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【Copilot Studio】AI エージェントの価値、使い分けを整理してみた

Last updated at Posted at 2025-11-25

はじめに

私は、Microsoft 製品、特に、ローコード、ノーコードプラットフォームの Power Platform、そして、AI エージェント (以降エージェント)という観点では、Copilot Studio に関してお客様の支援をしています。

※まだ、Copilot Studio がエージェント構築のプラットフォームとなる前に書籍も出しています

そして、先日の MS Ignite 2025 においても「エージェント」という単語が数えきれないくらい登場しており、当然、ここ半年は、お客様からも Copilot Studio を利用したエージェント作成に関するご相談を多数いただいています。

そのような中で、お客様からさまざまなフィードバックをいただいています。そのため、自分の考えを整理しておきたいと思います。以下のようなことを感じている IT 担当者の方や市民開発者の方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

  • Copilot Studio のユースケースがなかなか思いつかない
  • Copilot Studio と Power Apps/Power Automate/AI Builder/Copilot/ChatGPT 等との使い分けが分からない、悩んでいる

言うまでもなく、完全に私の主観です。

よく相談いただくこと

個人的に、お客様からいただくフィードバックで多いのは、以下のような内容です。

  • 試してみているけど期待したように動いてくれない

  • Copilot Studio は何かすごそうだけれど、正直ユースケースがあまり思いつかない

  • このユースケースって、Copilot Studio でエージェントを作成する必要があるのか?他のサービスでもいいのでは?

一つ目は様々な理由がありますし、技術、サービスの進化により改善するところもあるため割愛します。

二つ目、三つ目のフィードバックを踏まえ、個人的に以下のような疑問が生まれています。

「市民開発者の手によって、Power Apps のアプリや Power Automate のフローのように、Copilot Studio でエージェントが数多く誕生するようになるのだろうか。」

市民開発が進んでいるお客様の中には、もともと IT の経験がなかった市民開発者が、一人で複数の Power Apps アプリを開発し、さらに数十個もの Power Automate フローを作成しているケースも多く見られます。

そちらと比較すると、一人で何個も、何十個も Copilot Studio でエージェントが作成されるのか疑問を感じることがあります。

もちろん、作成難易度も理由の一つではありますが、フィードバックにある通り、「正直ユースケースがあまり思いつかない」、「このユースケースって、Copilot Studio でエージェントを作成する必要があるのか?他のサービスでもいいのでは?」が大きな理由です。これらの理由について、もう少し深堀してみます。

フィードバックの理由

「正直ユースケースがあまり思いつかない」、「このユースケースって、Copilot Studio でエージェントを作成する必要があるのか?他のサービスでもいいのでは?」といったフィードバックが生まれる背景には、類似・関連する業務効率化の手段が数多く存在していることがあると思います。
その結果、それぞれの違いや使い分けのポイントを整理することが難しい状況になりがちです。

さらに、これらの手段は進化のスピードも非常に速いため、技術動向の変化が整理の難しさに拍車をかけていると感じています。

そのため、類似・関連する業務効率化手段、それらの手段との違い、使い分けのポイントを整理したいと思います。

ChatGPT、Copilot、Gemini 等の生成 AI アプリ

もちろん、私が支援している組織は全て社内 ChatGPT や Copilot など、何かしら生成 AI アプリを業務で使え、全ての従業員が使いこなす、毎日使い倒すよう日々推進しております。

そして、これらの生成 AI アプリの進化はすさまじく、これらの生成 AI アプリを使い倒すことで多くの業務を効率化できます。例えば、Copilot では、最近エージェントモードという機能で、PowerPoint スライドの作成、Word ドキュメントの作成、Excel によるデータ分析の能力・精度が更に向上しています。

また、以前から、会議議事録の自動作成、メールスレッドの要約、社内ドキュメントの検索、質問から回答を得ることなど、沢山の業務効率化が可能でした。

最近の生成 AI アプリは、状況に応じてナレッジやツールを柔軟に使い分けながらタスクを進められるようになっています。そうした特徴を踏まえると、これらも広い意味では「エージェント」と捉えることができると思います。

ファーストパーティ、サードパーティーエージェント

Copilot 上では、ファーストパーティー、サードパーティーのエージェントを利用できます。ファーストパーティーで有名なのはリサーチツールでしょうか。Web だけでなく、社内リソース含め Deep Research してくれます。

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これらのエージェントを活用することで業務を大幅に効率化できます。

プロ開発者が開発したエージェント

もちろん、組織内外のプロの開発者が有益なエージェントを生み出しており、今後その速度は更に加速すると思います。Copilot の内外関わらず、これらのエージェントを利用することで業務を更に効率化できると思います。

エージェントビルダー

Copilot では、簡易的なエージェント作成機能として、エージェントビルダーがあります。

※エージェントビルダー、Copilot Studio Lite との間で名称が二転三転しております

こちらを利用して、チャット型のエージェントを作成できます。また、カスタムのプロンプトだけでエージェントを作成することもできます。例えば、すごくシンプルなケースですと、よく使うプロンプト、同僚の秀逸なプロンプトをエージェント化したり、簡易的な FAQ 対応エージェント(以前の用語だとチャットボット)を作成したりすることができます。

個人的には、GPTs と近い印象で、こちらの機能では、市民開発者はもちろん、エンドユーザーの手によっても、多くのエージェントが生まれると思います。

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Power Apps/Power Automate/AI Builder

Power Apps、Power Automate 等を利用して多くの業務を効率化することができます。

例えば、各種の依頼申請業務や報告業務、予約業務など、さまざまな業務を Power Apps のアプリによって効率化できます。また、通知や連絡、リマインド、承認ワークフロー、システム間の転記業務などは、Power Automate のクラウドフローにより自動化が可能です。

さらに、Power Apps や Power Automate と AI Builder を連携させることで、業務の効率化を一層推進できます。AI Builder では、プロンプトを部品化し、Power Apps や Power Automate から簡単に呼び出すことができます。

例えば、現場向けのモバイルアプリで写真を撮ったら情報を自動で抽出して別システムに転記する、メールで請求書が届いたら自動で情報を抽出して別システムに転記するようなことが可能になります。

※生成 AI のプロンプトを利用して業務を効率化していますが、現状の定義上、こちらは AI エージェントとは呼んでいません

AI Builder は実際にお客様からの引き合いも多く、トレーニング講師やハッカソン講師、開発支援に関するご相談を多数いただいています。そのため、これまでにも多くの記事を書いてきました。

使い分けのポイント

あえて Copilot Studio でエージェントを作るのであれば、これらの既存の手段との使い分けを意識していた方がいいと思います。

個人的に思う使い分けポイントです。

プログラム化できるかどうか

Power Apps でのアプリ作成、Power Automate でのクラウドフロー作成は、ローコード、ノーコードですが、プログラム化できる業務の効率化に向いています。

例えば、以下は Power Automate で比較的よくある承認ワークフローを自動化しているフローです。ノーコードですが、上から下にやることをコネクタ、つまり API 連携ベースで実行しており、プログラム化して自動化していると言えます。

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また、複雑な申請業務で既定値入れたり、入力項目により動的に入力必須、選択肢を切り替えるような場合、入り口はチャットよりアプリの方が良いと思います。

そして、これらのアプローチで効率化できることを無理に Copilot Studio でエージェント化する必要はないと思っています。例えば、プログラム的に安定して動いているものを無理に置き換えようとすると逆に安定しなくなる可能性があります。

一部プログラム化が難しいシンプルな業務は AI Builder

上述の例のように、メール本文からの情報抽出、請求書からの情報抽出して別のシステムに自動で転記するような業務の場合、AI Builder が部分的にカバーするアプローチがいいと思います。

膨大なナレッジから検索する場合は Copilot Studio

プログラム化難しい領域が多い、つまり、膨大なナレッジから検索して、その結果を基に高度な推論を行い、別システムと連携するような業務であれば、Copilot Studio でエージェントを作成する価値があると思います。

例えば、以下のような顧客様からの問い合わせ業務を既存のナレッジを基に生成 AI で効率化したい場合、かつ、問い合わせ頻度が非常に高い場合、Copilot Studio で自律型エージェントを作成する効果が高いでしょう。

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※AI Builder のプロンプトでも Microsoft Dataverse を検索することはできますが、ナレッジの種類の豊富さを考えると Copilot Studio でエージェントを作成する方がいいと思います

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なお、この観点については以前も記事を書いているため参考になれば幸いです。

頻度高くないなら生成 AI アプリ、エージェントビルダーでもよい

そもそも頻度が高くない業務であれば、Copilot Studio で自律型エージェントとして開発する必要性はそれほど高くなく、効率化の効果も限定的かもしれません。

このような業務であれば、既存の生成 AI アプリや、エージェントビルダーで構築したエージェントに対してチャットするだけでも、十分に効率化できるケースが多いと考えられます。もちろん、ナレッジが他システム上にある場合など、他システムとの連携が求められる場合には、Copilot Studio でエージェントを構築することが有効な選択肢となります。

ファーストパーティ、サードパーティーエージェントで効率化できないか

ファーストパーティやサードパーティのエージェントで業務を十分に効率化できるのであれば、あえて自前で構築する必要はないと思います。自前で作るのであれば、どのような効果をさらに生み出せるのかを意識しておく必要があると考えます。

MCP Server

Copilot Studio の一つの注目ポイントとして、MCP Server の対応があります。そのため、私も過去に記事を書きました。

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ただ、当初、私の中に素朴な疑問が生まれました。「コネクタでいいんじゃない?だめなの?違い、使い分けは何?」

恐らく、市民開発者の方で同じような疑問を感じた方もいるのではないでしょうか?

まず、ざっくりとした違いですが、コネクタより、いい感じにエージェントが外部システムと連携できます。いい感じというのは、以下のようなイメージです。つまり、文章ベースで情報を渡すだけで、適切なテーブルを選択し、操作を選択し、また、情報を抽出して列に代入してくれます。

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もちろん素晴らしいのですが、個人的には、こちらも、プログラム化して安定的に動かしたい、また、その手段がそれほど難しくないのであれば、コネクタを採用するので良いと思います。

例えば、時々エージェントで日程調整を楽にできるか?楽になったという情報を目にすることがありますが、私個人は、日程調整について、コネクタベースで作成した以下の Power Apps アプリ、Power Automate フローと、Bookings で日程調整には 5 年ほど困っていません。

※長期契約しているお客様の場合、Bookings の URL を共有していつでも予約していいようにしています。日程候補を複数出すようなケースで日程調整アプリを使って一気に仮押さえ、確定したらリリースしています

もちろん、チャットベースや会話の流れでそのままエージェントが日程調整をアシストしてくれるのであれば便利かもしれませんが、私個人としては、上記手段と比較して、それほど大きな効果は見込めなさそうです。

音声ベースで使えると効果高いのでは?

そんな感じで私の頭の中で色々整理していたら思いついたことがあります。

※お客様に対しては上記のような話というか、Copilot Studio の説明する際、他のサービスとの違い、使い分け等を出来るだけ分かりやすく説明しており、Copilot Studio で効率化出来そうな情報を見聞きした場合はすぐに伝えるようにしています

それは、Copilot Studio で作成したエージェント、音声ベースで使えるとより価値が高まるのでは? ということです。

まず、チャットするより、口頭の方が圧倒的に時間当たりの情報量が多いです。

そのため、例えば、上述の日程調整も、出先で、モバイルに対して会話ベースで、

「〇〇さんと〇〇さんで何時から何時までの間で候補日時を出して。〇〇さんは仮予定が入っていても問題ないので、その中で候補を探して。」と伝え、返答が返ってきたら、その内容を読み上げてもらい、「こういう件名、タイトル、議題で会議作成して。」と依頼したら自動で作成してくれるといった感じで動いてくれるのであれば、個人的に、非常にありがたいですし、上述のアプリ+αで作る価値はありそうです。

このように会話ベースでよりインタラクティブにエージェントを切り替え、会話してそのまま指示でき、その際の動作安定性が高いと、かなり効果が高そうです。

上述の使い分けポイントに加えて、音声ベースで柔軟に使えるようになることを見据えつつ(とはいえ、すぐに到来する未来だと思いますが)、今はその準備期間、あるいは先行フェーズなのかもしれません。

音声で指示するだけで、いい感じに仕事を進めてくれるのであれば、より「人の代替」に近づいているとも言えます。そうした観点から、「自分でなくてもできることは何か?」「自分だからこそ価値を発揮できることは何か?」を追求していきたいと考えています。

※2017、2018 年頃だった気がしますが、今後の働き方という感じで、音声と MR 技術でエージェント的なものと連携、会話していい感じに仕事進めていた動画を見た記憶があります。そういった世界観がかなり近付いていると感じました

まとめ

Copilot Studio は進化のスピードが非常に速く、今後のアップデート次第では、私自身の考え方が大きく変わるほどの革新的な変化が起きる可能性もありますが、現時点での Copilot Studio を中心としたエージェントに関する私の考え を整理してみました。

あくまで私個人の主観ではありますが、Copilot Studio のユースケースや各ツールの使い分けに悩んでいる IT 担当者の方、市民開発者の方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

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