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この記事は、デジタルアーカイブと技術 - rjchiba Day-1の記事です。

本連載では、デジタルアーカイブを「技術で支えられる社会基盤」と捉え、その背景にある歴史・制度・技術を段階的に説明します。

「デジタルアーカイブ」が意味するもの

「デジタルアーカイブ」は、英語で"digital archive"と書かれるように、「デジタル」と「アーカイブ」を組み合わせた単語です。
それぞれの意味を引いてみると

「digital」とは、デジタル技術やデジタルデータに関連することを指す英単語である。日本語では「デジタル」と表記されることが一般的である。デジタル技術は、情報を二進数の0と1で表現し、コンピュータや電子機器で処理する技術のことを指す。
実用日本語表現辞典

アーカイブとは、情報やデータを整理し、保存・保管することを指す。主に、文書や電子メール、ウェブページ、画像、音声、動画などのデジタルデータや、紙媒体の書類、書籍、写真などのアナログデータを対象とする。アーカイブの目的は、情報の整理、検索性の向上、長期保存、バックアップ、法的要件の満たし、歴史的価値の保持などである。
実用日本語表現辞典

と書かれています。
つまりデジタルアーカイブとは「デジタル化された情報を、保存・保管すること」に相当します。

私たちが日々スマートフォンで撮影する写真や画像、メッセージアプリでのやり取りなども、意図的に保存・保管すればそれは「デジタルアーカイブ」に相当します。

デジタルアーカイブの意義

デジタルアーカイブの「デジタル」は情報の保存・保管形態を表しており、さまざまな情報がデジタル化された現代に特有の概念ということができます。
では「アーカイブ」はどうでしょうか。

「アーカイブ」という言葉の語源を辿ってみると、古代ギリシアの「アルケイオン(arkheîon)」に行き着きます。
これは古代ギリシアにおいて市民を支配する法を策定していた上級政務執行官「アルコン」の住居を指す言葉です。
アルコンは政治・行政における記録文書を収集・保管することによって、前例に則った政治・行政の執行を行いました。
政を前例に則った法によって執行し、その法をアルケイオンに保存・管理すること。これが「アーカイブ」という行為の始まりにあたります。

日本においてデジタルアーカイブを法律上はじめて位置付けたのは「公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)」(いわゆる公文書管理法)です。
これに先立って開催された「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」では、「1. 基本認識」中の「公文書の意義」において、公文書管理(狭義のアーカイブ)が民主主義の根幹を支える基本的インフラであると言及されています。

民主主義の根幹は、 国民が正確な情報に自由にアクセスし、 それに基づき正確な判断を行い、 主権を行使することにある。 国の活動や歴史的事実の正確な記録である 「公文書」 は、 この根幹を支える基本的インフラであり、 過去・歴史から教訓を学ぶとともに、 未来に生きる国民に対する説明責任を果たすために必要不可欠な国民の貴重な共有財産である。

こうした公文書を十全に管理・保存し、 後世に伝えることは、 過去・現在・未来をつなぐ国の重要な責務である。 これにより、 後世における歴史検証や学術研究等に役立てるとともに、 国民のアイデンティティ意識を高め、 独自の文化を育むことにもなる。この意味で、公文書は「知恵の宝庫」であり、国民の知的資源でもある。

一方、 公文書の管理を適正かつ効率的に行うことは、 国が意思決定を適正かつ円滑に行うためにも、 また、 証拠的記録に基づいた施策 (EvidenceBased Policy) が強く求められている今日、 国の説明責任を適切に果たすためにも必要不可欠であり、 公文書を、 作成⇒保存⇒移管⇒利用の全段階を通じて統一的に管理していくことが大きな課題となっている。

このような公文書の意義にかんがみ、 国民の期待に応え得る公文書管理システムへの道筋を示すことが、当会議に課された使命である。

デジタル化の進展により公文書に限らずさまざまな情報が保存・保管できるようになった現代ですが、根本的な部分では古代ギリシアのアルケイオンに通ずる考え方が流れているのがわかります。

現代においては「(デジタル)アーカイブ」の対象は公文書に限定されず、その担い手も美術館・博物館から一般市民まで拡大しています。
その意義は、公文書管理やアルケイオンと同様に、記録を残す人々にとって「過去・歴史から教訓を学」び「説明責任を果たすため」のものと言えるでしょう。

デジタルアーカイブを支える技術

アーカイブという営みは紀元前から続くものであり、日本においては平安時代の「枕草子」などの随筆、鎌倉時代の「御成敗式目」なども、現代ではアーカイブされた資料にあたります。
アーカイブが「デジタル」という概念と結びつくようになったのは直近100年ほど。この短い期間でデジタルはアナログを凌駕し続けてきましたが、デジタルアーカイブの文脈においてはそうとも言い切れません。特に、アーカイブに求められる「長期保存」をデジタル技術で実現するのは非常に困難です。
デジタルの力がアーカイブの営みに与えるポジティブなインパクトに加えて、デジタルアーカイブの難しさについても本アドベントカレンダー中でも1枠をとって言及したいと思います。

本稿ではいくつかのキーワードを挙げて終わりにしたいと思います。それでは。

キーワード

  • マイグレーション:媒体やフォーマットを更新し続けてデジタル情報を「延命」する技術的プロセス。
  • OAIS参照モデル:デジタルデータの長期保存を実現するために策定された国際標準。火星探査で収集されたデジタルデータが破損・一部解読できなくなったNASAの事例を受けて策定された。
  • DPC(Digital Preservation Coalition):デジタルデータの長期保存、特にファイル形式の寿命に関する活動を行っているコミュニティ。

参考文献

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