、レビューも丁寧で、先輩からも後輩からも信頼されている。
- 新人エンジニアのBさん
- 入社1年目。React の経験は少ないけれど、とても勉強熱心で将来を期待されている。
考え方のちがいを整理した記事ですので、上記の材料しか使えない前提 でお願いします。
「そもそも要件をちゃんと決めろ」「検索はサーバー側でやるべき」など、ご意見はごもっともですが…話が広がりすぎてしまうので、ご了承ください。
3.ベテランAさんの頼み方
Aさんは、まず 自分ならどう実装するか を頭の中で組み立てました。
そして、その手順を そのまま AIに伝えます。
1回目の指示
さすがAさん、手順に迷いがありません。
AIも指示どおりに、すぐにコードを書いてくれました。
ところが、動かしてみると…
2回目の指示
Aさんは「説明が足りなかったか」と、手順を 書き足し ました。
1. useState で keyword を定義する
(中略)
5. 大文字・小文字は区別しない
+ 6. よみがなでも検索できるようにする
+ 7. 電話番号でも検索できるようにする
+ 8. input タグではなく components/ui の TextInput を使う
今度はよみがなでも探せるようになりました。
しかし、また新しい問題が出てきます。
また問題発生!
- 「ヤマダ」(カタカナ)だと見つからない
- 電話番号を「090-1234」とハイフンありで入れると見つからない
- いつのまにか、一覧の 並び替え機能が動かなくなっている
7回目の指示
気配りやのAさん、ぬかりはありません。
問題が出るたびに、丁寧に手順を書き足していきました。
1. useState で keyword を定義する
(中略)
8. input タグではなく components/ui の TextInput を使う
+ 9. ひらがなとカタカナを区別しないようにする
+ 10. 電話番号はハイフンを取りのぞいてから比較する
+ 11. 全角数字も半角数字に変換してから比較する
+ 12. 並び替え機能は元のとおり動くようにする
+ 13. ……
Aさんの結果
はい。これで完成です。
どうでしょうか。みなさんの頼み方とくらべて、似ているところはありましたか?
4.新人Bさんの頼み方
一方で、新人のBさんはどうしたかといいますと...
まず「使われ方」を想像する
Bさんは、いきなりAIに頼まずに、この検索ボックスがどのように使われるか をじっくり考えてみました。
電話で聞くのは「音」だから、お客様の名前は ひらがなやカタカナ で入力しそうだよね
名前を名乗らずに 「電話番号の下4ケタ」 で探すこともありそう
電話をしながらだから、急いで 入力するよね。ハイフンを入れたり入れなかったり、バラバラになりそう
3,000人くらいなら、画面の中で絞り込んでも重くならないかな?
といった風に、使う人の様子を想像してイメージを固めていきます。
イメージをそのまま伝える
そして、その イメージをそのまま AIに伝えました。
Bさんの指示には、useState も filter も出てきません。
大丈夫でしょうか・・・ ![]()
AIが質問を返してくる
すると、AIは コードを書く前に、こんな質問を返してきました。
1. 氏名に漢字が入っていますが、検索の対象は「氏名」と「よみがな」の両方でよいですか?
2. 会員数が3,000人程度とのことなので、画面側で絞り込む方法を考えています。
将来的に大きく増える予定はありますか?
Bさんは「両方でお願いします」「当面は増えません」と答えました。
AIが方針を出してくる
すると、AIは方針を出してくれます。
Bさんは方針を読んで「これでお願いします」と伝えました。
そして、ここでやっと AIがコードを書き始めます。
Bさんの結果
はい。これで完成です!! ![]()
しかも、Bさんが思いついていなかった 「全角数字のそろえ方」 まで、AIが方針の中に入れてくれていました。
5.二人の頼み方をくらべてみよう
二人の結果をくらべてみましょう。どうですか?
| ベテランAさん | 新人Bさん | |
|---|---|---|
| やりとりの回数 | 7回 | 2回 |
| かかった時間 | 約90分 | 約30分 |
| 指示の長さ | 20行以上(だんだん増えた) | 約20行(最初から) |
| 途中でこわれた機能 | 並び替え | なし |
| 指示に書いてあったこと | どうやるか(手順) | なぜ・何を(目的と完成形) |
おもしろいことに、最後の指示の長さは、二人ともほとんど同じ です。
それなのに、結果は大きくちがいました。
なぜ、ここまでちがってしまったのか。二人の手順を復習してみましょう。
Aさんの手順
ベテランのAさんは、自分の頭の中にある実装手順 をそのままAIに渡しました。
AIは手順どおりに動きますが、手順に書かれていないことは考えません。
そのため、Aさんが思いつかなかった問題は、動かしてみて初めて見つかり、そのたびにやり直しになりました。
つまり、Aさんの中で、AIは 「言われたとおりに手を動かす道具」 だったのです。
Bさんの手順
新人のBさんは、まず「どう使われるかをとことん考え」、それを 目的と完成形 としてAIに伝えました。
そして、いきなり作らせずに、質問と方針を先に出してもらいました。
その結果、AIは自分で足りない情報に気づき、Bさんが思いつかなかったことまで方針に入れてくれました。
つまり、Bさんの中で、AIは 「一緒に考えてくれるチームの仲間」 だったのです。
このように、二人では AIへの頼み方の「考え方」や「手順」、意識する「ポイント」が大きくちがう ことがわかったと思います。
6.AIへの頼み方の心得5か条
ちがいがわかったところで、ここからは 「AIに一発で動いてもらうための心得5か条」 として、復習をさせてもらいます。
その1.いきなり手順を書かない
Aさんがやってしまっていましたね。
誤解しないでいただきたいのですが、手順を書くことが悪いわけではありません。
手順を書いてしまうと、AIはその手順の外側を考えなくなります。
そして、手順の「もれ」は、書いた本人が一番気づきにくいものです。
手順を書きたくなったら、少しだけがまんして「何のための手順か」を先に書いてみてください。
その2.「だれが・いつ・なぜ使うか」を伝える
Bさんの指示で一番効いていたのは、「電話を受けながら使う」という一文 でした。
この一文があるだけで、AIは「急いで入力する」「耳で聞いた名前を入れる」といったことを想像できるようになります。
コードには書かれていない「使う場面」は、人が伝えてあげるしかありません。
その3.完成のイメージは「例」で伝える
|
|
|
|---|---|
| ひらがなとカタカナを区別しない | 「やまだ」「ヤマダ」のどちらでも見つかる |
| 電話番号のハイフンを無視する | 「1234」「090-1234」のどちらでも見つかる |
例で書く方が、まちがいなく伝わります。
例があると、AIはそこからルールを考えてくれますし、テストを書くときの材料にもなります。
その4.作る前に「質問」と「方針」を出してもらう
これが 一番の近道 です。
| 頼み方 | まちがいに気づくタイミング |
|---|---|
| いきなり作ってもらう | 動かした あと |
| 方針を先に出してもらう | 作る 前 |
直すのにかかる手間が、まったくちがいます。
その5.「守ってほしいこと」を先に伝える
Aさんのときは、いつのまにか並び替え機能がこわれていました。
「社内部品を使う」「並び替えは変えない」など、変えてほしくないこと を先に伝えておくと、余計な修正をされずにすみます。
おまけ:毎回伝えることはファイルにまとめておく
「社内部品を使う」「テストも一緒に書く」など、毎回伝えることは、AIツールが読みこめる設定ファイルにまとめておくと便利です。
たとえば Claude Code であれば、プロジェクトに CLAUDE.md を置いておくと、毎回書かなくても読んでくれます。
# このプロジェクトのルール
- 入力欄などの部品は components/ui の社内部品を使う
- 既存の機能を変えるときは、先に方針を説明する
心得5か条 まとめ
以上が「AIに一発で動いてもらうための心得5か条」でした。
AIに頼む前に、チェックリストとして使ってみてください。
- その1 いきなり手順を書いていないか
- その2 「だれが・いつ・なぜ使うか」を伝えたか
- その3 完成のイメージを「例」で伝えたか
- その4 作る前に「質問」と「方針」を出してもらったか
- その5 「守ってほしいこと」を先に伝えたか
すぐに使えるように、Bさんの指示をひな形にしておきました。よかったらコピーして使ってみてください。
AIへの頼み方テンプレート
## やりたいこと
(何を作りたいか・直したいか)
## 使う人と場面
(だれが、いつ、どんな状況で使うか)
## 完成のイメージ
- (「こう入れたら、こうなる」という例)
- (例)
## 守ってほしいこと
- (使ってほしい部品やルール)
- (変えてほしくないところ)
## 進め方
いきなりコードを書かずに、まず「方針」と「変更するファイル」を教えてください。
わからないことがあれば、先に質問してください。
7.おわりに
ここまで読んでいただきありがとうございました。
「AIに頼んでも結局自分で直すことになる」「AIはまだまだ使えない」と感じている人向け に、どう説明するとわかりやすいかを考えてまとめたものになります。
AIへの頼み方は、実は 新しいメンバーにお仕事をお願いするときと同じ です。
手順だけを渡すより、「なぜやるのか」「どうなったら完成か」を伝えた方が、相手は自分で考えて動いてくれます。
少しでも、みなさんの開発が 「ちょっと楽」 になったらうれしいです。
この記事では「具体例を通して考え方のちがいを説明」しただけですので、必ずしもすべての場面でBさんの頼み方がよい、Bさんの頼み方が最適解と言っているものではありません。
小さな修正であれば、Aさんのように手順を一言で伝えた方が早いこともあります。(そのため、Bさんを新人にしています。)
登場人物の考え方、手順、やりとりの回数や時間など本記事に掲載している内容は、わかりやすくするために作られたフィクションです。AIの返答は、使うツールやバージョンによって異なります。ご了承ください。














