みなさん、こんにちは!
私たちRe:Qは、ガバメントクラウドの導入支援、そして専門性が求められる統合運用管理補助業務に注力しています。
私たちが現場で直面した課題や解決策、そして効率的な運用体制の作り方を、本ブログで連載形式でお届けすることに致しました。
ガバメントクラウド移行において、システムの「器」を決めること以上に重要なのが、その器へ至るネットワークの設計です。
行政システムには極めて高い機密性が求められるため、インターネット経由ではない閉域接続の理解が不可欠です。
本稿では、ネットワークの基礎から、具体的な接続構成例、設計時の落とし込みポイントを解説します。
1. ガバメントクラウドにおけるネットワークの基礎知識
クラウドネットワークと従来のオンプレミスネットワークの最大の違いは、「物理的な配線からの解放」と「ソフトウェアによる制御(SDN)」にあります。
- VPC(Virtual Private Cloud): クラウド上に展開する、論理的に隔離されたプライベートネットワーク空間です。オンプレミスでの「自前セグメント」に相当します。
- リージョンとアベイラビリティゾーン(AZ): 物理的なデータセンターの所在を意識する必要があります。ガバメントクラウドでは通常、東京や大阪のリージョンを利用し、冗長性を確保するために複数のAZにまたがる設計が標準となります。
- セキュリティグループとACL: 従来のファイアウォール(FW)に相当しますが、クラウドではインスタンス単位でより細かなアクセス制御が可能です。
2. オンプレミスとクラウドをどう繋ぐか
自治体庁舎(オンプレミス)からガバメントクラウドへ接続するには、主に以下の3つのルートを検討することになります。
① 専用線・閉域網接続(推奨)
「ガバメントクラウド接続サービス」を利用し、LGWAN(総合行政ネットワーク)経由、あるいは専用の閉域回線でクラウドへ接続します。インターネットと隔離されているためセキュリティが極めて高く、安定した帯域を確保できるのが特徴です。
② IPsec VPN接続
インターネット回線上に暗号化されたトンネルを作る接続方式です。専用線に比べて短期間・低コストで導入可能ですが、通信品質がインターネットの混雑状況に左右されるため、バックアップ回線としての利用が一般的です。
③ 統合ネットワーク(デジタル庁提供)
デジタル庁が整備する共通のネットワーク基盤を活用する方法です。各自治体が個別に回線を引き込む負担を軽減する狙いがありますが、既存の庁内LANとの整合性が重要になります。
3. AWSとの接続構成例:高信頼性を実現するアーキテクチャ
ここでは、ガバメントクラウドで最も採択率の高いAWSを例に、標準的な接続構成を見てみましょう。
構成のキーコンポーネント
- AWS Direct Connect (DX): 庁舎とAWSを専用線で結ぶ物理的な接点です。
- Direct Connect Gateway: 複数のリージョンや複数のVPCに対して、一つの接続から効率的にアクセスするためのハブとなります。
- AWS Transit Gateway: ネットワークの「交差点」です。庁舎、各業務VPC、共通基盤VPCなど、複雑に絡み合う通信を中央集権的に管理・ルーティングします。 ガバメントクラウドの標準構成でも、このTransit Gatewayによるハブ・アンド・スポーク型の構成が推奨されています。
4. ネットワーク設計における重要検討事項(チェックリスト)
実務において、当社が設計時に必ず確認する「落とし穴」になりやすいポイントをまとめました。
① IPアドレス設計の重複回避
オンプレミス側のプライベートIPアドレスと、クラウド側のVPCで利用するIPアドレスが重複しないよう、全庁的なアドレス空間の再設計が必要です。将来的な拡張も見据えた採番計画が重要です。
② 帯域サイジングとデータ転送量
リフト(移行)直後は、初期データの同期で膨大なトラフィックが発生します。また、運用開始後も「どの程度の職員が同時にアクセスするか」「大容量のバックアップデータをいつ転送するか」を見極め、回線帯域を決定する必要があります。
③ 冗長化とフェイルオーバーの検証
「回線が切れたら業務が止まる」ことは許されません。Direct Connectの2重化や、メイン回線切断時に自動でVPNへ切り替わる設定など、障害検知から切り替わりまでの挙動を事前にテストしておくことが不可欠です。
④ セキュリティポリシーの統一
オンプレミス側のFWとクラウド側のセキュリティグループで、ポリシーが二重管理になりがちです。どこで何を許可し、どこで拒否するかという「通信ポリシー一覧」を可視化しておくことが、運用後のトラブルを防ぎます。
5. まとめ:安定した「道」こそがDXの基盤
ネットワークは、システムが動き出せば「目に見えない存在」になりますが、その設計が不十分だと、レスポンスの低下や接続断といった目に見える深刻な問題を引き起こします。
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