本業で Microsoft Copilot Studio と Power Automate を使って社内の AI エージェント基盤を運用している立場から、2026年に入ってからの大きな変化として気になっているのが MCP(Model Context Protocol)対応です。Copilot Studio の「エージェントワークフローに既存の MCP サーバーを接続する」機能が2026年7月に一般提供(GA)へ移行しました。プレビュー期間を経て、社内ツールをエージェントに接続する方法として正式に採用してよい段階に入ったことになります。
MCP自体は、AnthropicがLLMと外部ツール・データソースをつなぐための標準プロトコルとして公開したもので、Claude Desktopや各種エディタ向けのMCPクライアント実装が先行して普及していました。Copilot Studioの対応はその流れをMicrosoft側が正式に取り込んだ形です。GAにあたって明確になった仕様上のポイントとして、トランスポート方式がStreamable HTTPに一本化されたことが挙げられます。SSE(Server-Sent Events)方式は2025年8月時点で非推奨となっており、Copilot StudioもGA後はStreamable方式のみをサポートします。既存のMCPサーバーをStreamable未対応のまま公開している場合は、Copilot Studio側から接続できない点に注意が必要です。
GA版で強化された運用面の機能としては、接続済みのMCPサーバーが公開しているツール一覧を確認できる管理画面、呼び出しのトレーシング・分析機能、そしてアクティビティマップ上でどのMCPサーバー・どのツールが実行時に呼ばれたかを可視化できる機能が追加されています。複数のMCPサーバーを1つのエージェントに接続し始めると、どのツールがどの応答に寄与したかが見えにくくなるという運用上の課題に対応したものだと理解しています。
ここで気になるのが、Power Automateのカスタムコネクタとの役割分担です。これまで社内システムをCopilot Studioのエージェントから呼び出す方法は、Power Automateのカスタムコネクタ(OpenAPI定義をもとにHTTPアクションを1つずつ登録する方式)が主流でした。MCPはこれとは異なり、サーバー側が「このエージェントにはこういうツールが使える」という情報自体をプロトコルとして返すため、エージェント側でツールを1つずつ定義し直す作業が減ります。一方で、Power Automateのフロー内で使い慣れた承認ステップやエラーハンドリングの仕組みをそのまま流用できる点はカスタムコネクタ側に分があります。現時点での整理としては、社内の複数システムを横断してツール群をまとめて公開したい場合はMCPサーバー経由、既存のPower Automateフローの一部としてエージェントに組み込みたい場合はカスタムコネクタ、という使い分けが妥当だと考えています。
大企業でAI・デジタル化を推進する立場から見ると、MCPのような標準化された接続方式が増えることは、ベンダーごとに個別対応していたエージェント連携のコストを下げる方向に働くはずです。ただし社内ネットワーク越しにMCPサーバーを公開する場合は認証・認可の設計が別途必要になるため、GAになったからといって既存のセキュリティレビューのプロセスを省略してよいわけではない、という点は導入検討時に強調しておきたいところです。