はじめに
Swiftにおいて、スコープを抜ける際に必ず実行されるクリーンアップ処理を記述する defer 構文は、リソースの解放やログ出力において非常に重要な役割を果たします。
これまで defer ブロック内では非同期処理(await)を呼び出すことができませんでしたが、Swift 6.2の導入により、非同期コンテキスト内での async defer が可能になりました。この記事では、その仕組みと動作規則について解説します。
async deferとは
async defer は、非同期関数や非同期コンテキストにおいて、非同期的なクリーンアップ処理を安全かつ確実に実行するための仕組みです。
これまでの defer では、ブロック内で await を使用することが制限されていました。そのため、ネットワーク接続の切断やファイルの同期保存といった非同期のお片付け処理を defer で記述することが困難でしたが、この機能によってそれが解消されました。
基本的な実装方法
非同期コンテキスト内であれば、通常の defer ブロックと同じ感覚で await を含む処理を記述できます。
func processLargeFile() async throws {
let connection = await Database.connect()
// スコープを抜ける際に、非同期で接続を閉じる
defer {
await connection.close()
}
try await connection.saveData()
// 関数の終了時、connection.close() の完了を待機してからスコープを抜けます
}
動作のポイント
-
実行の待機:
deferブロック内の非同期処理が完了するまで、その関数(またはスコープ)の呼び出し元には制御が戻りません。 -
順序の保証: 複数の
deferがある場合、通常のdeferと同様に「最後に定義されたものから順に(LIFO)」実行されます。
主な規則と制約
async defer を使用する際には、以下の規則に留意する必要があります。
非同期コンテキストが必須
await を含む defer は、それ自体が async 関数内であるか、Task ブロック内などの非同期コンテキストで定義されている必要があります。同期関数の中で非同期な defer を記述することはできません。
実行のセマンティクス
defer ブロックが実行されるタイミングは、スコープを抜ける直前です。もし defer 内で await が呼ばれた場合、その処理がサスペンド(一時停止)し、完了してから次の defer や呼び出し元へと処理が移ります。これにより、リソースが確実に解放された後に次のステップへ進むことが保証されます。
活用シーン
この機能は、特に以下のようなリソース管理において力を発揮します。
-
データベースやネットワークのセッション終了:
close()やdisconnect()が非同期メソッドである場合。 - 一時ファイルの削除: ファイルシステムの操作が非同期で行われる環境。
- 分散アクターのクリーンアップ: 他のノードに対する通知など、待機が必要な処理。
まとめ
async defer の導入により、Swift の非同期プログラミングにおけるリソース管理はより直感的で安全なものになりました。「お片付け」が終わるのを適切に待機できるようになったことで、不整合な状態を防ぎ、より堅牢なコードを記述することが可能になります。