はじめに
※本図は公開情報をもとに筆者が独自に作成したものであり、Salesforce 公式の資料ではありません。
Dreamforce 2026 は、2026年9月15日から17日にかけてサンフランシスコと Salesforce+ で開催予定です。公式サイトでは Agentic Enterprise が今年の中心メッセージとして掲げられ、My Agenda も公開されています。
まだイベント本番前なので、本記事では「何が発表されるか」を予想して断定するのではなく、すでに公開されている公式情報と過去の Dreamforce の流れから、イベント以降に確認したい論点を整理します。
以前、TDX 2026 の後に 公式情報をキャッチアップするための全体像 を整理しました。今回はその続編として、開発・アーキテクチャ寄りの観点で Dreamforce を待つためのメモです。
※本記事は2026年9月5日時点の個人メモです。未提供の機能、Pilot / Beta の内容、提供時期や料金は、イベント後に公式ドキュメントであらためて確認してください。
まず、どんな流れで見ればよさそうか
2024年の Dreamforce では Agentforce が大きく打ち出され、2025年には Agentforce 360 として、人とAIエージェントを一つの信頼できるシステムでつなぐ方向性が示されました。2025年の開発者向け情報では、エージェントのライフサイクルを Build、Integrate、Execute、Monitor & Optimize の4段階で整理しています。
本記事では、2026年を「Agentforce 単体の進化」だけでなく、MCP、Data 360、Slack、外部モデルまで含めてエージェントの実行基盤を広げる段階、と仮置きして見ていきます。
以下の5つをメモしておけば、キーノートやセッションを追うときに「自分のOrgでは何が変わるのか」を考えやすくなりそうです。
1. Agentforce は「作る」から「安全に運用する」へ進むか
Dreamforce 2025 では、新しい Agentforce Builder、Agent Script、テストや最適化を含むエージェントのライフサイクルが紹介されました。2026年は、エージェントを作れるかよりも、誰が、どのデータとアクションを使い、どのように評価・改善するか がより具体化されるかを見たいです。
特に確認したいのは次の点です。
- Builder、Agent Script、Skills の役割分担はどう整理されるか
- テスト、評価、監視、改善の機能はどこまで提供されるか
- 人手での承認やエスカレーションを、どの粒度で設計できるか
- Pilot / Beta と GA の境界、対象エディション、利用条件はどうなるか
「デモで動いた」だけでは本番運用の判断には足りません。業務アクションの誤実行をどう避けるか、失敗時に誰が何を見て復旧するかまで聞けるセッションを優先したいです。
2. Headless 360 / MCP は、既存の業務機能をどこまで再利用できるか
2026年8月に Salesforce は Headless 360 の拡張を発表しました。MCP Server、Data 360 MCP Server、Slackbot MCP Client、100以上の再利用可能な Skills、Headless Experience Layer などを通じて、認可されたAIエージェントが既存の業務機能を発見・利用する方向性です。
現時点で公開されている提供状況も整理しておきます。
| 項目 | 2026年9月5日時点 | Dreamforceで確認したいこと |
|---|---|---|
| Headless 360 MCP Server | Open Beta | GA時期、対象範囲、運用条件 |
| Data 360 MCP Server | GA | 実運用時の設計パターン |
| 100以上の再利用可能な Skills | GA | 再利用範囲、権限制御 |
| Headless Experience Layer | Open Beta | 開発・運用モデル |
| Slackbot MCP Server / Client | GA | Salesforceとの統合設計 |
ここで大事なのは「MCPでつながる」こと自体より、既存の権限、メタデータ、Flow、業務ルール、監査を保ったまま外部のエージェントから使えるか、だと思います。
イベント以降に次を確認していくのが良さそうです。
- MCPで公開できるアクションと、公開してはいけないアクションの境界
- 認証主体、権限セット、共有設定が外部エージェント利用時にどう評価されるか
- 実行履歴、監査、レート制御、エラー時の追跡方法
- 既存の Apex / Flow などの業務ロジックを MCP ツールとして公開・再利用する際の設計パターン
自分のOrgで試すなら、まずは参照系の問い合わせや、承認前の下書き作成のように、影響範囲が限定されたユースケースから始めるのがよさそうです。
3. Data 360 は「エージェントに何を根拠として渡すか」の基盤になるか
公式アジェンダでは Data 360: Your Trusted Foundation for Agentforce が注目セッションの一つとして挙がっています。Agentforce の精度や有用性を考えるとき、モデルそのものだけではなく、どの顧客データ・ナレッジ・業務コンテキストを渡すのかが大きな論点になります。
確認したいのは、単なるデータ統合の機能紹介ではありません。
- エージェントが利用するデータの鮮度、品質、来歴をどう管理するか
- Data 360 のデータモデルと、Agentforce のトピック・アクションをどう結び付けるか
- 顧客データ、社内ナレッジ、非構造データを渡す際のアクセス制御
- 回答根拠や検索結果を、利用者・運用者がどこまで追跡できるか
「データをたくさん入れる」よりも、「この業務判断に必要な根拠は何か」を先に定義しておくほうが、設計の会話を進めやすそうです。
4. Slack はエージェントとの協働・レビューの場所になるか
2026年8月に発表された Slack Code は、コード作成エージェントとの作業を専用の Code Channel に分け、会話、差分、プレビュー、レビューをチームで扱う構想です。ChatGPT を含むパートナーのコーディングエージェントとの連携も案内されています。
公式情報でも、エージェントを途中で停止・方向修正できることや、本番反映のような高リスク操作で人の承認を挟む考え方が示されています。
これは開発チームだけの話ではなく、エージェントが業務に入るときの「人がどこで確認し、どこで止め、どこで承認するか」という運用設計の話としても気になります。
イベント以降に確認する観点は次のとおりです。
- Slack上の会話コンテキストと Salesforce のレコード・権限のつながり方
- エージェントの提案、実行、承認を誰が担当するか
- Code Channel のような共有ワークスペースを、開発以外の業務に広げる方法
- 保持期間、検索、監査、機密情報の扱い
エージェントを個人の便利ツールで終わらせず、チームの意思決定に接続する設計ができるかを見たいです。
5. Claudeforce を含むモデル連携は、信頼境界と一緒に見る
2026年8月、Salesforce と Anthropic は Claudeforce を発表しました。発表内容では、Claude の推論と Salesforce のデータ、ワークフロー、業務ロジック、アクション、ガバナンスを組み合わせる方向性が示されています。Salesforce in Claude は選定されたPilot顧客向けに提供され、2026年9月のOpen Beta開始予定とされています。
また、Salesforce in Claude は37種類の事前構築済みSales Skillsを備えたPluginとして案内されています。追加の事前構築済みSkillsは、2026年後半から順次提供予定とされています。
この話は「どのモデルが使えるか」だけでなく、次を確認する機会になりそうです。
- モデル選択を、ユースケース・データ所在地・コスト・レイテンシーでどう判断するか
- Salesforce Trust Boundary 内で扱える範囲と、外部連携時のデータ経路
- Claude、Agentforce、Slack の役割分担と権限モデル
- 既存の Agentforce 実装やプロンプト、評価方法に与える影響
モデルの名前より先に、「そのエージェントはどの情報にアクセスし、どの業務アクションを実行できるのか」を設計書に書ける状態にしておきたいです。
イベント前に自分のOrgで用意しておくメモ
Dreamforce の情報量は多いため、見終わってから「結局、自分たちは何を試すのか」を考えると散らかりがちです。先に1枚だけメモを用意しておくと、セッションの内容を持ち帰りやすくなります。
| 項目 | 事前に書いておくこと |
|---|---|
| 対象業務 | 例: 問い合わせ一次対応、商談準備、社内ナレッジ検索 |
| 利用者 | 顧客、営業、サポート、管理者など |
| 参照データ | Salesforceレコード、Data 360、Knowledge、外部システム |
| 実行アクション | 下書き、登録、更新、承認依頼など |
| 人の関与 | 常に承認、例外時のみ確認、閲覧のみなど |
| 確認したいこと | 提供時期、ライセンス、権限、監査、テスト方法 |
このメモがあると、発表を「面白い新機能」ではなく「この業務なら試せるかもしれない」に変換しやすいです。
まとめ
Dreamforce 2026 の事前情報からは、Agentforce を中心に、MCP経由で既存の業務機能を再利用し、Data 360 で根拠を渡し、Slackで人とエージェントが協働する方向が見えてきます。
イベント本番では、機能名だけではなく、提供形態、権限、監査、評価、運用の話まで確認するとよさそうです。特に Headless 360、Data 360、Slack、モデル連携が、実際のOrg設計でどう一つにつながるのか、という観点で読むと整理しやすそうです。
特に優先して確認したいのは、次の3点です。
- 誰の権限でエージェントが動くのか
- 実行結果をどこまで監査・評価できるのか
- Agentforce / MCP / Data 360 / Slack をどこまで一つの運用モデルとして設計できるのか
Dreamforce 後に新機能の一覧を追うだけでなく、この3点に対する答えがどこまで具体化したかを確認すると、自分のOrgで何を試すべきか判断しやすくなりそうです。








