🔰 はじめに
近年のゲーム開発では Unreal Engine の利用が増えてきました。
それに伴い、Python をメイン言語としているテクニカルアーティストでも、C/C++ のコードを「見る」「少し触る」といった機会が増えてきています。
一方で、
- Python は書けるけど C/C++ はよく分からない
- 中身を理解しないまま、なんとなく触っている
- 難しそうで後回しにしている
という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな Python 経験者のテクニカルアーティスト や、同じように Python は書けるけど C/C++ に興味があるプログラマー 向けに、「C/C++ を触るうえで知っておくと役に立つ考え方や基礎知識」をまとめています。
🤔 Python と C/C++ のざっくりとした違い
書いたプログラムコードの違いはさておき、まずは言語への向き合い方そのものが違います。
例えば「画像を読み込む」プログラムを実装する場合を考えてみます。
- Python
「画像を読み込んで」と指示すれば、内部で必要な処理を全部やってくれる - C/C++
「読み込む場所(メモリ)を用意し、そこにどれだけ(バイト数)読み込むか」を、自分で細かく考え、指示する必要がある
これだけを見ると、「C/C++ は面倒だから、Python でいいじゃん!」と思うのも自然です。
ですが、「C/C++ には、面倒と引き換えに得られるものがある」からこそ、今でも多くの現場で利用されているわけです。
C/C++ は「実行速度が速い」とよく言われますが、それに加えて「Python では普段意識しないような内部処理まで、自分でコントロールできる」という大きな特徴があります。
Python は多くの処理を自動でやってくれる反面、見方を変えると常にフルセット処理しているとも言えます。
一方、C/C++ は面倒ですが、その分、
- 必要な部分だけを読み込む
- メモリ使用量を事前に把握する
- データの並びを自分で決める
- 処理にかかる時間を予測する
といったことが可能になります。
この「無駄を省き、必要なことだけを正確にできる」点が、C/C++ の速い理由の一つでもあります。
🔄 C/C++ プログラムが動くまでの流れ
Python では、ファイルを書いて実行すればそのまま動きます。
一方、C/C++ では少し手順が増えます。
大まかな流れは次の通りです。
- コーディング(ソースコードを書く)
- ビルド(コンパイル・リンク)
- 実行(生成された実行ファイルを動かす)
この流れは、最初は少し面倒に感じるかもしれません。
ですが、この仕組みを理解すると「なぜ C/C++ は速く、自由度が高いのか」が見えてきます。
🛠️ なぜ「ビルド」という工程が必要なのか
Python は、実行時にコードを解釈(インタプリタ)して動きます。
そのため、
- ソースコード = 実行するもの
- 実行環境(Python本体)が毎回コードを理解しながら動く
という仕組みになっています。
一方 C/C++ では、
- ソースコードは 人間が読むためのもの
- 実行時には CPU が直接理解できる形 に変換される
という考え方を取っています。
ビルドとは、
「人間向けのコード(C/C++)を、CPU がそのまま実行できる形に変換する」
工程です。
この変換を 事前に 行っておくことで、
- 実行時に余計な解釈処理が不要
- CPU が最短ルートで処理できる
という状態を作れます。
これが C/C++ の高速さの土台になっています。
🔍 「画像を読み込む」処理を流れで見てみる
ここで、再び「画像を読み込む」処理を例に考えてみます。
👉 Python の場合(イメージ)
Python では、
- ファイルを開く
- 必要なサイズを確保する
- データを読み込む
- 形式を解釈する
といった処理を、ライブラリが内部でまとめてやってくれます。
プログラマーは、
「画像を読み込む」という やりたいこと だけを書けば OK です。
👉 C/C++ の場合(イメージ)
一方 C/C++ では、より低いレイヤーから考えます。
例えば BMP 画像を読む場合、
- ファイルを開く
- ヘッダ分のサイズを把握する
- ピクセルデータのサイズを計算する
- そのサイズ分のメモリを確保する
- バイト単位でデータを読み込む
といった流れを、プログラマー自身が組み立てます。
ここで重要なのは、
「どのデータが、どの順番で、どこに配置されるか」
を常に意識している点です。
📐 C/C++ では「メモリレイアウト」を考えながら書く
C/C++ のプログラムでは、
- このデータは何バイトか
- どの順番で並んでいるか
- どこからどこまでが同じ意味のデータか
といった メモリ上の配置(メモリレイアウト) を念頭に置いて実装します。
BMP の場合も、
- ヘッダ構造体
- ピクセルデータ配列
- 行ごとのパディング
といったものが、すべて「バイトの並び」として扱われます。
Python では普段意識しないこの感覚が、C/C++ では「当たり前」になります。
🎯 なぜそこまで考える必要があるのか
この考え方があるからこそ、
- 必要な部分だけを読み込む
- 無駄なメモリ確保をしない
- データ構造をそのままファイルに書き出す
といったことが可能になります。
例えば、BMP を 24bit → 16bit に変換する場合も、
- どのビットを捨てるか
- どの順番で詰めるか
- 1ピクセルが何バイトになるか
を明確に意識しながら実装できます。
✅ まとめ
Python と C/C++ は、単に文法が違うだけではなく、プログラムへの向き合い方そのものが違う言語 です。
Python は「やりたいこと」を書けば、内部の処理はライブラリやランタイムが肩代わりしてくれます。
一方 C/C++ では、
- メモリをどこに確保するのか
- どれだけのデータを扱うのか
- データがどんな並びで存在しているのか
といったことを、プログラマー自身が考え、指示します。
最初は面倒に感じますが、この「自分で考えて決める」感覚こそが C/C++ の速さ・自由度・現場での強さにつながっています。
ゲーム開発やツール開発では、「中で何が起きているか分かっているかどうか」が、トラブル対応や最適化のスピードに直結します。
また、C/C++ に慣れていれば、Python を使うときにも「ライブラリ内部でどんな処理が行われているのか」を想像しながら扱えるようになります。
そういう意味でも、C/C++ を学んでおく価値は十分にあると言えるでしょう。