Dify でワークフローが呼び出す Workflow Tool の中で何が起きているか、今まで「Tool スパンが通った」「Tool スパンが失敗した」しか見えなかった。内部の LLM コールやステップが追えなかった。v1.19.0 でそれが変わった。
この記事で分かること:
- Dify 1.19.0(2026-11-04 リリース)の3つの主要変更
- ネストしたワークフロートレースの仕組みと実務での使い所
- アップグレード前に確認すべき Docker Compose 2.35.0 以上の要件
Dify 1.19.0 は 2026-11-04 にリリースされた。変更の全容は公式リリースページ(https://github.com/langgenius/dify/releases/tag/1.19.0)で確認できる。大企業内で Dify Enterprise を使っている立場から、実務に直結する3か所を整理する。
1. ネストしたワークフロートレース(Nested Workflow Tracing)
変更内容:ワークフロー内で Workflow Tool を呼び出したとき、その内部のステップや LLM コールが外部トレース(Langfuse など)に階層構造で出るようになった。
今まで:
- 外側のワークフロー → Workflow Tool のスパン(通った/失敗した)しか見えない
- Workflow Tool の中で何が起きたか、どの LLM コールが遅かったか、どのステップで詰まったかは追えない
v1.19.0 以降:
- Workflow Tool の呼び出しスパンの下に、内部のステップが階層で並ぶ
- LLM コールのプロンプト・レスポンス・トークン数も確認できる
- ネストした Tool が複数回呼ばれた場合も、各呼び出しが別々のスパンとして残る
注意点:
- 新しいトレース階層は「今後の実行」に適用される。既存の履歴はバックフィルされない
- Workflow Tool の内部ステップが永続化されている必要がある(1.18.0 以降の Console ドリルダウン機能を前提としている)
- ローリングデプロイ中はトレースキューの移行手順(
ops_trace→ops_trace_v2)が必要
大企業内で Dify を使っていると、ワークフローが複数の Workflow Tool を呼び出す複雑な構成になることがある。今まで「どの Tool で詰まっているか」を切り分けるのに、ログをひとつひとつ確認する必要があった。ネストトレースが取れると、この調査時間が大きく変わる。
2. Workflow Tools の App パッケージへの同梱(.ifpkg v2)
変更内容:App をエクスポートすると、そのアプリが使っている Workflow Tools も一緒に .ifpkg パッケージに含まれるようになった。
今まで:
- App をエクスポートしても、Workflow Tools の定義は含まれなかった
- 別環境にインポートするとき、Workflow Tools を別途作成・登録する必要があった
v1.19.0 以降:
-
.ifpkg(format v2)に Workflow Tools の定義が含まれる - インポート先で既存の Tool と重複する場合は再利用し、ない場合は作成・公開・登録まで自動で行う
- 推移的な依存(Tool が呼び出す Tool)も含まれる
重要な注意:すべての Dify App エクスポートが format v2 になった。古い v1 のインポーターは受け付けない可能性がある。インポート先も 1.19.0 以上に揃えてからパッケージをインポートすること。
複数の Dify 環境(開発・ステージング・本番)を使っている場合に、この変更の影響が出る。移行の順序は「インポート先を先に 1.19.0 にアップグレードしてから、エクスポート・インポートを行う」という手順になる。
3. difyctl による Skills 管理(6コマンド追加)
変更内容:difyctl に Skills を管理する6つのコマンドが追加された。
| コマンド | 操作 |
|---|---|
difyctl get skill |
Skills の一覧(キーワード・タグフィルタあり) |
difyctl describe skill |
詳細・ドラフトハッシュ・最新版の確認 |
difyctl get skill version |
公開済みバージョンの一覧 |
difyctl export skill |
ドラフトまたは指定バージョンを ZIP でエクスポート |
difyctl import skill --files |
ローカルファイルから Skill を作成またはドラフトを置き換え |
difyctl publish skill |
ドラフトを新しいバージョンとして公開 |
注意点:
- アカウント caller 権限が必要(ワークスペース側の対応する権限も必要)
- Skills が有効化されている必要がある
-
difyctl importは公開しない(import ≠ publish) - 既存 Skill への上書き import は「破壊的」操作として扱われる
CI/CD に組み込んで Skill のバージョン管理をしたい場合に使える。今まで Skill の変更は GUI からしか行えなかったが、コマンドラインから操作できるようになったことで、自動化の幅が広がる。
アップグレード前に確認:Docker Compose 2.35.0 以上が必須
変更内容:Docker Compose の最小必須バージョンが 2.35.0 になった。
これは .env ファイルの優先順位の解決方法が変わったことに関係している。root の .env オーバーライドが service のデフォルトより優先されるように動くには 2.35.0 以上が必要。
確認コマンド:
docker compose version
2.35.0 未満の場合はアップグレードしてから Dify 1.19.0 に更新する。
ローリングデプロイを行う場合は、トレースキューの移行手順が必要。新しいキュー ops_trace_v2 を、API・worker・Beat のすべてで同時に切り替える必要がある。古いキュー ops_trace のワーカーは、溜まっているタスクが空になってから停止する。
その他のアップグレード注意点:
- 環境ファイル(
.env)は既存のものをそのまま使う。誤って空にしないよう注意 - plugin daemon を
0.6.14-localに更新する - 1.18.0 より前からアップグレードする場合は 1.18.0 のアップグレードガイドも確認する
- バックアップ(DB・ベクトルストア・ファイル)は事前に取っておく
今回確認したこと
v1.19.0 の変更のうち、企業 Dify 運用に直結するのは次の3点:
- ネストトレース:Workflow Tool の内部まで追えるようになった。複雑な構成でのデバッグ・パフォーマンス調査に効く
- Workflow Tool のパッケージ同梱:環境間移行が楽になるが、インポート先を先に 1.19.0 に揃えることが必要
- Docker Compose 2.35.0 必須:破壊的変更。アップグレード前にバージョン確認を
Dify の活用場面や設計についてはこちらでも書いている:
Copilotで議事録を作るとき、事前にやること