これは、Qレプリケーション・チュートリアル ASNCLP版の4番目の記事です。
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モジュール.2
Q レプリケーションのセットアップ - つづき
参照元: モジュール 2: Q レプリケーションのセットアップ- IBM Documentation
前のステップで、コントロール表の作成と、データベース・ログの保持方法を変更しました。
次からいよいよレプリケーションの定義に入ります。
レッスン 2.3
レプリケーション・キュー・マップの作成
参照元: レッスン 2.3: レプリケーション・キュー・マップの作成 - IBM Documentation
このレッスンでは、レプリケーション・キュー・マップを作成します。
キュー・マップはリモート送信キュー、受信キュー、リモート管理キューの組み合わせで構成されるレプリケーション・データや管理情報の通り道のようなものになります。
この後のレッスンで各表ごとにレプリケーションの定義(Qサブスクリプション)を作成しますが、Qサブスクリプションは必ずいずれかのキュー・マップに関連づけられるので、先にこのキュー・マップを作成しておく必要があります。
1.キュー・マップ作成用のASNCLPスクリプト・ファイルの作成
ここで間違い易いのが管理キューの名前です。
キュー・マップの定義では、Qアプライ側で使用するリモート管理キューの名前を指定します。Qキャプチャー側の管理キュー(ローカル・キュー)ではないので、注意してください。
チュートリアルでは、どちらの名前もADMINQとなっていて少し分かりにくいので、ここではあえてQアプライ側で使用するリモート管理キューの名前をRMT_ADMINQとしました。
CREATE REPLQMAPで指定するキューの順序にも注意が必要です。
感覚的には送信キューから記載したくなりますが、
ADMINQ "admnqname"
RECVQ "recvqname"
SENDQ "sendqname"
の順序で書かないとエラーになりますので、ここも注意してください。
では、cre.QREP_QMAP.clpin.txt
ファイルを作成して、以下の内容を記載してください。
前半のQキャプチャー、Qアプライのスキーマ名を記載するところまでは、制御表を作成したスクリプトの書き方と同じですが、出力されるSQLファイルやログ・ファイルの名前はキュー・マップ作成用と分かるように変更しています。
また制御表作成時は、キュー・マネージャーの指定が必要でしたが、キュー・マップ作成時はキュー・マネージャーの情報は不要です。(書いてあってもエラーにはなりません。)
### Qレプリケーション用のASNCLPセッションであることを宣言
ASNCLP SESSION SET TO Q REPLICATION;
### 生成されたSQL文を保管するファイル
SET OUTPUT CAPTURE SCRIPT "cre.QCAP_QMAP.sql.txt";
SET OUTPUT TARGET SCRIPT "cre.QAPP_QMAP.sql.txt";
### ASNCLPコマンドの実行ログファイル
SET LOG "cre.QREP_QMAP.clpin.log.txt";
### SQLファイルの出力のみ(SQLファイルの内容は自分で実行する)
SET RUN SCRIPT LATER ;
### 即時実行
# SET RUN SCRIPT NOW STOP ON SQL ERROR ON;
### ソースおよびターゲット データベースの指定
### パスワード・ファイルを利用して、接続ユーザー情報とパスワード情報を読みこませる場合
SET PWDFILE "asnpwd.aut";
SET SERVER CAPTURE TO DB SAMPLE ;
SET SERVER TARGET TO DB TARGETDB ;
### Qキャプチャー、Qアプライのスキーマ名(ASNはデフォルト、任意の名前を指定可能)
SET CAPTURE SCHEMA SOURCE ASN;
SET APPLY SCHEMA ASN;
### キュー・マップの作成
CREATE REPLQMAP SAMPLE_ASN_TO_TARGETDB_ASN
USING
ADMINQ "RMT_ADMINQ"
RECVQ "RECVQ"
SENDQ "SENDQ"
;
2.キュー・マップの作成
作成したASNCLPスクリプト・ファイルcre.QREP_QMAP.clpin.txt
を実行します。
SET RUN SCRIPTの指定は、最初はLATER、エラーがなければNOWで再実行してください。
asnclp -f cre.QREP_QMAP.clpin.txt
2.キュー・マップの作成ASNCLPコマンド SET RUN SCRIPT NOWでの実行例
====
CMD: ### Qレプリケーション用のASNCLPセッションであることを宣言
====
====
CMD: ASNCLP SESSION SET TO Q REPLICATION;
====
(中略)
====
CMD: ### キュー・マップの作成
====
====
CMD: CREATE REPLQMAP SAMPLE_ASN_TO_TARGETDB_ASN
====
====
CMD: USING
====
====
CMD: ADMINQ "RMT_ADMINQ"
====
====
CMD: RECVQ "RECVQ"
====
====
CMD: SENDQ "SENDQ" ;
====
ASN1956I ASNCLP : アクション "CREATE REPLICATION QUEUE MAP" の SQL スクリプト・ファイルを生成しています。
ASN1955I ASNCLP : 次のファイルを使用しています。キャプチャー SQL スクリプトとして "cre.QCAP_QMAP.sql.txt"、コントロール SQL スクリプトとして "replctl.sql"、ターゲット SQL スクリプトとして "cre.QAPP_QMAP.sql.txt"、およびログ・ファイルとして "cre.QREP_QMAP.clpin.log.txt"。
--- ASNCLP Version 11.5 Build date 2022-09-22 21:41:24
<ClpInfo2Log:: Preparing to run script.>
<ClpInfo2Log:: Now running SQL...>
ASN1514I レプリケーション・アクションは、"2023年xx月xx日 (x曜日) 15時32分46秒 JST" に、"1" 個の成功、"0" 個のエラー、および "0" 個の警告を伴って終了しました。
<ClpInfo2Log:: The SQL command completed successfully.>
ASN1953I ASNCLP : コマンドが完了しました。
キュー・マップの情報は、Qキャプチャー側の制御表のASN.IBMQREP_SENDQUEUESとQアプライ側の制御表ASN.IBMQREP_RECVQUEUESに入りますので、興味があればSELECTして内容を確認してみてください。
次は、Qサブスクリプションを作成します。
レッスン 2.4
Q サブスクリプションの作成
参照元: レッスン 2.4: Q サブスクリプションの作成 - IBM Documentation
Qサブスクリプションとは、ソース表からターゲット表のレプリケーションの仕方を定義するものです。
レプリケーション対象の表ごとに Q サブスクリプションは作成します。
このチュートリアルでのレッスンでは、SAMPLE データベース内の EMPLOYEE 表を TARGETDB データベースの EMPLOYEE という名前のコピー表にレプリケーションするように定義しています。
先述したように、1つのQ サブスクリプションはいずれか1つのキュー・マップに属するようにします。
Q サブスクリプションとキュー・マップは1対1でも良いですが、一般的なのは、1つのキュー・マップに複数のQサブスクシプションを含める構成です。
では、SAMPLE データベース内の EMPLOYEE 表を TARGETDB データベースの EMPLOYEE 表にレプリケーションするQサブスクシプションを定義するASNCLPコマンドを作成します。
1.Qサブスクリプション作成用のASNCLPスクリプト・ファイルの作成
Qサブスクリプション作成用のASNCLPコマンド
CREATE QSUB
参考:CREATE QSUB コマンド (単一方向レプリケーション) - IBM Documentation
キュー・マップの名前:SAMPLE_ASN_TO_TARGETDB_ASN
Qサブスクリプションの名前:EMPLOYEE0001
ソース表の名前:DB2ADMIN.EMPLOYEE
ターゲット表の名前:DB2ADMIN.EMPLOYEE
cre.QREP_QSUB.clpin.txt
ファイルを作成して、以下の内容を記載してください。
前半のQキャプチャー、Qアプライのスキーマ名を記載するところまでは、制御表やQマップを作成したスクリプトの書き方と同じですが、出力されるSQLファイルやログ・ファイルの名前はQサブスクリプション作成用と分かるように変更しています。
お使いのユーザーIDがdb2admin以外の場合は、DB2ADMIN.EMPLOYEEのスキーマ名を適宜変更してください。
### Qレプリケーション用のASNCLPセッションであることを宣言
ASNCLP SESSION SET TO Q REPLICATION;
### 生成されたSQL文を保管するファイル
SET OUTPUT CAPTURE SCRIPT "cre.QCAP_QSUB.sql.txt";
SET OUTPUT TARGET SCRIPT "cre.QAPP_QSUB.sql.txt";
### ASNCLPコマンドの実行ログファイル
SET LOG "cre.QREP_QSUB.clpin.log.txt";
### SQLファイルの出力のみ(SQLファイルの内容は自分で実行する)
SET RUN SCRIPT LATER ;
### 即時実行
# SET RUN SCRIPT NOW STOP ON SQL ERROR ON;
### ソースおよびターゲット データベースの指定
### パスワード・ファイルを利用して、接続ユーザー情報とパスワード情報を読みこませる場合
SET PWDFILE "asnpwd.aut";
SET SERVER CAPTURE TO DB SAMPLE ;
SET SERVER TARGET TO DB TARGETDB ;
### Qキャプチャー、Qアプライのスキーマ名(ASNはデフォルト、任意の名前を指定可能)
SET CAPTURE SCHEMA SOURCE ASN;
SET APPLY SCHEMA ASN;
### Qサブスクリプションの作成
CREATE QSUB
USING REPLQMAP SAMPLE_ASN_TO_TARGETDB_ASN
(
SUBNAME EMPLOYEE0001
DB2ADMIN.EMPLOYEE
OPTIONS
TARGET NAME "DB2ADMIN"."EMPLOYEE"
) ;
キュー・マップの指定
レプリケーション・センターを使用した場合、キュー・マップ名は定義済みのものがあれば自動的に名前が入りますが、CREATE QSUBコマンドではキュー・マップ名は必ず指定しなければなりません。
Qサプスクリプション名
CREATE QSUBコマンドでは、Qサブスクリプション名を指定しないと、"SUB-<ソース表名>"になりますが、任意の名前を付けることができますので管理しやすい名前を明示指定することをお勧めします。
レプリケーション・センターでは、Qサブスクリプションの名前は表名から自動的に生成され、チュートリアルでは EMPLOYEE0001 となっていますが、この自動生成された名前は、GUI上では変更できません。
ここではチュートリアルと同じ EMPLOYEE0001 をQサブスクリプション名を指定しています。
ターゲット表名と表スペース
ターゲット表は、チュートリアルに従い新規に作成するようにしています。
ターゲット表名は省略すると、ソース表と同じスキーマで“TG+<ソース表名>”となりますが、ターゲット表もソース表と同じ名前になるようにここでは明示指定しています。
一般的にはターゲット表も事前に作成していることが多いと思います。
その場合には、以下のようにTARGET NAMEの前にEXISTを指定します。
EXIST
TARGET NAME ・・・
ターゲット表を作成する表スペースは、レプリケーション・センターでは「新規の表スペース」とすると、自動的にCREATE TABLESPACEステートメントを生成してくれますが、ASNCLPでは既存の表スペース名を指定する必要があるため、ここでは表スペース名は指定せず、デフォルトの表スペースに作成されるようにしています。
その他様々なオプションが指定できますが、今回は明示指定はせずデフォルト設定を利用するようにします。
2.Qサブスクリプションの作成
作成したASNCLPスクリプト・ファイルcre.QREP_QSUB.clpin.txt
を実行します。
SET RUN SCRIPTの指定は、最初はLATER、エラーがなければNOWで再実行してください。
asnclp -f cre.QREP_QSUB.clpin.txt
2.Qサブスクリプションの作成ASNCLPコマンド SET RUN SCRIPT NOWでの実行例
====
CMD: ### Qレプリケーション用のASNCLPセッションであることを宣言
====
====
CMD: ASNCLP SESSION SET TO Q REPLICATION;
====
(中略)
====
CMD: ### Qサブスクリプションの作成
====
====
CMD: CREATE QSUB
====
====
CMD: USING REPLQMAP SAMPLE_ASN_TO_TARGETDB_ASN
====
====
CMD: (
====
====
CMD: SUBNAME EMPLOYEE0001
====
====
CMD: DB2ADMIN.EMPLOYEE
====
====
CMD: OPTIONS
====
====
CMD: TARGET NAME "DB2ADMIN"."EMPLOYEE"
====
====
CMD: ) ;
====
ASN1956I ASNCLP : アクション "CREATE Q SUBSCRIPTION" の SQL スクリプト・ファイルを生成しています。
ASN1955I ASNCLP : 次のファイルを使用しています。キャプチャー SQL スクリプトとして "cre.QCAP_QSUB.sql.txt"、コントロール SQL スクリプトとして "replctl.sql"、ターゲット SQL スクリプトとして "cre.QAPP_QSUB.sql.txt"、およびログ・ファイルとして "cre.QREP_QSUB.clpin.log.txt"。
--- ASNCLP Version 11.5 Build date 2022-09-22 21:41:24
<ClpInfo2Log:: Now running SQL...>
ASN1514I レプリケーション・アクションは、"2023年xx月xx日 (x曜日) 15時59分49秒 JST" に、"1" 個の成功、"0" 個のエラー、および "0" 個の警告を伴って終了しました。
<ClpInfo2Log:: Now running SQL...>
ASN1514I レプリケーション・アクションは、"2023年xx月xx日 (x曜日) 15時59分49秒 JST" に、"0" 個の成功、"0" 個のエラー、および "0" 個の警告を伴って終了しました。
<ClpInfo2Log:: The SQL command completed successfully.>
ASN1953I ASNCLP : コマンドが完了しました。
参考
レプリケーションのソース表として登録する場合、表の属性としてData Capture Changesが必要です。
これはレプリケーションに必要な情報を拡張してDb2のログに書くようにする設定です。
今回ソース表にしたEMPLOYEE表は、作成時にはData Capture Changesはついていませんでしたが、CREATE QSUBを行った際に、この属性がついていないソース表の場合は、ASNCLPが自動的に以下のSQL文を生成して実行してくれています。
興味のある方は、ASNCLPがQキャプチャー側用に生成したcre.QCAP_QSUB.sql.txt
の内容を確認してみてください。
※ASNCLPが生成するSQLファイルは追記モードです。上書きではありません。そのため新しい情報はファイルの最後の方から確認してください。
ALTER TABLE DB2ADMIN.EMPLOYEE
DATA CAPTURE CHANGES;
このALTERは表の属性を変更するため、Db2のカタログを更新します。
実際に本番で使用されている表の場合には、その表に対する更新がない、あるいは少ない時間帯に実行することをお勧めします。
今回のシナリオでは、ASNCLPを実行することによって生成されたSQL文も実行する方法を使っていますが、SET SCRIPT LATER でSQL文(ファイル)だけを生成し、そのSQL文をあとで個別に実行して制御表に登録することもできます。
実際の開発時には、そのような方法を取られる事が多いです。
これで、準備は整いました。ではレプリケーションを開始してみましょう。
次のステップ モジュール 3 Q レプリケーションの開始
→ Qレプリケーション・チュートリアル ASNCLP版(5)