- 第1話: We will selective
- 第2話: We will specialize
- 第3話: No estimates
- 第4話: Pricing input/output
- 第5話: Value based pricing
「先輩さん」
『はい、後輩ちゃん』
「前回までのあらすじなんですが」
『うん』
「どのくらいかかるか分からんって言うなら、どうやって見積もればいーんですか? です」
『そうでした。これ、どうすればいいかっていう話の前に、どういう風に見積もりを出すパターンがあるかってのを始めに理解したが方がいいと思うんだよね』
「ほう」
『今回はその辺の話をするってことで』
「やった😁」
『見積もりっていうのはさ、たぶんみんながそれぞれ思うところがあって、でもどういう風にしたら一番いいのか、ハッキリとした答えを持たずにやってる人が多いと思うんだよね実際。自分もずっとなんとなく周りのやっているのを参考にしつつだったんだけど。』
「ふむふむ😗」
『見積もりを受け取る側も、なんとなく項目を見て納得したり納得しなかったりとかして、仕事になったりならなかったりする。』
「ほうほう😗」
『そんな中で、とりあえずこれはよろしくないぞというのをはじめに紹介します。』
「おお、それは一体……?🤔」
『それは……』
「🥁ドゥルルルルルルルルルル、ドン」
『ハイ。時給計算ね。これは基本的にダメ。』
「え、そうなんですか?😮」
『うん。まぁ自ら進んでこれを選ぶことはないかな。』
「でも時給いくらって、世の中でめちゃくちゃ使われてますよね?🤔」
『そうね、でもこの僕らがやってる開発だとかデザインっていう仕事に関しては、時給で計算すると色んな側面でイマイチなんですわ。』
「ふむ🤔」
『まずさ、時給計算で見積もりを出す場合はそうね……じゃ例えば月に100万ぐらい稼ぎたいみたいな想定だとしたら、営業日とか一日に働く時間なんかを計算して、時給6,000円かなとか計算したとする。』
「おお…… それだと1日8時間働けば48,000円……? なんか悪く無さそうに聞こえちゃうんですがダメなんですか?😗」
『この方法で問題なのはまず、優秀な人ほど稼ぎが減っていくという点ね。』
「ほう😗」
『開発なんて特に、その辺の人に任せたら2,3日かかるようなことを、優秀な人は30分とか1時間で終わらせちゃう事がよくあるよね。』
「あーありますねそういうのは……」
『例えばそうね、Webサイトの開発だったら、ブラウザのバグだとか、フレームワークのクセとか、使ってるWebサービスの特徴だとかそういうところでさ、メチャクチャ時間食われることあるよね。というか僕らが時間使ってるのって大体そういうヤツじゃない?』
「ありますね……。なんかもうそれはここでは説明不要な感じすらしますね……😩」
『でもそういうのって、一度経験すると次からはササッとかわしていけるというか、2度目以降は劇的に早くこなせるようになってるという側面が強いわけよね。』
「覚えたッ!⚔️ その技は二度とオレには通用しない…… 的なやつですね?」
『そうそう、漫画とかアニメとかであるじゃないそういうの。でもまぁ実際開発の仕事なんてまさにそういう感じだよね。そういうタイプの仕事だとさ、時給計算の見積もりだと、超速で仕事をこなせる優秀な人ほど、儲からない計算になっちゃうわけよね。これは僕らにとって全然嬉しくない。』
「なるほど……😗」
『もし時給計算で働くなら、会社としては、出来る限り新入社員に任せたり、アルバイトを雇ったりして仕事を任せたほうが儲かっちゃうよね。』
「まーそうすれば儲かるっちゃ儲かりますが……🙁」
『そうそう、それ、クライアント的にはめちゃくちゃ微妙でしょ?』
「そうですね〜。それはちょっと受け入れがたいというか……」
『まー単純作業があるならナシでは無いけどね。それに、システム開発みたいな場合だったら、不具合を作れば作るほどウチが儲かっちゃうよね。不具合を直すためにまた時間を使うわけだしさ。』
「それは儲かりそうです!😇」
『そうそう、だからやっぱりイマイチでしょ? フェアじゃないし、それをなんとかしようとしたら、優秀なメンバーも混ぜようかとかなってきて、そうなってくるとやっぱり単純な時給計算だと噛み合ってねーなってなってくる。』
「たしかに……🤔」
『まぁそんな感じで時給計算で見積もり〜請求までやっちゃうのは色々問題が多いかなと思うね。ウチはそういう形で仕事を引き受けたことはないよ。』
「ふーむなるほど😗」
『そもそもさ、僕らのやってる仕事っていうのは、時間に単純比例していいものが出来る感じじゃないんだよね。なんていうかな、蓄積してた知識を組みあせてモノを作るみたいな感じ?』
「知識か〜🧠」
『うんそう、だから時間換算すると色々うまくハマんないんだよね。よく言われるような話だけどさ、私が30分で作ったこのロゴは、30分で書いたこのプログラムは、20年の経験があってはじめてできたものなのですみたいな感じよ。』
「そっか〜😗」
『まーそんなわけで、時給計算だと僕らみたいな仕事は色々よろしくないね。ヘタに時給計算で引き受けると損しちゃう。』
「なるほど……」
『仮に時給計算みたいに時間に比例した見積もりにするなら、もうコロコロ要件が変わりまくって、それに付き合うようなプロジェクトとかなら無しじゃないかな。』
「ほうほう🤔」
『単価をかなり高くして引き受ければ、依頼する側もなるべく効率的に無駄なく進めると意識してもらえるかもしれない。』
「ふーむなるほど😕」
『まーでも、仮にそういう風に仕事を請けたとしても、ウチがリードを取る場合、うまく進めることが出来たぶん、利益が薄くなっていくので結局微妙かもね〜』
「んーなるほど、時給だと色々問題がありそうですね……🙁」
『まーそんなのが時給計算なわけですが、これは言ってみればインプットで見積もるって感じかな。別の方法として、アウトプットで見積もるってのもある。』
「アウトプットですか?🤔」
『うんそう、あれだよ、後輩ちゃんがずっと話してる、ページ単価いくらってやつ。』
「あーはいページ単価。まぁ私はそれで結構考えてたんですが……😗」
『ページ単価いくらとか、WordPress組み込みいくらとか、お問合せフォームいくらとかそういうやつね。』
「はいはい」
『これは時給計算で問題だって言ってた、優秀な人ほど儲からなくなるって問題をクリアできるよね。作ったものをベースにして請求を立てるので、さっさとこなせれば短時間で稼げるということになる。』
「はいはい、そうですよね😗」
『その辺のお店で売られているモノも、ほとんどの物には値段がつけられて売られているので、受け取る側も理解しやすいという側面もある。ページ単価3万って言われるのは、コーヒー1杯500円と言われるぐらいに分かりやすい。』
「ふむふむ😗」
『ただこれにも問題があるというか、気をつけないといけないところがあって、ほら、前回話したやつよ。僕がディレクションって言ってたやつ。実際に実装する以外に、要件を整理したりスケジュールを管理したりだとかする必要があるってことね。』
「はいはい、そういうことでした😗」
『アウトプットで見積もる場合、このディレクション分をどうにかして見積もりに混ぜないと、ウチとしては損するね。だってややこしいプロジェクトであればあるほどウチが損することになるから。』
「ふーむなるほど……😗」
『かといって、ディレクション分は可変性が高いものであって、このアウトプットベースの見積もりとは相性が悪いわけよ。ディレクションした結果何かページが出来上がったりするわけじゃないからね。』
「んーそっか〜〜😗」
『お前の次のセリフは “じゃあどうすれば……?” という!』
「じゃあどうすれば……? ハッ……!🤭」
『これは色々考え方があるけどそうねー、例えばディレクション分は人月計算にするってのはよく採用されてそうかな。実装部分はアウトプットで見積もっておいて、ディレクション1人月とか2人月とかそういう感じ。』
「おー。あれ? でもそれってさっき言ってた時給計算と同じなんじゃないです……?🤔」
『うんそうね。だからベストじゃ無いんだけど、まぁ無難なところって感じかな。』
「無難ですか😗」
『ページ単価みたいな分かりやすい指標がないし、かと言って時給ほどシビアには勘定したくない。人月というざっくりした単位で出しておけば、休日が多めな月だったとしても、まぁプロジェクトをうまく回せてくれてるなら気にならん感じになったりもする。まぁざっくり言うとどんぶり勘定の単位ですよ。』
「ほうほう😗」
『あとはなにより、人月っていう出し方は、受け取る側はすごい理解しやすいんだよね。見積もりを出すこちらとしても別に嘘をついて多く出しているわけではないし。』
「なるほど、まぁ人月と言われれば確かに誰でも分かる感じはしますね🤔」
『そーでしょ? まーこの、ディレクションってここでまとめて呼んでいるような部分はさ、あらかじめ項目立てて明細を出すのが難しい仕事なのよね。そして、大体このディレクションをする人は実装する人とは別に用意されていたりする。だからこの領域については、人月っていう分かりやすい形でお互い納得できるなら、それでもいいかなって僕は思うよ。フタを開けてみたら要件全然詰まって無くて、人が足りなそうなんで1人月から2人月にするとかも理解されやすいしさ。』
「ふむふむ🤔」
『もしこの見積もり項目はどういうことかと質問されたら、前回話したようなことを説明すればいいよ。ほら、実装以外も色々やらんことあるでしょっていう。』
「そっかー。そんなの私に出来るのかしら……😥」
『僕らとしては、それを理解してもらうように伝えるというのは大事だろうね。まぁ、伝わらなかったらいいんじゃない? 断っても。』
「え、あはい😅」
『あとは、実装部分に対する割合でディレクション費をのせるとかもあるかな。』
「割合でディレクション費ですか?🤔」
『例えばそうね、実装部分が総計600万だったら、その50%で300万をディレクション費にするとか。』
「はいはい😗」
『ほか、ディレクション1人月をアウトプットの単価に含めちゃうとかもあるね、実装部分総計600万だったら、その単価を1.5倍にするとかね、例えば。』
「なるほど😗」
『お店で売られてる商品もさ、コーヒー500円のうちドリップ料金200円ですとかわざわざ書いてないでしょ? 同じように、色々ディレクション分はあるけど、ページ単価5万とか言う感じで、その中に収めちゃう。そんな風にひとまとめにされてると分かりやすいっていうのはあるよね。』
「たしかーに😗」
『項目が結構ハッキリ出せる場合にはこれはアリかな。ただ、そのディレクション部分が思っていたより大変とかだった場合、単価を上げるという形になり、そういうふうにすると、見積もりを受け取る側としては単純に値上げされたように見えるので、そこはイマイチかもしれない。』
「なるほど😗」
『あとはそのディレクション費を細かく項目立てて出すところもあるんじゃないかな。要件定義、進行管理、品質管理、企画とかなんかそういう風にさ。そして、それぞれについてちゃんとドキュメントを納品したりなんかもする。』
「はーなんか色々あるんですね〜😦」
『まーなんかそういう風に色々インプットとアウトプットのハイブリッドみたいな感じで出すっていうのが、世の中的によく採用されてる方法かもしんない。』
「ふーむなるほど🤔」
『ちなみにウチの会社だと、ほとんど全ての内容を点数で表現して、その点数を見積もりや請求に使ったりする方法をよく採用してるかな。実装だけなくて、ディレクションした分も全て点数に換算して話すの。』
「点数?🤔」
『そう、ほら、病院でさ、明細もらうと、何が何点とか書いてあるじゃない。レントゲン300点とか、注射30点とかそういうやつ。』
「あーありますね😮」
『あれは項目ごとに点数が決まってるわけよね。まぁウチの場合にはそういう風に予めこれは何点とか点数を決めてるわけじゃないんだけど、実装の難易度だったり作業ボリュームによって、項目ごとに点数で表してやりとりしてるわけ。』
「ほうほう🤔」
『例えば昨日後輩ちゃんに実装してもらったあのお問合せフォーム実装は3点、このモーダルダイアログのJavaScriptライブラリ組み込みは4点とかそういう感じね。』
「あーなんかやってますね。私よく分かってなかったけど……」
『それで請求としては1点を2万円として計算しますとかそういう感じね。プロジェクトの初期段階で100点とか概算見積もりして、その点数を予算として考えてもらい、それを消費しながらプロジェクトを進めていく感じ。ディレクション分もこういう作業をしたので3点とかね。』
「ほうほう😗」
『新しくこういうことをしたいって言われたら、なるほどそれだと5点ぐらいかかりますねとか、やってみないと分からないのでまずは2点程で検証してみてから次のステップを考えましょうとかそういう風に進める。』
「ふむふむ😗」
『そういう風になんでも点数にしてたら、あーこの実装はこんなに大変そうなんだとか、このくらいなら1点でできそうだなとか分かってくるわけよね、お互いに。』
「なるほどなるほど😗」
『まーそんな感じで、プロジェクト内通貨みたいな? 相対的な指標としてこの点数を使う感じね。』
「へ〜〜😮」
『この方法は色々便利なのでオススメではあるんだけど、概念がややこしいんだよね。点数?ナニソレ?ってなるし、具体的にどういう風にプロジェクトを進めて行く感じになるのかは、実際に一緒に仕事を進めてみてもらって、初めて理解してもらえる感じがしてる。そういう風に仕事してて。』
「ふむ😗」
『まぁ、あとはこれを成り立たせるには、僕らがこの点数を価値基準として流通させるために意識して会話しないと成り立たないっていう難しさはあるね。完全にプロジェクト内固有の概念になるので。』
「ふむー😗」
『そんなこんなで色々と便利ではあるんだけど、見積もりという点でいうと、人月とかページ単価って言われる方が、受け取る側は分かりやすいっていう側面はまぁあるよねー。』
「そっかー😗」
「なんか今回、色々と先輩さんに教えてもらったわけなんですけど」
『はい』
「うーん結局どうすればいいんですかね? 色々見積もりの方法があるのは分かったけど、だったらどうしたらいいんだろう……。前回の話だと、プロジェクトを始める前はやっぱよく分からんので、どのくらい予算がかかるかも結局よく分からんってことでしたよね……?🤔」
『そうね』
「今回色々聞きましたけど、それでもやっぱりよく分からんのハテナは消える感じがしないんですが……😭」
『まーそうだろうね〜。ここまでで1つ言えるのはさ、こうやって色々話してきて、後輩ちゃんは最初ページ単価で考えてたわけじゃない?』
「そうですね、そういう頭しかなかったですね😇」
『それは色んな見積もり方のうちの1つの方法にしか過ぎないし、実装以外の部分もどうにか見積もりに含めないといかんなーってことが、ちょっと分かってきたんじゃない?』
「そうですね、そこはだいぶ分かってきた気になってます……!😙」
『それは後輩ちゃんにとって、一つレベルアップっぽい感じはするよ』
「えへへ😊」
『それで、今回はこういう方法があるよーっていうのを色々と話してきたわけなんだけどさ。』
「はい」
『これらって結局さ、僕らはこの金額で引き受けますっていうのを、ただ色んな言い方してるだけなんだよね。』
「えっ?🤔」
『ここまで話してきたやつ全部、客観的な指標にはなりえないわけ。』
「ほう?🤔🤔」
『ただ僕らが、理にかなっているかのように見積もりの金額と項目を調整して、クライアントと会話しているに過ぎない。』
「ほう?🤔🤔🤔」
『例えばさ、ページ単価1万とか3万とか見積もりだしてだよ? その根拠ってなんですか?って言われてもさ、僕らがその値段なら引き受けますっていうだけじゃない? こういう仕事はレストランみたいに食材が必要なわけでもないし、原価はほとんど人件費なんだしさ。』
「まぁそう言われれば……🙁」
『時給いくらってやつも、まぁイマイチだと色々言ってきたわけだけど、その単価を決めるのは見積もりを作る僕らの方だよね?基本的に。時給1,000円と書こうが、時給10万円と書こうが、それは見積書を書く僕らで決めることなわけよね。』
「ふむ🤔」
『ディナーコース8,000円のレストランでさ』
「お、出たレストラン」
『その8,000円って決めてんのはレストランよね。お客じゃない。』
「はい😗」
『このスープはいくらです、このサラダはいくらですと細かく言われても、やはりそれもレストランが決めているにすぎないじゃない。』
「ふむふむ😗」
『だから大体何人月ぐらいかかるんで1,000万でーすっていう見積もりじゃなくてさ、なにか細かく見積もり項目を立てたところで、どこまでいっても客観的な評価ができるものじゃないんだよね。見積もりを受け取る側も、はぁそうですかとしか言いようがない。』
「うーんなるほど😗」
『中には金額が固定される項目もあるよ。例えばそうね、ホゲCMSを導入するんですが、そのライセンス料が200万ですとか、サーバーの費用が月額固定で5万ですとか。』
「はいはい」
『そういうのはそのまま見積もりに入れればいいけど、そうじゃないやつは基本的に僕らの言い値っていう側面があるよね。』
「ふーむ😗」
『どういう内容の分配なのかは分かる。開発4割デザイン6割とかそういうね。でもただそれだけじゃない?それって。』
「そうかー🤔」
『いくら細かく項目を立ててもだよ?要件定義がいくらで……ページ単価がいくらでとか……。その単価を決めてんのは自分らなんだから、結局それって大体6人月ぐらいだから1,000万ですねーって言ってんのと、本質的になんも変わんないんだよね。』
「えーー今回色々と話してきたたことは何だったの?😇」
『そこでどう考えるか……ですが。』
「はい」
『続く!』
「えーー😇」
続く
- 第1話: We will selective
- 第2話: We will specialize
- 第3話: No estimates
- 第4話: Pricing input/output
- 第5話: Value based pricing
参考