はじめに
あなたは日々、コードを書き、新しい技術に挑戦し、チームの課題を解決するために全力を尽くしているのに、どうしてか成果が正当に評価されない。
そんな状況に心当たりはありませんか?
- コードレビューでは特に問題がないのに、プロジェクトや会社での評価はイマイチ
- 新しい技術やライブラリを導入しても、会議では誰も振り向いてくれない
- 自分がどれだけ頑張ったかが昇進やボーナスに反映されない
これは非常に多くのエンジニアが抱える悩みです。そして、多くの場合、原因は単なる技術力の不足ではなく、『翻訳力不足』にあります。
この記事では、技術力を持ちながらも評価されない理由、翻訳力の重要性、そして具体的にどう改善すれば良いかを、共感しながら理解できる形で紹介します。
翻訳力とは何か
翻訳力とは単に外国語を翻訳する力ではありません。ここで言う翻訳力とは、「エンジニアリング言語」と「ビジネス・経営言語」をつなぐ能力のことです。
多くのエンジニアは、自分が正しいと思う技術的解決策を提示します。しかし、経営者やプロジェクトマネージャーが求めているのは「その技術がどのようにビジネスに価値を生むか」という点です。技術力だけでは評価されない理由はここにあります。
例:技術とビジネスのギャップ
この図が示す通り、技術的には正しい提案でも、ビジネス側にどう価値を提供するかが伝わらなければ、理解されず、評価にもつながりません。
翻訳力の重要性
翻訳力があると、単なる技術力以上の影響力を持つことができます。具体的には次の3つのメリットがあります。
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技術的価値を可視化できる
- 単に「早くなる」ではなく、開発工数削減やパフォーマンス改善を具体的な数字で示す
- 例:キャッシュ導入でレスポンスタイムが2秒から1秒に短縮され、ユーザー離脱率が10%減少
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意思決定者の言語に寄せられる
- ROI、KPI、コスト、リスクなど、経営視点で話すことで提案が理解されやすくなる
- 例:マイクロサービス化でデプロイ工数を半分にし、リリースサイクル短縮によって新機能投入が2週間早くなる
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チーム全体の理解度を上げられる
- 非エンジニアでも納得できる説明ができると、プロジェクト全体がスムーズに進む
- 例:テスト自動化を導入し、QAチームの工数を50%削減、バグ修正の遅延リスクを軽減
技術を翻訳する具体例
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高速キャッシュの導入
- 技術的視点:レスポンスタイムが50%改善
- ビジネス視点:顧客体験改善により、コンバージョン率が3%向上し売上増加
- 共感ポイント:毎日のユーザーから「ページが遅い」とクレームが来ていたが、改善後はポジティブなフィードバックが増えた
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マイクロサービス化
- 技術的視点:デプロイの独立性が向上し、障害影響範囲が限定される
- ビジネス視点:新機能リリースまでの時間を1週間短縮し、競合より早く市場対応が可能
- 共感ポイント:リリース前の夜遅くまでの作業が減り、チームの疲弊度も改善
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テスト自動化の導入
- 技術的視点:テスト工数を70%削減
- ビジネス視点:バグによるリリース遅延リスクを減らし、品質の高い製品を短期間で提供
- 共感ポイント:手動テストでミスが発生していたストレスが減り、チームの士気も向上
翻訳力を鍛える方法
1. ドキュメント化の習慣をつける
- 技術的変更や改善点を単に記録するだけでなく、数字や効果に置き換えてまとめる
- 成果が見える形になると、レビューやプレゼンの際に説得力が増す
- 例:コード最適化前後のレスポンス時間やメモリ使用量を図表化
2. 経営視点を学ぶ
- KPI、ROI、コスト構造など、経営視点の基礎を学ぶ
- 「この技術は会社にどれだけ利益をもたらすか?」を常に考える習慣をつける
- 例:新機能追加での売上増加予測を自分で計算して報告
3. 非エンジニアに説明してみる
- 「何をやるか」ではなく「何が変わるか」を中心に話す
- 同僚や上司に説明してフィードバックをもらうことで、伝え方の精度が上がる
- 例:開発プロセス改善で残業時間が減ったことを数字で示す
4. 成果を定量化する
- 可能な限り数字で効果を示す
- 例:レスポンス改善=何秒短縮、コスト削減=何円、売上増加=何%など
- 共感ポイント:数字にすることで、非技術者でも改善の大きさを直感的に理解できる
まとめ
技術力が高いのに評価されないエンジニアの多くは、自分の技術が組織にどんな価値を生むかを伝える力、つまり翻訳力が不足しています。
- 技術だけでなく、ビジネス視点でも成果を表現することが重要
- ドキュメントや説明で可視化することで説得力が増す
- 経営者・非エンジニア向けに説明する練習をすることが翻訳力向上につながる
翻訳力を身につければ、技術力は初めて正当に評価され、キャリアの飛躍にもつながります。今日から少しずつ、自分の技術を翻訳してみましょう。そして、あなたの技術が組織で正しく評価される日を迎えてください。
技術だけで終わらず、周りを巻き込み、共感を生む力を持つエンジニアこそ、真の意味での「評価される技術者」です。この記事を読んだあなたも、まずは小さな一歩を踏み出してみてください。