― 脳の衰えを補完し、経験が生かされ続ける未来 ―
はじめに
エンジニアという職業には、かつて「スピードがすべて」「新しい技術を覚え続けなければいけない」という空気(というか事実)がありました。
(いわゆる35歳定年説に繋がる訳ですが、これはマネジメント側にまわる意味もあるので少し意味合いが違うのか…ここではちょっとこの辺の話は置いときます。)
しかし、長く現場で働いていると、こう感じることがあります。
頭の回転は昔より少し遅くなったかもしれない。でも判断や設計の正確さは、むしろ今のほうが高い。
歳を重ねることで得られる力は確かに存在し、エンジニアの価値は単なる実装速度では測れないという実感が積み上がっていきます。
そして今、AIという技術が 弱くなる部分を補い、強い部分を引き立てる 形で現れました。
これが、「エンジニア寿命が確実に伸びていく」理由かなと最近すごく思います。
この記事は、実際に身近に60代でも変わらず活躍しているエンジニアさん達がいて、AI活用の仕方も長年進化するツールを扱ってきたからこその適応力の速さを目の当たりにすることも多々あって、それについて考えてみようと思ったわけです。完全な個人的見解です。
1. 年齢とともに失われるもの、失われないもの
年齢を重ねることで、変化していく能力があります。
少しずつ落ちていく部分
- 反射的な記憶力
- 新しい情報を吸収する速さ
- 情報を"瞬間的に"保持する力
こうした能力は、日々の仕事に疲労を生みやすい領域でもあります。
しかし、一方で…
時間とともに強まる部分
- システムや構造の読み解き
- リスク判断
- トラブルの兆候を察する感覚
- 設計の勘所
- "何が危ないか"を直観的に見分ける力
これらの多くは、年齢に伴う経験の積み重ねによって強くなる力です。
エンジニアは単なる暗記ではなく、総合的な理解と判断 が問われる職業です。その意味で、"落ちる能力"と"伸び続ける能力"が共存するのは自然なことです。
2. AIが補完するのは「老化する部分」そのもの
AIは、年齢によって負荷が上がりやすい領域を肩代わりできます。
| タスク | AIによる補完 |
|---|---|
| 記憶の検索 | AIが即答 |
| APIや文法の確認 | AIが正確に補完 |
| 機械的なコード記述 | AIが生成 |
| 面倒な調査 | AIが要点にまとめてくれる |
| タスクの抜け漏れ | AIが自動検出 |
これらはすべて、"忘れやすくなる部分"や"疲れやすい部分"を大幅に削減してくれます。
つまり、
弱くなる領域をAIが丸ごと引き受けてくれる。その分、人間は経験に基づく判断に集中できる。
という構造が成立します。
年齢による負荷がそのままキャリアの障壁になっていた時代とは、明確に変わり始めています。
3. 逆に、AIでは絶対に置き換えにくい「経験の領域」
AIが万能ではない理由は明確です。経験が必要な領域は、今も人間のほうが圧倒的に強いからです。
人間だけが持つ経験領域
- 過去の事故対応で得た知見
- 不具合の"匂い"を察する感覚(刑事の勘みたいな)
- チームや顧客の癖を理解した上での判断
- "やってはいけない設計"の直観
- プロジェクト崩壊パターンの察知
こうした能力は、時間をかけてしか身につかない"身体知" です。
AIは情報を提示することはできますが、この「文脈に基づく判断」まで肩代わりすることはできません。
つまり、経験領域はAI時代にますます価値が上がると思います。
4. AIが来て初めて「ベテランが本気を出せる」構造
AIによって、エンジニアリングの評価基準が変わりつつありるようです。
評価軸の変化
| Before(従来) | After(AI時代) |
|---|---|
| コードの量 | 方向性を決める力 |
| 大量の知識 | 何が本質かを見抜く力 |
| すばやい実装 | 設計の質 |
つまり、
作業の時代から、判断の時代へ。
となりつつあります。
AIは"知識の全部入りの後輩"のような存在。大量の作業を引き受け、人間は指揮者の役割に専念できる。
その結果、
ベテランが再び最前線で活躍できる土壌が整う
という、歴史的な転換点を迎えているのかもしれない。
5. 「脳の衰え × AI補完」で生まれる新しいエンジニア寿命
ここまでをまとめると、
役割分担の明確化
- 衰える部分 → AIが補完
- 落ちない/強まる部分 → 経験が支える
| 能力 | 担当 |
|---|---|
| 即時記憶・処理速度 | AI側へ移動 |
| 判断力・経験 | 人間側が担い続ける |
| 理解力・設計力 | AIが材料を揃えることでさらに強化される |
結果として、
エンジニア寿命は10〜20年単位で伸びる可能性がある
という、これまでとは違う未来が見えてきました。
6. 結論:AIは"経験"の価値を最大化する
まとめてみます。
- 人間の老化は自然なこと
- しかしAIは、その老化部分を肩代わりできる
- 経験によって培われた判断力は、年齢とともに価値を増す
- AI時代は、むしろ経験の深さが活きる
- そしてキャリア後半が"黄金期"になりうる
だからこそ言えます。
AIは仕事を奪う技術ではない。
エンジニアとして生きる時間を延ばす技術だ。
これが、最近の年上のエンジニアさんたちを見ていて思ったことです。
これからエンジニアになるみなさんも、カタチは変えても色んなことを試して学んで失敗して…それはすべてAIによってエンジニア寿命の延長という形で報われる時代になりそうです。
AI登場によって、エンジニアのキャリア構造は静かに、しかし確実に変わり始めたみたいです。
※考えを書き殴りました…あとで少し修正するかもです。(誤字ありそう)