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ADX2 for UE4で、BGMのテンポに合わせた演出を実装する(改訂版)

Last updated at Posted at 2021-05-01

はじめに

アンリアルエンジン4とサウンドミドルウェア「ADX2 for UE4」を連携させ、BGMのビートに合わせてエフェクトやメッシュを操作し、演出を実装してみます。

「ADX2 for UE4 LE」の新バージョンにて追加されたOnAtomBeatSyncCallbackイベントを使用すれば、簡単に楽曲のビート情報を取得することができます。

当記事ではUE4.26.1を使用します。基本的にブループリントのみでの実装を想定しています。
ADX2はインディー向けの「LE版」であれば、無料で使用できます。
https://game.criware.jp/products/adx2-le/

前提

ADX2 for UE4の導入や基本的な使い方は以下の記事にあります。必要に応じて参照してください。
ADX2 for UE4の導入で、一歩上のサウンド表現を(導入編)
https://qiita.com/SigRem/items/4250925f6d66a4fd287a
ADX2 for UE4の導入で、一歩上のサウンド表現を(実践編)
https://qiita.com/SigRem/items/c089b71c42e898980a46

実装

AtomCraftでマテリアルを準備

まずはAtomCraftでBGMとなるマテリアルを用意します。
マテリアルツリーに音源をドラッグアンドドロップして追加します。
A01.png

キューを新規に作成します。
ワークユニットツリーのキューシート上で右クリックし、「新規オブジェクト」→「キュー『ポリフォニック』の作成」を選択します。
A02.png
キューに名前をつけ、音源をトラック上にドラッグアンドドロップして配置します。
A03.png

ビート同期情報の設定

まずは必要な情報として、曲のBPMを確認します。
マテリアルツリーの目的の音源を選択して右クリックし、「BPM解析」を選択します。
A04.png
ログにBPM情報が出力されます。
A05.png
もしログウィンドウが見当たらない場合、ツールバーの「表示」→「メインビュー」→「ログ」を選択することで再表示が可能です。
A06.png

トラックリストの空欄で右クリックし、「新規オブジェクト」→「ビート同期情報の作成」をクリックします。
A07.png
「BeatSync」と書かれたマーカーが追加されます。
A08.png
「BeatSync」マーカーが選択された状態で、インスペクターの「BPM」に先ほど解析したBPMを入力します。
A09.png

キューシートのビルド

ここまで完了したらキューシートを書き出します。
A10.png
A11.png

UE4でセットアップ

UE4にキューシートをインポートします。acf、acbファイルをコンテンツブラウザの任意の場所にドラッグアンドドロップしてください。
B01.png

ツールバーの「Edit」→「Project Settings」を開き、
B02.png
「CriWare」タブの「Atom Config」にビルドしたacfファイルを入力します。
B03.png

レベル上にキューを配置すると、ゲーム開始時にBGMが再生されます。
B04.png

ブループリントからビートのタイミングを取得

レベルブループリントから、BGMのビート情報を取得してみましょう。
レベルに配置したキューを選択しておきます。
B06.png
「Blueprint」→「Open Level Blueprint」でレベルブループリントを開きます。
B05.png
レベルブループリントグラフ上の空いている場所で右クリックし、「Create a Reference to (キュー名)」を選択します。
B07.png
キューのリファレンスノードが作られます。
B08.png
リファレンスノードから線を引き出し、Get Atom Componentノードを作ります。
B09.png
さらにGet Atom Componentノードから線を引き出し、「beat」と検索します。
「Assign On Atom Beat Sync Callback」が候補に出てくるので選択します。
B10.png
新規にノードとイベントノードが作成されました。適当に名前をつけます。
このイベントがBPMに合わせて呼ばれるものになります。
B11.png
Bind Event to On Atom Beat Sync CallbackノードにEvent BeginPlayから線をつなげます。これで、下にあるイベントがゲーム開始時に紐付けられることになります。
B12.png
テストとして、イベントからPrint Stringノードにつなげて実行してみましょう。
B13.png
実行してみると、BGMのテンポに合わせて画面左上に文字が表示されるはずです。
B14.png

ビートに合わせて拡縮するリング

この処理を利用して、テンポに合わせて大きさが変わるオブジェクトを作ってみます。

コンテンツブラウザの任意の場所で右クリックし、「Blueprint Class」を選択して新規にアクターを作成します。
B15.png
親クラスは「Actor」を選択します。
B16.png
作成されたアクターに適当な名前をつけます。
B17.png
アクターをダブルクリックして開き、見た目となるコンポーネントを追加します。
画像では平面のStaticMeshにリングが描かれたマテリアルを適用しているだけです。
B18.png
AtomComponentも追加します。
B19.png
AtomComponentを選択し、Detailsパネルで再生したいサウンドを指定しておきます。
B20.png
AtomComponentを右クリックし、「Add Event」→「Add OnAtomBeatSyncCallback」を選択してイベントを追加します。
B21.png
イベントグラフに自動的に移動し、BeatSync用のイベントが追加されたのが確認できます。
B22.png

リングの大きさを変化させる処理を書きます。
まずはコールバックイベントからつなげる処理です。
Get (見た目のコンポーネント名)を配置し、そこから線を引き出しSet Relative Scale 3Dを置きます。これはアクター内で相対的なスケールを変えるものです。「New Scale 3D」にはとりあえず「3」を入力しておきます。
この処理により、ビートごとにリングの大きさが「3」倍に設定されます。
B23.png

次にTickイベントからの処理です。
コールバックイベント側とほぼ同じですが、少しだけ複雑になります。スケールの指定にはVInterp Toノードを使い、大きさが滑らかに変化するようにします。「Current」にはGet Relative Scale 3Dをつなげて現在の相対スケールを、「Target」には「1」を指定します。
「Delta Time」にはEvent Tickの「Delta Seconds」をつなげます。
「Interp Speed」にはひとまず仮で「5」を入れておきます。
これにより、Tick毎にリングの大きさは常に「1」倍に近づきます。
B24.png
ふたつのイベントからの処理により、常に1倍のスケールに近づくリングが、ビートのタイミングで3倍のスケールに再設定されるという仕組みができあがります。どう動くかは実際に見てみるのが早いと思います。

レベル上にアクターを配置します。最初にテスト用に置いていたキューは削除し、またエラーが出るのでレベルブループリントの内容も消しておきます。
B25.png
実行すると、ビートごとにリングの大きさが変わります。ライブシーンのエフェクトなどにも使える演出かもしれません。
B26.png

ビートに合わせて発光するマテリアル

ビートに合わせて発光するオブジェクトも作ってみます。
同様にアクターを作成し、合わせて新規にマテリアルを作成します。
コンテンツブラウザで右クリックし→「Material」を選択です。
B27.png
作成したマテリアルをダブルクリックしてマテリアルエディタを開き、キーボードの「3」キーを押しながらクリックすると3つのパラメータを持つノードが作られます。
「Emissive Color」につなげます。これでこのマテリアルが、パラメータに応じた色で発光するようになります。
B28.png
作成したノードを右クリックして「Conver to Parameter」をクリックします。
B29.png
ノードがパラメータ(変数)化されるので、「EmissiveColor」と名前をつけます。
B30.png

アクターを開きます。
リングのときと同じように、見た目となるコンポーネントとAtomコンポーネントを追加します。今回は外観をSphereにしています。
Atomコンポーネントには、忘れずに再生する音源を指定しておきます。
B31.png
イベントグラフに移動し、Event BeginPlayからCreate Dynamic Material Instanceノードを配置します。これはブループリントにより動的に操作可能なマテリアルを作成するものです。「Parent」には先ほど作成したマテリアルを指定します。
B32.png
青いピン「Return Value」を右クリックし、「Promote to Variable」を選択します。
B33.png
これで作成した動的なマテリアルが変数化され、このブループリントからいつでも操作可能になります。今回は「DM_Color」と名前をつけました。
B34.png
外観となるSpehreコンポーネントのGetノードを作り、Set Materialノードで先ほど変数化したマテリアルを指定します。これでSphereに操作可能なマテリアルが適用されることになります。
B35.png

あとはリングの大きさを変えたように、コールバックイベントとTickイベント間で色を変えるだけです。
マテリアルの色を変えるにはSet Vector Parameter Valueノードを使います。まずGet DM_Colorを配置し、そこからノードを作成します。「Parameter Name」にはマテリアルのパラメータ名である「EmissiveColor」を入力します。
処理はOn Atom Beat Sync Callbackイベントノードからつなげましょう。
B36a.png
色を数値で指定するには「Value」ピンから線を引き出し、Make Colorノードを置きます。
今回は青に「50」を指定しました。かなり眩しく発光するはずです。
B36.png
Event Tick側にはまずGet DM_ColorからのGetVectorParameterValueをつなげます。これで現在の色のパラメータ値を取得します。
B37.png
あとはSet Vector Parameter Valueと**Interpolate(LinearColor)**ノードを使用し、黒色が指定されるようにします。
「Interp Speed」はとりあえず「10」とします。「Delta Seconds」(黄緑色の線)も忘れずにつないでください。
B38.png

レベルに配置してテストしてみましょう。音楽が被って聞こえてしまうので、リングのアクターは取り除いておきます。
B39.png
実行すると、音楽に合わせて明滅します。
B40.png

参考リンク

今回の記事は、「ADX2 for UE4 LE」アップデートに伴い、過去記事の処理内容に当たるノードが追加されている旨の指摘をいただき作成しました。

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