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やさしい量子ノイズ(Qiskit Aerを添えて)

Last updated at Posted at 2025-11-28

はじめに

量子コンピュータを触っていると、早い段階でぶつかるのが「ノイズ」の話だと思います。
T₁、T₂、パウリエラー、測定誤差、、

言葉は聞いたことあるけど、結局どう繋がってるのかがわかりにくい。

この記事では、量子ノイズの基本から CPTP チャネルの意味、
そして Qiskit Aer がどんな形でノイズを扱っているのかを、
肩肘張らずに整理していきます。

2025年11月29日時点での情報です。

量子ノイズって何が起きてるの?

量子ビットはとても繊細で、外界とのちょっとした相互作用で状態が崩れます。
ここでは細かい数式より「何が問題か」に寄せて簡単に整理します。

エネルギー緩和(T₁)

励起状態 $|1\rangle$ が自然に $|0\rangle$ に落ちる現象。
量子ビットの“寿命”に関わる部分です。

位相緩和(T₂)

重ね合わせの「位相」だけが失われていく現象。
見た目は変わらないけど、中身の量子らしさが薄れていくイメージ。

測定誤差

測るときに 0/1 を誤判定するタイプのエラー。
現実のデバイスでは結構無視できない。

系統的ゲート誤差(コヒーレント誤差)

キャリブレーションが完全じゃないと、ゲートが毎回少しだけズレる。
誤差が蓄積するのがポイント。

ランダムゲート誤差

パウリの X/Y/Z がランダムに混じるようなノイズ。
確率的なので、平均すると小さくなる場合もある。

CPTPチャネル

ノイズをちゃんと扱うためには、量子状態が どんな風に変化しても「物理的におかしくならない」 ことを保証しないといけません。

その保証付きの変換のまとまりが CPTP チャネル です。

式としては、

$$
\rho' = \sum_i K_i \rho K_i^\dagger
$$

みたいな形で、ここに出てくる $K_i$ がクラウス演算子です。

難しい条件のように見えるけど、やっていることはすごくシンプルで、

  • あり得ない状態(確率がマイナスになる等)が出ない
  • 確率が 100% のまま変化する

この2つだけを守る枠組みです。

そして、この形にしておけば、
現実世界で起きる実際のノイズも、理想的なゲートも、ぜんぶ同じフォーマットで表せます。

ちょっと抽象的に言うと、

CPTP チャネル = 「量子状態に起こり得る全部の変化を、物理的に正しく書ける共通ルール」

という感じです。

Qiskit Aer のノイズモデルを整理する(2025/11/29 現在)

Qiskit Aer はこの CPTP の枠組みを元に、さまざまなノイズモデルを用意しています。ここでは表形式でまとめます。

ノイズモデル一覧(Qiskit Aer)

カテゴリ モデル名 説明
Kraus 系チャネル kraus_error 任意のクラウス演算子 ${K_i}$ を直接指定できる最も自由度の高いノイズ。
mixed_unitary_error 複数のユニタリ $U_i$ を確率 $p_i$ で混ぜるタイプのチャネル。
coherent_unitary_error 単一ユニタリによる系統的(コヒーレント)誤差。毎回少しずつズレるような誤差。
Pauli 系ノイズ pauli_error パウリ演算子($X, Y, Z$)を確率で適用するチャネル。扱いやすい基本ノイズ。
depolarizing_error 確率 $p$ でランダムなパウリエラーが混入し、状態が均一化される脱分極ノイズ。
緩和系ノイズ(T₁/T₂) thermal_relaxation_error $T_1, T_2$、ゲート時間を使った物理的に忠実な緩和モデル。実機シミュレーションの標準。
amplitude_damping_error $\lvert 1 \rangle \to \lvert 0 \rangle$ の減衰を扱う簡易 T₁ モデル。
phase_damping_error 位相情報のみが失われる簡易 T₂ モデル。干渉が崩れていくノイズ。
phase_amplitude_damping_error 振幅(T₁)と位相(T₂)が同時に崩れる一般化モデル。
測定・リセット系 reset_error リセット直後に誤って $\lvert 0 \rangle$ / $\lvert 1 \rangle$ になる誤差。
ReadoutError 測定結果を誤判定するノイズ。実機では無視できない大きさがある。

おわりに

量子ノイズは「避けるべきもの」というより、むしろ量子計算を量子計算たらしめている環境そのものでもあります。ノイズがなければ美しい理論は書けるけれど、ノイズがあるからこそ現実の量子デバイスが見えてくる。かわいい計算機と、これからもゆっくり付き合っていきたいところです。

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