- 第1話: We will selective
- 第2話: We will specialize
- 第3話: No estimates
- 第4話: Pricing input/output
- 第5話: Value based pricing
「先輩さん」
『はい後輩ちゃん』
「この会社は1ページ1万円でHTML書くらしいですよ」
『ほう』
「今来てる見積もり依頼は100ページぐらいなんですが」
『うん』
「これは対抗して100万ぐらいで見積もりを出したほうがいいんですかね〜?」
『なるほど』
『まーうちだと100万で100ページはできないかな』
「えっ、そうなんですか。それだと負けちゃうじゃないですか!」
『まぁ値段で言えばそうなるね』
「えー👊」
『そうね〜。後輩ちゃんはまだ20代だし、一人暮らし。だからそんなに出費も多くないと思うんだよね』
「失礼ですね!私だってNetflixで海外ドラマみたりSteamでゲーム買ったりしてるんですよ💢」
『例えば月に30万で足りるなって感じだったとするでしょ? そしたら1ページ1万だとしたら、月30ページ分HTML書いたら暮らしていけるよなって思うよね』
「実際そう思ってますね😇」
『それだけだったらやっていけるんだけど、会社としては他にも色々お金を使うわけよね』
「ほう🤔」
『まぁ挙げればきりがないけどさ、オフィスの賃料払ったり、GitHubとかTrelloとかslackとかのWebサービスの料金払ったりとか、PC買ったりとか、実際に手を動かしてコードを書く後輩ちゃんらの給料以外にも色々とお金払うことはあるよね』
「そうですね……PC自腹はキツイです……🥶」
『あとは君は今は一人暮らしだけど、いずれ結婚したり子供ができたりしたら家や車を買ったりだとか、色々出費は増えるでしょう?』
「え?私結婚するんですか?😊」
『端的に言うと給与を上げたいってなるわけよね。そうなった時、1ページ1万円で続けていったらどう?それって可能?60万稼ぎたいって思ったら単純に2倍の仕事しないといけなくなるじゃない?』
「まぁたしかに😕」
『そうなった時、1ページ1万円でHTML書きますだと、足りないなーって僕なら思うわけよね』
「なるほど😕」
『ほかそうね、ただ依頼されるままにHTMLを書き続けるだけだと、技術的な進歩はあんまり無いかなーと僕は思う。だから、それ以外にも興味のある技術を試したり、便利そうなWebサービスを使ってみたりとかさ、そういうのをやる時間を弊社メンバーには作って欲しいんだよね』
「海外ドラマを一気見する時間も私は欲しいです😇」
『そうすると、例えば週1日分はそういう時間に当てて、週4日分で仕事を片付けるみたいなバランスで働きたいとする。そうしたら、その1日分、追加の稼ぎが必要じゃない。そうしたら全然足りなくない?1ページ1万だなんて。よほどの量をこなさない限り。』
「週に追加で1日働かないなら、それは余計に稼がないといけないのは当然ですよ👺」
『あとは税金とかもさ、法人だと結構払ったりしないといけないのですよ。まぁ、そんなこんなでうちだと1ページ1万円では請けられないかなー』
「んーそうですね、たしかに私に給料払うだけじゃないですしね……。でも先輩さんが言ってるのはあくまでウチの会社の都合ですよね? ウチの会社がもっと稼がないとやっていけないってのは分かりますよ。でも実際に1ページ1万円でやってる会社が他にあるわけですよ? ほら!こっちの会社なんて1ページ8,000円とか言ってますよ!やっぱりこれじゃ負けちゃうんじゃないですか? 私やっとの思いでこの会社に就職できたのに……🥶」
『まーそうだね、ページ単価ということでいうと、うちは1ページ1万ではまずやらないから、そこで比べられたらうちにはまず頼まないだろうね』
「えーそうなんですか、弊社、つぶれる……😇」
『例えば外食する時を考えてみるとだね、あーお腹へったってとき、1食500円で済ませられるうどん屋と、ディナーコース8,000円のレストランが並んでたとする』
「たかっ💰」
『後輩ちゃんならどっちに入る?』
「うどん屋ですよ!8,000円なんて払えないですし、私うどん好きなんで🍜」
『そうね……まぁ僕も大抵の場合はうどん屋を選ぶだろうけど、それでも8,000円のレストランは潰れないでそこにあるわけだよね?』
「まぁそうですね……世の中にはお金持ちがたくさんいるんですね……。ガリガリ君じゃなくてハーゲンダッツを食べてるような人たちですよね……🍦」
『要するに500円のうどん屋があっても、8,000円のレストランも成り立ってるってわけだよ。うちはこの2者で言うと、8,000円のレストランとして仕事をするスタンスだね』
「そろそろお腹が空いてきました」
『そのレストランとうどん屋、何が違うと思う?』
「うーん高級な食材を使ってるとか、高いお酒を置いてるとかですか? やっぱり私はうどん屋だな〜。うどん好きだし。先輩そういえば私香川にうどんを食べに行ったことが」
『まーそういう原価の違いってのは一つあるよね。他はそうだね、うどん屋はたぶんアルバイトの人が、うどんを軽く茹でて出汁をよそって出していたりするよね。でも、レストランは経験のあるシェフじゃないと作れないような料理が出てくるでしょう?当然』
「まぁレストランでかけうどんは出てこないでしょうね。高級レストランのかけうどんも食べてみたいですが……🤨」
『そういうシェフはうどん屋のアルバイトよりかは給与高い。それもコストの一つではあるよね。』
「まぁフランスで何年修行を積んだ……みたいな人が1杯500円のうどん屋でアルバイトをしてはいないでしょうね……🤔」
『そうそう、だからまぁ後輩ちゃん含めうちのメンバーには、この2者で言うとレストランのシェフの方になって欲しいって思ってるんだよね』
「なるほど分かりましたよ。シェフの方になれですよね。でもですよ? 例えシェフだとしてもですよ? 出来上がるのは1枚のHTMLとCSSですよ。ブラウザに表示されたら同じ。うどん屋でもレストランでも、かけうどんを頼んだら出てくるのはかけうどんじゃないですか。そしたらやっぱり私はうどん屋を選んじゃいますよ。まぁ、そのレストランにはかけうどんっていうメニューは無いと思いますが……😕」
『そうそう、レストランでもうどん屋でも、かけうどんを出してもらったなら、出てくるのは1杯のかけうどんであることに変わりはないよね。じゃあさ、レストランはうどん屋に負けじと値段を下げてくると思う?』
「いや、8,000円のレストランが500円のうどん屋に対抗するとはとても……」
『そうだよね、レストランでは500円のかけうどんに対抗して値下げをしない。なんでだろう?』
「うーん、うどんには興味がないから? あ、8,000円でもお客さんが入ってるからですかね?🤔」
『そうそう、レストランの方は8,000円でも成り立ってるってことだよね。』
「そうかー8,000円……でも8,000円は高いですよね。あ、そういえば私あのレストランで食事したことありましたよ🤭」
『あーそうなんだ? うどん屋がいいって言ってたのに?』
「なんか誕生日にメンターの田中さんが奢ってくれたんですよ🥳」
『なるほど……色々理解しました。それはさ、お腹を満たすだけだと500円のうどん屋でもよかったんだけど、8,000円分の価値があると判断してそっちが選ばれたということだよね?』
「そうなんじゃないですかね。まぁあのレストランは何かこう、特別な時に入りたくなる感じじゃないですかね!うどん屋ではバースデーケーキはきっと出してくれないですしね…… いや、バースデーうどんとかあるのかな?😇」
『そのレストランはさ、ただお腹を満たす以上の何かを提供してくれたと言えるんじゃないかな。そしてお客としては、それを得るために8,000円を払ったということだよね』
「そう言われるとそうなのかもしれないですね。ゆったりしたスペースだし、店内の雰囲気もいいし、うどん屋は大体混んでますし、ああいう雰囲気にはならないですね……🍷」
『それはそうでしょう。そういう色々な要素を踏まえて、人は8,000円払うわけだよね。あのレストランに』
「なるほどそうかもしれませんね。でも田中さんって気前良いですよね😇」
『お金の話に戻ると、8,000円っていう価格は原価にプラスしてたくさん利益がのっかってるように見えるわけだけどさ、価値という基準で考えると、うどん屋とレストランがお客さんに与えている価値っていうのは、全然別物なんだよね』
「価値ですか?💰」
『そう価値。あ、一応言っておくけど、うどん屋には価値が無いと言ってるわけじゃないよ。うどん屋とは別の価値があるということね。だって後輩ちゃんはうどん屋にも行くわけでしょう』
「行ってますね年中🍜」
『そのレストランにはうどん屋とは別の価値があるから、人はレストランにも行くということね』
「うーん、先輩さんの言ってることは分かりますけど、それでもやっぱり出来上がるのはHTMLとCSSじゃないですか?」
『そうだね』
「1枚のHTMLとCSSにそんな価値があるとはとても思えないんですが、これはどう考えたら良いんですかね? やっぱり同じページじゃん?って思っちゃいます。なんということでしょう、匠の粋な計らいでこんなHTMLが!ってならないですよ?🙁」
『ま〜1枚HTMLを書くという点で考えるとそうだろうね〜』
「1ページの単価10万ぐらいで見積もりだしてですよ? 御社高いですね!こっちはページ単価1万でやってますよ? って言われたらどうしたらいいです? うちはレストランなんですなんて私言えないですよ〜。っていうか、レストランだからどうなんだ?って話じゃないですか?」
『そうそう、だからね、1ページ1万円でお願いしますって言われたらさ、うちは引き受けないの』
「え、そうなんですか? それでいいんですかね……」
『そうそう、だってうち500円のうどん屋じゃないし。』
「うーんそうなんですね…… でもそれで仕事無くなっちゃいますよね……」
『うん、そういう仕事は来なくなると思う』
「やはり潰れる……転職か……😫」
『まぁ潰れるかどうかは残念ながら保証してあげられないけど、うちはその500円うどん屋みたいなやり方で仕事をしていこうとは思ってないんだよね』
「その、さっきから言ってるレストランとしてやっていくってことですよね」
『そう、8,000円のやつ。それでさ、8,000円出させるならそれなりの価値を出せまっせっていうのを訴求していく必要があるわけだよね』
「そうそう、そんなのあるんですか? 匠の技なんですか?🤔」
『そうね、例えば前終わったあのプロジェクト、あれは最終的に1,000万の請求を立てられたんだよね』
「おおそうなんですね。すごい。うまい棒でいうと100万本ですね😙」
『うん、それで最終的に作ったのは100ページぐらいだった』
「なるほど…… え、それってページ単価で言うと10万ってことになります? すごいじゃないですか! ハーゲンダッツどころではないですよ……!🥳」
『まぁページ単価1万円ということで考えたら10倍だからそれはそうだね。そのプロジェクトでは、CMS入れたり色々凝ったデザインの画面もあったりしてそれだったんだけども。』
『ここで後輩ちゃんにクイズ、この仕事は1,000万の価値を提供できたと思いますか?』
「え、分からない…… 私にはページ単価10万なら割の良い仕事だなとしか……🤔」
『そうね、結果で見ればそうだけど、この仕事は依頼されてやっているわけでさ、初めに1,000万の見積もりを通すための説明をしないといけないよね。ウチとしては。』
「はーまぁそうでしょうね。どうすればいいんですか?そういうの🙃」
『そうだねー。まぁ色々パターンはあるけど、基本的にはうちに依頼してくる時点で何かに困っているので、何が困っているのかを聞いて、それで話を進める感じかな。』
「ふむふむ🤔」
『それでよくあるのが例えばそうねー。ページが多すぎて、更新にも時間がかかる、デザインもバラバラでお手上げ、もっと楽に運用できるようにしたいとかはよくあるパターンだね』
「ほうほう🤔」
『大きめな企業でWebサイトをリニューアルしたいなんていう時、その理由としてこういうのは多いよ。そしたらまぁありきたりだけど、CMS入れましょうみたいなことが提案できるよね。CMSを入れれば運用効率上がりますよって。』
「まぁありそうな話ですね。私でもそれは思いつくかも……😕」
『そうだね。で、なるべくこっちは価値ベースで話すんだよ』
「価値ベース?レストランの話ですか?🤔」
『そうそう、これがさ、原価的な視点からするとだよ? ページ単価1万で100ページなら100万の、CMS導入が200万で合計300万の見積もりになります〜みたいになるかもしれないよね』
「そうですね、私ならそう考えると思います😕」
『そうじゃなくてさ、今Webサイトを運用するためのチームは何人いますか?とか聞くわけ』
「チーム?🤔」
『それが仮に5人だとしたらさ、CMSを入れて効率化できたら、3人で運用できるかもしれませんよ。そして、今はデザインがバラバラになってしまうわけなんですよね? そういうのも起こりづらくなります。そういう設計と実装を我々はもうずっとやってきているのでお任せ下さい。そして2人減ったらどうでしょう。仮に1人60万のコストと考えれば、1年間で60万×2人×12ヶ月の1,440万のコスト減ですよ……みたいな話ができるわけよね』
「な、なるほど…… 人=コストなんですね……😐」
『そうそう、困ってることがそういうやつだった場合はさ、ページ単価安くできるところはどこかな〜〜って探してないよね。そもそも』
「そう言われるとそんな気もしてきました🤔」
『1,440万コスト減が本当にそうなるかは全くもって約束できるところではないんだけどさ、そう考えれば、そのための投資が1,000万であれば、妥当な支払いと考えられるんじゃないかな』
「なるほどー。でもですよ先輩さん🤔」
『はい』
「言ってることは分かるけど、1,000万もかけられないので他の所を探しますってならないんですか? CMS入れますよなんてどこの会社も言ってそうじゃないですか?」
『まぁそうだろうね。その上でなぜウチを選ぶかってところだよね』
「そうそう、1,000万円は高いですよ!うまい棒だったらひゃくま」
『それについては失敗のリスクについて考えてもらうよう、僕だったら話すかな』
「失敗?」
『そうそう、CMS入れてもさ、それはもう出来上がりはピンキリですよ。何をどこまで編集できるようにするとか、使いやすくするにはどう設計するとかさ。ただブログ一つ作るだけなら大したことはないけど、規模が大きくなると、そう簡単にはいかなくなるんだよね』
「なるほど、そういうものなんですかね……🤔」
『そういうのに失敗したらさ、ものすごい時間とコストの損失なんだよね。頼む側からすると。1つのプロジェクトに何百万とか何千万とかかけて、時間も半年とか1年とかかけて、その結果全然使いやすくもなく、バグだらけで使い物にならないシステムなりWebサイトができたら悲惨でしょう?』
「それはつらいですね……😥」
『一回作ったんですけど、全然ダメだったんでもっとうまく作れるところを探しているとかさ、あるんだよ実際…… 辛い話だよね。』
「ひえー😨」
『それでうどん屋とレストランの話に戻るけどさ、うちはそういうのをうまくできますというのが、弊社が提供する価値です。これは後輩ちゃんも肝に命じて下さい。破綻しない設計にできる/運用コストを減らせるーーそのへんがレストランとしてやってるうちが提供している価値だね』
「なるほどー。でも先輩さん、そんなのできるんですか?うちは破綻しないようにできるだなんて約束して……🤔」
『絶対にできますとは約束できないけど、そういうのをやってきた経験とか実績とか、いろんな要素でうちに頼むかを検討してもらう感じだね。本を書いてるとかセミナーで話してるとか、まぁそういうのもきっかけになったりするかな。あ、あと、僕ができるんじゃなくて、僕らね。それには後輩ちゃんも含まれます』
「ぐぬぬ…… プレッシャー😨」
『まぁ弊社は、そういう新しい技術とかさ、大きい設計とか、フロントエンドのアレコレが好きで、趣味でもやっているような人が集まっているじゃない。後輩ちゃんは書いていたブログの内容が素質あると見込んで採用されたわけなのだよ。』
「おお、そうだったんですね。やっててよかった👍」
『そういう会社で色々話したりして選んだり検討している技術やら実装はさ、それなりの信頼性があるとまぁ僕は思ってるよ』
「なるほどー。頑張ろう(ボソッ)😶」
『それで初めの話に戻るけどさ、ウチはそういう体制を維持していきたい。そのためにウチが稼ぎたい額というのがあるわけでさ、なので弊社から出す見積もりは最低限その額になってます』
「ほほうなるほど😗」
『それで、向こうがOKと考え、ウチもOK、shake handsならそれで仕事が成立ってなるわけよ』
「シャケ?🐟」
『だからそこにページ単価1万円の会社があろうが無かろうがが全く関係無い話なのよね』
「ふーむなるほど、なんとなく分かったような分からないような……」
続く
- 第1話: We will selective
- 第2話: We will specialize
- 第3話: No estimates
- 第4話: Pricing input/output
- 第5話: Value based pricing
参考