はじめに
2025年10月24日、Swift公式が「Swift SDK for Android」のプレビュー版を発表しました。
ついにSwiftが、Appleの外の世界──Androidへ本格的に踏み出した瞬間です。
背景
これまでSwiftは、主にiOSやmacOS向けの言語でした。
一方で、Swiftはもともとオープンソースとして開発されており、WindowsやLinux向けのサポートも少しずつ進んでいました。
そんな中で、2025年6月には「Android Workgroup(Android作業部会)」が公式に立ち上がり、「AndroidをSwiftの正式なサポート対象にする」という方針が示されました。そして、数か月後の10月24日──公式ブログで「Swift SDK for Android」が公開され、実際に開発者が使える形になりました。
Swift SDK for Androidとは?
Swift SDK for Androidは、Android向けにSwiftコードをコンパイルして実行できるようにするための公式SDKです。これまで非公式ツールや複雑なクロスコンパイルが必要だった領域を、公式がサポートし始めたという点が大きな変化です。
できること
- Android向けのSwiftツールチェーンが提供される
- Swift Package ManagerでAndroidターゲットのビルドが可能
- Android NDKと統合し、Swift製ライブラリをAndroidアプリに組み込める
- SwiftとJava(またはKotlin)の間で相互呼び出しを行える仕組みが追加
これにより、Swiftで書いたビジネスロジックをAndroidアプリでも再利用できるようになりつつあります。
導入イメージ
公式ドキュメントでは、以下のようにAndroid向けSDKを取得してビルドする例が紹介されています。
# Android用のSwift SDKをインストール
swift sdk install android
# Android向けにビルド
swift build --destination android-arm64.json
NDKの設定は必要ですが、少なくとも「SwiftだけでAndroidをターゲットにできる」という体験は初めてです。
現時点の課題
もちろん、これはまだ「プレビュー版」。できることにも限りがあります。
- UIフレームワーク(SwiftUIなど)は非対応
- Android StudioやComposeと統合するためには追加設定が必要
- ビルドやデバッグの環境構築はやや複雑
- 実行パフォーマンスやライブラリ互換性はまだ検証段階
つまり今の段階では、「SwiftでAndroidアプリをまるごと作る」よりも、
共通ロジック部分をSwiftで共有するという用途に向いています。
Skipとの違い
似た文脈で「Skip」というツールも注目されています。
Skipは、SwiftUIのコードをJetpack Composeに変換してAndroidアプリを動かす仕組みです。
| 項目 | Swift SDK for Android(公式) | Skip(サードパーティ) |
|---|---|---|
| 提供元 | Swift.org | Skip.tools |
| 目的 | SwiftコードをAndroidで実行可能にする | SwiftUIをAndroidで再現する |
| アプローチ | ネイティブコンパイル | Swift → Kotlin(Compose)変換 |
| 状況 | 公式プレビュー(開発中) | 実用フェーズ(限定公開) |
| UIサポート | なし | あり(SwiftUI互換) |
簡単に言えば、
- Swift SDK for Androidは「言語とツールの基盤整備」
-
Skipは「アプリ開発者向けのブリッジツール」
という違いがあります。
まとめ
- Swift SDK for Androidは、SwiftをAndroidで実行可能にするための公式SDK
- 現在はプレビュー版で、主にロジック共有が中心
- Skipとは目的・層が異なり、UIまではサポートしていない
- 将来はSwiftの“クロスプラットフォーム化”がより現実的に進む可能性がある