株式会社AI Orchestraのみやっち🧑💻です。8月と10月に、社労士向けのAI勉強会に講師として呼んでいただき、2回ともまったく同じ質問をいただきました。「顧問先の個人情報を、AIに渡していいんですか?」です。
この質問には、YouTubeで答えました。この記事は、その後半で話した「顧問先から『AIはセキュリティが心配』と言われたとき」の確かめ方を、上から順にチェックを入れていけば、顧問先と話す材料がそろうようにチェックリストに起こしたものです。
動画で見たい方はこちら(8分ほど): 【個人情報は渡して大丈夫?】社労士・税理士がAI導入する際に一番いただく質問に答えます(YouTube)
4つの論点の話は 02:37 から、法律と顧問契約の話は 00:55 からです。
この記事は、確かめる順番を整理するためのものです。法律上・契約上の個別の判断は、顧問の専門家(弁護士など)に確かめてください。各AIサービスの規約やプランの内容は変わることがあるので、使う時点の最新の規約を確認してください。
全体の流れ
| 段階 | やること |
|---|---|
| 0 | その前に: 法律と顧問契約の2つを確かめる |
| 1 | 顧問先に、何を心配しているのかを聞く |
| 2 | 4つの論点ごとに事実を突き合わせる |
| 3 | 何がリスクで、どこまで対策できて、何が残るのかを表にする |
| 4 | 顧問先と合意して、理解のある顧問先から始める |
0. その前に: 法律と顧問契約の2つを確かめる
動画の答えは、「法律上、認められているか」と「顧問先との契約上、認められているか」を分けて考えることでした。この2つをクリアしていれば渡して大丈夫、確認しないまま渡すのは避ける、という順番です。
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法律上の制約を確かめた(すべての事業者が守る共通のルール)
- 例えばマイナンバーは、マイナンバー法で利用目的や第三者への提供が厳しく制限されています。外部のAIサービス側が番号を取り扱えない状態になっていると言えない限り、マイナンバーをそのまま入力するのは避けるのが現実的です
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顧問契約の中身を確かめた(顧問先ごとの取り決め)
- 昔からの顧問契約は、生成AIが普及する前に結んだものが多く、外部のAIサービスでの処理までは想定していないケースが多いはずです
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必要なら、覚書を1枚交わす準備をした。書いておくのは次の5つ
- どのAIサービスを使うのか
- どの情報を入力するのか
- マイナンバーは入れない
- 入力した情報がどのくらいの期間保存されるのか
- AIの学習に使われない設定になっているか
ここまでが前提です。この記事の本題は、顧問先から「AIはセキュリティが心配」と言われたときの確かめ方です。
1. 顧問先に、何を心配しているのかを聞く
「AIはセキュリティが怖いんです」と言われて、漠然と「大丈夫ですよ」と答えても、なかなか納得してもらえません。そもそも何を不安に思っているのかが分からないからです。
まず、心配しているのがどれなのかを聞きます。
- 次の4つのどれを心配しているのかを、顧問先に確かめた
聞き方の例です(動画で話した問いを、そのまま使える形にしました)。
AIについて心配されているのは、次のどれでしょうか。
1. 情報が外部に送信されることですか?
2. 送った情報が、AIサービスのサーバーに保存されることですか?
3. 送った情報が、AIの学習に利用されることですか?
4. 情報が、意図せず第三者に公開されることですか?
ひとつずつ事実を確かめて、対策をご説明します。
複数に当てはまることもあります。そのときは、当てはまる論点を全部、次の段階で確かめます。
2. 4つの論点ごとに事実を突き合わせる
論点1: 情報が外部に送信されること
Claude CodeやCodexなどのクラウド型AIを使う場合、基本的には外部のサーバーに情報を送ります。
- 社外に送ること自体が問題なのかを確かめた
送ること自体が問題なら、AIサービス側のセキュリティ対策をいくら説明しても解決にはなりません。保存や学習の話に進む前に、送り方を変えます。
- ローカル環境で動くLLMを検討した
-
または、手元で処理するプログラムで対応できないかを検討した
- データを処理するプログラムをAIに作ってもらい、実際のデータは手元のパソコンでそのプログラムに処理させる方法です。私のクライアントでは、検算や突き合わせをこのやり方にして、毎回サーバーに送らない仕組みにしています
手元で処理する場合、AIに渡すのは「やりたい処理・列の名前・架空の数行」だけにします。境界の引き方の例です(動画では話していない、一般的な注意です)。
- 実データは、AIのエージェントを起動する作業フォルダの外に置いた
- 実データでの実行は、AIのエージェントにさせず、人が自分のターミナルで行うことにした
- 実行結果やエラーを、そのままAIのチャットに貼らないことにした
論点2: 送信した情報が外部のサーバーに保存されること
論点1とは別の問題です。送ること自体は許容できても、その情報がAIサービスのサーバーに長く残ることを心配するケースがあります。OpenAIやAnthropicでは、利用するサービスやプランによって、データの保存期間や削除の扱いが異なります。
- 使うAIサービスとプランを特定した
- そのサービスとプランの規約で、保存期間と削除の扱いを確認した
- どんな情報が・どこに・どれくらいの期間保存されるのかを整理した
- 整理した内容を顧問先と合意した(覚書の「入力した情報がどのくらいの期間保存されるのか」にあたる)
論点3: 送信した情報がAIの学習に使われること
よくある懸念です。ChatGPT BusinessやClaude Teamなどの法人向けプランは、デフォルトで入力した情報がAIモデルの学習に使われない規約になっています。法人向けプランを適切に使っていれば、比較的説明しやすい論点です。
- 事務所で使っているのが法人向けプランかを確かめた
- 顧問先の情報を扱うスタッフが、法人向けプランのアカウントで使っているかを確かめた
- 使っているプランの規約で、学習に使われない扱いになっていることを確認した(覚書の「AIの学習に使われない設定になっているか」にあたる)
論点4: 情報が意図せず第三者に公開されること
これは、AIサービス側で不正アクセスなどの事故が起きるリスクと、事務所のスタッフが操作を間違えて情報を公開してしまうリスクに分けて考えます。
サービス側
- サービス提供会社のセキュリティ対策を確認した
- 第三者認証を確認した
- 事故が起きたときの対応体制を確認した
事務所側(事務所の中で対策できることがたくさんあります)
- 共有リンクの公開範囲を制限した
- 従業員ごとに適切なアクセス権限を設定した
- 重要な操作にはダブルチェックを設けた
- これらの対策をどこまで実施しているかを、顧問先に具体的に説明できる状態にした
3. 何がリスクで、どこまで対策できて、何が残るのかを表にする
動画では、不安を感情論のままにせず、何がリスクで、どこまで対策できて、何が残るのかを論理的に整理することが大切だと話しました。顧問先と話すときは、確かめた結果を1枚の表にしておくと、話が具体的になります。
ひな形の例です。
| 論点 | 顧問先が心配しているか | 確かめた事実 | 事務所の対策 | 残ること |
| --- | --- | --- | --- | --- |
| 1 外部への送信 | | | | |
| 2 サーバーへの保存 | | | | |
| 3 AIの学習 | | | | |
| 4 意図しない公開 | | | | |
- 顧問先が心配している論点について、表を埋めた
- 「残ること」の欄を空にせず、正直に書いた
「残ること」まで書いておくと、AIを使うか使わないかの二者択一ではなく、どんな条件なら使えるのかという話ができます。
4. 顧問先と合意して、理解のある顧問先から始める
- 顧問先の不安そのものを否定せず、ひとつずつ事実を突き合わせて話した
- 合意した内容を、必要なら覚書に残した
- すべての顧問先に一斉に進めず、AI活用に理解のある顧問先(スタートアップやIT企業など)から始めて、徐々に広げることにした
まとめ
- その前に、「法律上、認められているか」と「顧問先との契約上、認められているか」を分けて確かめる。マイナンバーはそのまま入力しない
- 「AIはセキュリティが心配」と言われたら、送信・保存・学習・公開の4つのどれなのかを聞く
- 送信そのものが問題なら、サービス側の対策の説明では解決しない。ローカルで動くLLMか、AIに処理プログラムを作らせて手元で処理するやり方を検討する
- 保存は規約で「何が・どこに・どれくらい」を整理して合意、学習は法人向けプランを確かめる、公開はサービス側の確認と事務所側の運用で備える
- 何がリスクで、どこまで対策できて、何が残るのかを1枚の表にして、顧問先と話す
セキュリティの議論で重要なのは、漠然とした不安を、具体的に検証できる問題に変えることです。法律と顧問契約の2つの確かめ方と、4つの論点の話は、動画で話しています: 【個人情報は渡して大丈夫?】社労士・税理士がAI導入する際に一番いただく質問に答えます(YouTube)