25年新卒にiOSエンジニアとして入社しただーはまです。
今回はiOSから離れ、PdMが作成するカスタマージャーニーマップを紹介します。
カスタマージャーニーマップとは
プロダクトマネジメントにおいて、機能要件定義やスケジュール管理と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのがユーザー体験の全体像を把握することです。
カスタマージャーニーマップとは、ユーザーがプロダクトやサービスと出会い、利用し、最終的なゴール(購入、継続利用、推奨など)に至るまでの一連のプロセスを時系列で可視化したグラフのことです。
単なる「行動履歴」ではありません。ユーザーの「行動」だけでなく、その時々の「思考」「感情」「接点(タッチポイント)」をセットで描くことで、ユーザーがどのような文脈(コンテキスト)でプロダクトに触れているかを浮き彫りにします。
PdMにとってのCJMは、マーケティング資料ではなく、「プロダクトの改善点を発見し、開発の優先順位を決定するための戦略的羅針盤」 と定義できます。
ZOZOTOWNのカスタマージャーニーマップを作ってみた
今回は一人でカスタマージャーニーマップ作ってみました。
後述しますが、一人で作るのは非推奨です。
ZOZOTOWNのフロー
CJM
Why : なぜやるのか
多忙な開発サイクルの中で、あえて時間を割いてCJMを作成する理由は主に3つあります。
1. チームの認識を統一するため(共通言語化)
「機能」単位で話をしていると、エンジニア、デザイナー、ビジネスサイドで視点がズレることがあります。CJMという「一枚の絵」があることで、「ユーザーはこのタイミングで不安を感じているから、この機能が必要なんだ」という共通認識を持つことができます。
2. 「木を見て森を見ず」を防ぐため
個別の機能改善(UIの修正やバグ修正)に追われていると、全体の一貫性が失われがちです。CJMを作ることで、局所的な最適化ではなく、体験全体を通した最適化が可能になります。
3. 真の課題(ボトルネック)を発見するため
数字(離脱率など)だけでは「どこで辞めたか」はわかっても、「なぜ辞めたか」はわかりません。CJMで感情の起伏を追うことで、数値の裏にある**「ユーザーの心が折れた瞬間」**を特定し、効果的な打ち手を考えることができます。
Who : 誰がやるのか
結論から言えば、オーナーはPdMですが、作成は「チーム」で行います。
- PdM(主催・進行): 全体の設計、ゴールの設定、ファシリテーションを担当。ビジネス要件とユーザーニーズのバランスを取ります。
- UI/UXデザイナー: ユーザーの感情や使い勝手の観点から、詳細な体験設計をリードします。
- エンジニア: 技術的な実現可能性や、システムログから見える実際のユーザー挙動(エラー発生箇所など)を共有します。
- CS / セールス: ユーザーの「生の声(クレームや要望)」を最も知る立場として、リアルなインサイトを提供します。
ポイント: PdM一人で作ったCJMは「妄想」になりがちです。多様な視点を入れることで、精度の高いマップになります。
What : 何をやるのか
CJMの作成・運用において行うことは、大きく分けて以下の3つです。
-
定性・定量データの収集:
ユーザーインタビュー、アンケート、アクセス解析、問い合わせログなどから、事実(ファクト)を集めます。 -
時系列の可視化(マッピング):
集めた情報を「認知」「比較」「登録」「利用」「継続」などのフェーズに分け、ユーザーの物語として整理します。特に**「ペインポイント(不満・課題)」と「ゲインポイント(喜び・価値)」**を明確にします。 -
ギャップの特定と施策への変換:
「提供したい理想の体験」と「現実の体験」のズレを見つけ出し、それを埋めるための具体的な機能開発や改善案(バックログ)を作成します。
How : 作成手順
実際の作成は以下の5ステップで進めます。
STEP 1: ペルソナの設定
「誰の」旅なのかを定義します。ターゲットとなる具体的なユーザー像(年齢、職業、ITリテラシー、抱えている課題など)を明確にします。
STEP 2: ゴールとスコープの決定
マップの「始まり」と「終わり」を決めます。
- 例:アプリのインストール 〜 初回課金まで(オンボーディング改善が目的の場合)
STEP 3: フレームワークへの落とし込み
ホワイトボードやツール(Miro, FigJamなど)を使い、横軸に「時間(ステージ)」、縦軸に以下の要素を配置します。
- タッチポイント: スマホ、PC、広告、メールなど
- 行動: ユーザーが実際に取ったアクション
- 思考: その時に考えていること(「これ何?」「面倒だな」など)
- 感情曲線: 気持ちの盛り上がりや下がり具合をグラフ化
STEP 4: 課題の発見&解決策を検討
完成したマップを眺め、感情が下がっているポイント(ペイン)を探します。そこに対して「どうすれば解決できるか?(How might we?)」をチームで議論し、アイデアを出します。
STEP 5: 検証と更新
作成して終わりではありません。実際のログデータと照らし合わせたり、ユーザーテストを行ったりして精度を高めます。プロダクトの成長に合わせて、マップも常にアップデートし続けましょう。