OpenでFreeなJava実行環境を提供してきたOpenJDKのディストリビューションAdoptOpenJDKは,2021年7月末で更新を終了しました。8月以降はEclipse AdoptiumプロジェクトおよびIBM Developerサイトから配布が継続されます。
AdoptOpenJDKでは,OpenJDKの標準のJVMであるHotSpot VMを含んだものの他に,もう一つのJVMであるOpenJ9を含んだディストリビューションも配布していました。HotSpot VMは,もともとSun Microsystemsが実装していたものにJRockitのコードなどが組み込まれたJVMです。またOpenJ9は,IBMが開発を続けてきた独自JVMです。いまは,どちらのJVMもOSS化され,オープンなコミュニティで開発が継続されています。
AdoptOpenJDKがプロジェクトの独立性をたもちながら安定的に活動していくためには,文化的そして法律的な基盤が必要とされていました。そのため,プロジェクトはEclipse Foundationの傘下に入りAdoptiumプロジェクトとして再スタートすることになります。ですが,その過程で様々な事情があり,AdoptiumプロジェクトではOpenJ9を含んだディストリビューションを配布することができなくなってしまいました。
そこで,2021年8月のAdoptium移行に合わせ,OpenJDK+OpenJ9はIBM Developerサイトで公開されるようになりました。ランタイムの名前も,AdoptOpenJDKからIBM Semeru Runtimesに変更になります。ちなみにSemeruというのは,インドネシアJava島の最高峰の名前から取られています。なお,Adoptiumで配布されるランタイムはEclipse Temurinという名前になります。こちらは”Runtime"のアナグラムが由来です。
IBM Semeru Runtimesでは二つのランタイムが提供されています。
- IBM Semeru Runtime Open Edition
- OSSライセンス(クラスパス例外付きGPLv2)で提供
- Eclipse AQAvit品質保証テストを通過
- IBM Semeru Runtime Certified Edition
- IBMのライセンスで提供
- Eclipse AQAvit品質保証テストを通過
- TCKを通過
Open Editionは,OSSライセンスで提供されますので,これまでのAdoptOpenJDKで配布されていたランタイムと同様に,どなたでも無償でご利用いただくことができます。Certified Editionも無料で使用できますが,こちらはJavaの商標と共に提供するにあたって必要となるTCKによるテストをパスしたエディションで,IBM独自ライセンスで提供されます。両方エディションに機能的な差はありません。
両エディションとも,サポートが必要な場合には,IBM Runtime for Businessを契約いただければ,IBMから商用サポートが提供されるようになります。
サポート期間は,2021年8月現在,以下のようになっています。
IBM Semeru Runtimesバージョン | リリースタイプ | サポート終了予定 |
---|---|---|
16 | Feature | 2021年9月 |
11 | LTS | 2024年10月 |
8 | LTS | 2026年5月 |
2023年3月現在は以下のようになっています。
IBM Semeru Runtimesバージョン | リリースタイプ | サポート終了予定 |
---|---|---|
17 | LTS | 2027年10月 |
11 | LTS | 2024年10月 |
8 | LTS | 2026年9月 |
2024年3月現在は以下のようになっています。
IBM Semeru Runtimesバージョン | リリースタイプ | 提供終了予定 |
---|---|---|
21 | LTS | 未定 |
17 | LTS | 未定 |
11 | LTS | 2026年9月 |
8 | LTS | 2026年9月 |
IBM Semeru Runtimesは,こちらからダウンロードすることができます。