Copilot Studio × SharePoint で社内ナレッジ検索AIを構築する【調査時間 15分→5分の実践記録】
はじめに:なぜ「調査ボット」が必要だったか
テクニカルサポートの現場において、最大の敵は 「情報の分断」 です。
- 膨大な公式Docs:常に更新され、検索性が低い
- 過去のインシデント履歴:解決策が埋もれている
- 散在する社内Wiki:誰の、どのメモが最新か不明
- 個人のローカルメモ:チームに共有されない
1つの複雑なトラブルを解決するのに、10枚のタブを切り替え、複数のソースを横断検索する。この 「調査コスト」 こそが、組織の生産性を蝕む最大の要因でした。
そこで私は、 「ここさえ聞けば、一次情報のありかがわかる」 というハブを作るべく、Copilot Studio で調査専用AI を構築しました。
注記: これは概念実証(PoC)ではありません。某テクニカルサポートの現場で、チームが毎日使っているボットの実運用記録です。
システム構成:Copilot Studio × SharePoint RAG
非常にシンプルかつ強力な RAG(Retrieval-Augmented Generation)を、Copilot Studio の標準機能だけで実装しています。
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| Frontend | Microsoft 365 ポータル(左ペインに常駐) |
| Engine | Microsoft Copilot Studio(Generative AI) |
| Knowledge Source | 特定のSharePointサイト(正規化された過去ログ、最新マニュアル)、Microsoft Learn(管理者向け特定ディレクトリ配下) |
なぜ Copilot Studio を選んだか
- SharePoint連携の速さ:認証やインデックス作成を意識せず、URL指定だけでセキュアな Knowledge Source 化が可能
- エンタープライズ品質の認証:Microsoft Entra ID で完結し、社内機密の漏洩リスクを最小化
- 非開発者への継承性:プログラミング不要。現場リーダーでも迅速にアップデート可能
実運用の壁:AIを「使える道具」にするための調整
「URLを登録して終わり」――現実はそんなに甘くありません。
現場で使える精度に引き上げるために行った、2つの核心的なチューニングを共有します。
① "Garbage In, Garbage Out" の徹底排除
初期段階では過去のインシデントログをすべて読ませましたが、回答精度は絶望的でした。
「古い情報」「誤ったままクローズされたログ」「文脈のないメモ」がAIを混乱させたのです。
対策: AI専用の「ゴールデン・フォルダ」をSharePointに作成。検証済みのドキュメント(Final版)のみを厳選して格納。
教訓: AIの精度は、AIの性能よりも、読ませるデータの「清潔さ」で決まる。
② 「要約」を禁じ、「根拠」を強要する
初期のAIは綺麗にまとめようとする「優等生」でした。しかし、サポート現場が欲しいのは要約ではなく、 「どのDocsのどこに書いてあるか」 というエビデンスです。
対策: システムプロンプトを以下のように調整。
- 「回答には必ず、参照元ドキュメントのURLを含めること」
- 「不確かな場合は無理に答えず、検索を継続するためのキーワードを提示すること」
Temperature(創造性)を最小限に抑え、事実に忠実な出力を徹底しました。
実装テクニック:Generative Answers の設定値
Copilot Studio の「会話生成(Generative Answers)」機能を最大化させるための、当現場のベストプラクティスです。
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| データソースのフィルタリング |
microsoft.com 全体ではなく、https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/admin/ のようにターゲットを絞り込む |
| モデレーションのレベル | 回答率を優先するため「中(Medium)」に設定。その代わり、人間が必ずダブルチェックを行う運用ルールをセット |
導入後の成果
運用開始から3ヶ月。以下の成果を確認しています。
| 指標 | Before | After |
|---|---|---|
| 一次回答までの調査時間 | 平均 15分 | 平均 5分 |
| 新人教育コスト | 「どこを調べればいいか」を毎回説明 | ボットに聞けば済む |
| ナレッジの自浄作用 | 更新頻度が低い | 「AIが答えられない=ドキュメント不備」の共通認識が生まれ、更新頻度が向上 |
まとめ:AIは「魔法」ではなく「検索アシスタント」である
Copilot Studio での実装は、技術的には数時間で可能です。
しかし、それを実務で「使える」レベルに昇華させるのは、 現場の泥臭いデータ整備 と 運用のロジック です。
今後は Power Automate を介して「回答できなかった質問」を自動抽出し、ナレッジの穴を埋め続ける自律的なサイクルを構築する予定です。
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