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エージェントのWeb取得、ツール次第でトークンが5000倍違った話

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Last updated at Posted at 2026-07-10

エージェントのWeb取得、ツール次第でトークンが5000倍違った話

TL;DR

  • コーディングエージェント用のWeb取得ツール5つ(自作の amenbo / MCP公式 fetch / Jina Reader / Playwright MCP / 話題の PixelRAG(pixelshot))を、日本語の実URL 7本(技術記事・Wikipedia・Shift_JISサイト・官公庁・PDF・CSV・ボット遮断サイト)で比較した
  • 3.9MBのCSVに対し、Jina Readerは459万トークンを返した(コンテキスト即死)。amenboはヘッダ行プレビュー+取得手段の提示で909トークン。タイトルの5000倍はここ
  • Shift_JISの青空文庫(1.2MB)を、振り仮名を除いた本文として現実的なトークン量でテキスト化できたのはamenbo(7,992)。Jina Readerも文字化けはしないが振り仮名込み329,380トークンを一括で返し、Playwright MCPは同ページに45万トークンのスナップショットを生成した
  • 「ページをスクショで読む」PixelRAG系のアプローチは、単一ページのライブ閲覧ではMarkdown比2.4〜33倍のトークンを消費し、Wikipediaでは寄付バナーが1枚目を占領した
  • 比較調査そのものもamenboで行い、記事10本・約57,000トークン分の本文を約1/10のトークンで読んだ

3.9MBのCSVを渡したときに各ツールが返すトークン数の比較。amenbo 909に対しJina Readerは4,593,027で約5,000倍

計測手順は記事内に、ハーネスと生ログはリポジトリの bench/ にあります。

この記事は何

amenbo という自作MCPサーバーの性能を、類似ツール4つと同一URLセットの実測で比較した記録です。

amenboは「日本語Webを、収集先に負荷をかけず・少ないトークンで読む」ことに全振りしたMCPサーバーです。作った動機は単純で、コーディングエージェントに日本語サイトを調べさせると、

  • Shift_JISのページが文字化けする
  • ナビ・ランキング枠・広告ごと全文が流し込まれてコンテキストが溶ける
  • PDFやCSVのURLを渡すと生バイトが返ってくるか、エラーで止まる

という事故が頻発したからです。ただ「日本語に強い」と自称するだけなら誰でもできるので、実URLで測って比べることにしました。

比較対象と選定理由

ツール 形態 選定理由
amenbo MCP (stdio) 本記事の主役。二段フェッチ+CJK特化抽出
mcp-server-fetch MCP (uvx) MCP公式リファレンス実装。デファクトの基準線
Jina Reader (r.jina.ai) HTTP API URL→Markdown系で最も普及。キー不要で再現しやすい
Playwright MCP MCP (npx) ブラウザレンダリング系の代表
PixelRAG の pixelshot CLI 2026年上半期の話題株。「HTML解析をやめて全部スクショで読む」思想

Firecrawl MCPはAPIキー必須・有料クレジット制で読者が再現しにくいため見送りました(クラウド系の代表としてはJinaで代替)。

PixelRAGについての注記

PixelRAG(Berkeley SkyLab/BAIR発)は正確には「Web取得ツール」ではなく、事前レンダリングした画面画像に対する視覚検索(RAG)システムです。Wikipedia 828万記事をスクショ化してインデックス済みで、その検索精度でテキストRAGを上回ったと報告しています。ライブのWeb取得であるamenboとは主戦場が違います。

ただしPixelRAGには pixelbrowse というClaude Code用プラグインが同梱されており、これは「HTMLを取得する代わりに pixelshot CLIでページをスクショしてエージェントに読ませる」ライブ閲覧機能です。ここはamenboの fetch と正面から交差するので、本記事では pixelshot を比較対象にしています。「検索基盤としてのPixelRAG」と「収集ツールとしてのamenbo」は併用できる関係で、対立するのは常時ピクセル閲覧 vs Markdown優先+品質低下時のみピクセルという設計思想の部分です。

検証環境と計測方法

  • macOS (Apple Silicon) / Node.js v26 / 2026-07-10 実施
  • 各ツールをコールド状態(キャッシュなし)で起動し、同一URLに1回ずつアクセス
  • MCP系3ツールは dist/server.js / uvx mcp-server-fetch / npx @playwright/mcp@latestJSON-RPC (stdio) で直接叩くハーネスで統一実行
  • テキストのトークン数は同一の推定器(CJK文字種係数つき)で統一計測。画像は Claude の視覚トークン概算 width × height ÷ 750 で換算
  • Playwright MCPはスナップショットをファイル参照で返すため、参照先 .yml の実体トークンを計上

MCPサーバーをスクリプトから直接叩く部分はこれだけです(全ツール共通):

// newline区切りJSON-RPCで initialize → tools/call するだけ
const child = spawn("node", ["dist/server.js"], { env: { AMENBO_CACHE_DIR: tmpDir } });
child.stdin.write(JSON.stringify({ jsonrpc: "2.0", id: 1, method: "initialize", params: {
  protocolVersion: "2025-06-18", capabilities: {}, clientInfo: { name: "bench", version: "0" },
}}) + "\n");
child.stdin.write(JSON.stringify({ jsonrpc: "2.0", method: "notifications/initialized", params: {} }) + "\n");
child.stdin.write(JSON.stringify({ jsonrpc: "2.0", id: 2, method: "tools/call", params: {
  name: "fetch", arguments: { url },
}}) + "\n");

URLセット(日本語Webの「事故りやすい」7類型)

ID URL 何を試すか
zenn zenn.dev の人気技術記事 表24行+コード5ブロックの再現
wiki ja.wikipedia.org 都道府県の人口一覧 表だらけのページ
aozora 青空文庫『吾輩は猫である』(789_14547.html) Shift_JIS・1.2MBの長文
gov 厚労省 介護サービス情報公表システム オープンデータ 官公庁HTML・CSV/zipリンク105件
pdf 厚労省の日本語PDF 非HTML(1)
csv 同オープンデータのCSV (3.9MB) 非HTML(2)
err 素のHTTPクライアントを接続拒否するサイト エラー時の挙動

結果: トークン消費

各ツールの応答をエージェントが読んだ場合の実測トークンです。

URL amenbo mcp-server-fetch Jina Reader Playwright MCP pixelshot
zenn 4,679 2,627 ⚠️打切り 4,216 9,049 11,462 🖼️10枚
wiki 5,337 (p1/4) 2,078 ⚠️打切り 38,014 55,970 1,178 ⚠️不完全
aozora 7,992 (p1/25) 1,400 ❌文字化け 329,380 ⚠️全文一括 453,263 263,819 🖼️221枚
gov 1,774 ✅リンク誘導つき 519 26,983 25,382 13,355 🖼️12枚
pdf 810 1,329 ❌生バイト 802 ❌取得不能 ❌875×1px画像
csv 909 ✅ハンドオフ 2,669 ⚠️生ダンプ断片 4,593,027 ❌16MBをDLのみ 1,186 ⚠️先頭画面のみ

注記(各ツールの名誉のために):

  • mcp-server-fetch の「打切り」は仕様(既定 max_length=5000 文字、start_index で続きを取れる)。ただし全文を読むにはその分リクエストとトークンが積み上がる
  • Playwright MCP は「操作の自動化」が本業で、読み取り特化ではない。それでも「ページを読む」用途に使われがちなので載せた
  • pixelshot の wiki 1,178tok は一見優秀だが、後述の通り本文の表が1行も入っていない
  • Jina の zenn 4,216tok は amenbo(4,679)より少ない。単純なMarkdown化の質は高い

長文でなにが起きるか

差が最も出たのは青空文庫の長編小説(1.2MB HTML)です。

  • amenbo: 7,992トークン(テキスト予算に基づき25ページに自動分割、page: 2 で続きを取得)
  • Playwright MCP: 453,263トークンのアクセシビリティツリー
  • pixelshot: 221枚のタイル画像 ≈ 263,819視覚トークン
  • mcp-server-fetch: 文字化けした1,400トークン(後述)
  • Jina Reader: 329,380トークン(全文を一括Markdown化・振り仮名込み・ページ分割なし)

1.2MBのShift_JIS長文HTMLを渡したときに各ツールが返すトークン数の比較。amenbo 7,992に対しPlaywright MCPは453,263

「1ページの上限が保証されている」ことは、エージェントの安定運用ではトークン総量そのものより効きます。1回の fetch が45万トークンを返す可能性があるツールは、コンテキスト管理の前提が立ちません。

結果: 本文抽出品質

zenn記事(表24行・コード5ブロック)の再現数:

表の行数 コードブロック
元記事 24 5
amenbo 24 5
Jina Reader 24 5
mcp-server-fetch 14 ⚠️打切りのため 4
Playwright MCP 0(a11yツリーのため表構造は別形式) 0

抽出品質そのものはJinaも優秀です。amenboの取り分は「同品質を保ちながら、ナビ・ランキング枠・同意バナーを落とし、ページ予算を守る」ところにあります。Wikipediaの比較が分かりやすく、同一ページに対して:

  • Jina: 38,014トークン(脚注・出典・言語リンクまで全部入り)
  • amenbo: 5,337トークン × 4ページ(wikipedia-jaアダプタで本文と表を抽出、必要なら次ページ)

もうひとつ、官公庁ページ(厚労省のオープンデータページ)ではamenboは本文1,774トークンに加えて、こういう案内を自動で付けます:

data_sources:
- 110_訪問介護[15.4MB] — https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/jigyosho_110.csv
  (ほか104件、links filter:'*.csv' で列挙可)
- 110_訪問介護 — https://.../jigyosho_110_all_....zip (ほか279件)

「本文よりリンク先のデータが本体」というページは官公庁に多く、エージェントが次の一手(CSVのDL・集計)へ進むための足場になります。

pixelshotのWikipediaで起きたこと

pixelshot(875px幅でレンダリングして固定高さタイルに分割)にWikipediaを渡したところ、返ってきた1枚目のタイルは画面の大半がWikipediaの寄付バナーでした。さらにキャプチャがページ高さ1,009pxで完了扱いになり、肝心の人口一覧表は1行も画像に入っていませんでした

pixelshotが返したWikipediaの1枚目のタイル。画面の大半を寄付バナーが占め、記事タイトルが最下部に見えるだけで人口一覧表は含まれていない
pixelshotが返した唯一のタイル(無加工)。このタイルでキャプチャは完了扱いになる。

これはpixelshotの実装バグというより、「見たままを切り取る」アプローチの構造的な弱点です。人間向けの画面には、本文以外の視覚要素(バナー・追従ヘッダ・クッキー同意)が大量に混ざります。PixelRAGの論文自身も、固定高さで表や段落が分断される「visual chunking」を未解決課題として挙げています。テキスト抽出には20年分の資産(Readability系)がありますが、視覚チャンキングはまだこれからです。

結果: CJK対応

Shift_JISの青空文庫で、各ツールの1行目を並べます。

amenbo:            吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。
mcp-server-fetch:  #### �� | �@��y�i�킪�͂��j�͔L�ł���B���O�͂܂������B
Jina Reader:       吾輩(わがはい)は猫である。名前はまだ無い。 ← 文字化けはしないが振り仮名がそのまま残る

mcp-server-fetchはUTF-8前提のため、Shift_JIS/EUC-JP/ISO-2022-JPが現役の日本語Webでは文字化けします。Jina Readerは文字コード自体は正しく解釈しますが、<ruby> の振り仮名をそのまま残す(「吾輩(わがはい)」)ため本文が二重化して読みにくく、青空文庫の長編では前述の329,380トークンを一括で返します。ブラウザ系(Playwright MCP / pixelshot)は文字化けこそしないものの、45万/26万トークンを支払うことになります。amenboはバイト列から文字コードを自動判別し、<ruby> の振り仮名除去・全角空白正規化まで行った上で、テキスト予算に基づきページ分割してMarkdown化します。

結果: 非HTML対応

日本の官公庁・自治体の情報はPDFとCSVでできています(体感)。URLを渡したときの挙動:

PDF CSV (3.9MB)
amenbo ✅テキスト抽出 810tok ✅ヘッダ+プレビュー+誘導 909tok
mcp-server-fetch %PDF-1.7 %����... 生バイト ⚠️先頭5000文字の生ダンプ
Jina Reader ✅テキスト抽出 802tok 4,593,027トークンの全文
Playwright MCP ❌スナップショット不能 ❌16MBをディスクにDLして終了
pixelshot ❌875×1pxの壊れ画像 ⚠️先頭画面のスクショのみ

amenboのCSV応答はこうなっています(「行き止まりを作らない」ハンドオフ設計):

content_type: text/csv
size: 3909630
mode_used: handoff

都道府県コード又は市町村コード,No,都道府県名,市区町村名,事業所名,...
011011,0170101950,北海道,札幌市中央区,訪問介護事業所 心,...
(先頭数行のプレビュー)

LLMに3.9MBのCSVを「読ませる」ことに意味はありません。列構造が分かるプレビューを返し、集計はエージェントに curl + スクリプトでやらせる方が、正確で圧倒的に安い。この割り切りが効いて、Jinaとの差は約5,000倍になりました。

結果: エラー時ハンドオフ

素のHTTPクライアントを接続拒否するサイトでは:

  • amenbo: 接続に失敗しました(接続拒否/リセット) — サイト側がボットアクセスを遮断している可能性があります。mode: screenshot(ブラウザ経由)で再試行すると通る場合があります — エラーを分類し、次の一手を提示
  • mcp-server-fetch: Failed to fetch robots.txt due to a connection issue — 実際に落ちたのは本体アクセスなのに、robots.txtのエラーとして報告され、原因調査をミスリードする

なおこのサイトには、ブラウザ実体を持つPlaywright MCPとpixelshotは普通にアクセスできました。「素のHTTPは蹴るがブラウザは通す」サイトに対して、ブラウザという実弾を持っていること自体が強いのは事実です。amenboもブラウザ昇格を持ち、同梱ChromiumのHTTP/2実装と相性の悪いCDNに当たった場合はシステムのChromeで1回だけ再試行します(Chromeが無い環境では分類済みエラーに戻ります)。それでもボット対策のフィンガープリント検知に遮断される場合はあり、amenboはanti-bot回避を実装しない方針なので、そこは「行ける手段の提示」で正直に止まります。

ドッグフーディング: この記事の調査もamenboでやった

比較記事の作法を知るために、Qiita/Zennの人気技術記事10本(合計約57,000トークン相当)を読みましたが、これもamenboで行いました。

  1. mode: outline で見出しツリー+各節のトークン数だけ取得(1記事あたり数百トークン)
  2. 読む価値のある節だけ section: "s12" 指定でピンポイント取得

たとえば「before/after表の見せ方」を調べるために、ある記事の該当節だけを279トークンで取得しています。全文を流し込むのに比べ、約1/10のトークンで10本の構成分析が終わりました。エージェントに「調べ物」をさせるとき、この段階開示があるかないかでコンテキストの寿命が大きく変わります。

正直な総括(劣位も含む)

amenbo 一言
トークン消費 上限保証+段階開示。長文・CSVで桁違い
本文抽出品質 Jinaと同等品質+バナー除去。圧勝ではない
CJK対応 文字コード自動判別+振り仮名除去+ページ分割。Jinaも文字化けはしないが振り仮名込みで全文一括、mcp-fetchは文字化け
非HTML対応 PDF・CSV両対応は5ツール中amenboのみ
エラー時ハンドオフ 分類+次の一手の提示は唯一
JS必須ページの突破力 専用ブラウザバイナリを持つPlaywright MCP等が上。amenboはHTTP/2非互換時のシステムChromeフォールバックで追随するが、anti-bot回避はしない方針
検索・インデックス PixelRAG本体の領分。amenboは検索を持たない(併用推奨)
スピード 礼儀(同一ドメイン直列・1req/秒)を優先。爆速クロールには不向き(設計思想)

まとめ

  • 「日本語Webをエージェントに読ませる」文脈では、文字コード・非HTML・トークン予算の3点で汎用ツールとの差が実測で出た
  • PixelRAG系の常時ピクセル閲覧は、視覚情報の保持では独壇場だが、ライブ閲覧のコストはMarkdown比2.4〜33倍。「Markdownで済むページはMarkdown、ダメなときだけピクセル」という使い分けが現実的
  • エージェントの調べ物では、outline→section の段階開示のような「読む前に読む量を決められる」仕組みがコンテキストの寿命に直結する

amenboは npm install -g amenbo で入ります。リポジトリは github.com/Rererr/amenbo。ベンチのハーネスと生ログも公開しているので、追試・反例を歓迎します。

追記(2026-07-12 再計測)

現行版(v0.2.0)で同じハーネス(bench/)を実行し直した結果です。

  • 7URLのトークン数はほぼ2026-07-10と同一(amenbo・mcp-fetch・pixelshotは全一致、CSVの5,000倍差 amenbo 909 / Jina 4,593,027 もそのまま再現)。退行も水増しもありません。
  • 1点だけ変化: 青空文庫(Shift_JIS)に対する Jina Reader が、以前の 503 エラーから 329,380トークンで成功に変わりました。文字化けはしませんが振り仮名を残したまま全文を一括で返すため、本文の可読性とトークン量では依然 amenbo(7,992・振り仮名除去・25ページ分割)が有利です。上表・本文はこの結果を反映済みです。
  • 段階開示(outline)の効きを数値化しました。同じ7ページ(英語ページ2本を含む)で mode: outlinemarkdown75〜97% 少ないトークンでした(例: 都道府県一覧 5,337→659 で 87.7%減、青空文庫 7,992→408 で 94.9%減)。「読む前に読む量を決める」段階開示のコスト削減がそのまま出ています。

参考リンク

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