こんにちは、2020年RPA アドベントカレンダー第1日目です。初日なので、この1年にどのようなニュースがあったかを振り返り、まとめてみました。7つのカテゴリーにまとめています。
1年前の振り返り記事は『2019年RPA業界この1年を振り返る~業界7大ニュース』と『2020年のRPAに必要なこと、3つの重要なキーワード』です。
こちらもどうぞ。
#1 新型コロナで激震~ペーパーレス化と自動化のニーズが急増~RPA市場が普及期に突入
2020年のトップニュースといえば、間違えなく新型コロナ (COVID-19)の大流行でしょう。新型コロナはさまざまな形で世界中の人々の生活や生き方に影響を与えました。そしてRPA業界でも激震が走りました。春の緊急事態宣言発令によりリモートワーク率が上がる中、従来からの紙/FAXと判子による業務が止まってしまう事態に陥る企業が続出しました。また、紙/FAXと判子業務のためにリモートワークができないという企業や官公庁・地方自治体等からの声も多く挙がりました。また、新型コロナで増えた突発的な業務に対応するために業務時間外に臨時対応をする組織も多くありました。
このような事態を乗り切るために、事業継続性/弾力性の観点から、業務自動化やペーパーレス化、脱ハンコが改めて見直されることになり、組織での導入が進む一方、各RPAベンダーからも様々な取り組みが発表されました。特にWinActor、UiPath、Automation Anywhereは日本における新型コロナ無償支援プログラムを立ち上げました。
加えて、ガートナーからは日本において「市場のRPAに対する現実的な理解が深まったことで、同テクノロジは幻滅期の底を打って本格的な普及を目指し始めています」というコメントが9月に出ています。
市場成長のスピードも、2019年からは大きく減速するものの、2020年、2021年、その後も10%を超える成長率を維持すると予測が出ました。
関連ニュース
- 2020/9/10: ガートナー、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」を発表
- 2020/9/30: ガートナー、世界におけるRPAソフトウェアの売上高が2021年には20億ドル近くに達する見通しを発表
- 2020/5/1: 【NTTデータ】地方公共団体向けにAI-OCRサービスとRPAソリューションの無償提供を開始
- 2020/5/19: 【WinActor】「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」に関わる給付金等申請~受付業務効率化支援のため、官公庁・地方公共団体様にはRPAツール"WinActor®"ライセンスをを無償提供
- 2020/6/4: 【UiPath】UiPath社が新型コロナウイルス感染症による助成金の申請自動化を支援
- 2020/4/16: 【Automation Anywhere】新型コロナ禍で苦境に立つ事業を支援するためにソフトウェアBotを無償で提供開始~無償で利用できるCommunity Edition向けに機能設定済Botを供給
- 2020/5/27: 【Automation Anywhere】オートメーション・エニウェア、自治体などによる給付金に関する事務処理の自動化を3カ月間無償で支援するプログラムを開始
- 2020/5/28: 【Automation Anywhere】オートメーション・エニウェア、 教育機関の遠隔授業で発生するICT関連管理の自動化を 3カ月間無償で支援するプログラムを開始
- 2020/10/27: 新型コロナウイルスが蔓延する今における、RPAの役割と課題
- 2020/11/16: コロナウイルスは、RPAにどんな影響を与えたのか?各社の事例を紹介
#2 大手ベンダーも参戦で大混戦へ!?~Power Automate Desktop登場やWDG Automationの買収
2019年秋には、マイクロソフトがMicrosoft Flowを「Power Automate」に改名し、RPA機能のプレビューを出したことで話題を集めました。2020年も、さらに5月にSoftmotive社のWinAutomationを買収し、9月にPower Automate Desktopとしてプレビューリリースしました。Office 365のライセンス体系の延長で購入ができるため、多くのOffice 365ユーザーを抱えるマイクロソフトにとってPower Automateも訴求がしやすく、今後ローエンドのRPAニーズを取り込んでいくことが予想されます。
IBMも7月にブラジルのRPAであるWDG Automation買収を発表しました。日本への製品投入は少し先になりそうですが、複数の大手ITベンダーがRPA市場に参入してきたことは注目に値します。Googleも2020年初頭に買収して、Business Application Platform上のノーコードアプリ開発プラットフォームとして位置付けたAppSheetを強化して、AppSheet Automationという機能をプレビューし始めました。これはいわゆるRPAというよりはiPaaSに分類されます。
また、国産RPAツールも新しいベンダーが立ち上がってきたり、RPAツールという枠にとどまらず、たとえばiPaaSであるDell Boomi、Anyflow、Workato、Zapierのようなツール、Web操作のためのSelenuimなどのツール、その他のノーコード/ローコードツールがさまざま立ち上がってきており、「市民開発者が業務の自動化を行う」ことを目的としたツールが乱立している感があります。今後、いくつかの分野で統廃合が行われたり、ツールの買収が行われたりと、整理される動きが出てくることも予想されます。
関連ニュース
- 2020/5/20: マイクロソフト、RPAプラットフォームのSoftomotive買収
- 2020/9/27: マイクロソフトがビジネスパーソンが使えるワークフロー自動化ツールPower Automate Desktopを発表
- 2020/7/8: IBMがWDG Automation買収により、AIを組み込んだ企業向けオートメーション機能を促進
- 2020/9/9: GoogleもRPAに参入か。ノーコードでプロセスオートメーションを実現する「AppSheet Automation」を含む「Business Application Platform」を発表
#3 主要RPAベンダーでハイパーオートメーションやデジタルアシスタント機能の実装が進む
ガートナーが11月に発表した『2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド』で、ハイパーオートメーションが引き続きトレンドに入りました。ハイパーオートメーションでは、自動化メカニズムの範囲や相互の関連を踏まえたうえで、自動化のあらゆる手順 (発見、分析、設計、自動化、測定、モニタリング、再評価) を考え、実装を行う必要があります。そこで、2020年は各RPAツールベンダーも、コアとなるRPA機能以外にも、自動化の前後のプロセスをサポートするための様々な機能群をリリースしています。この分野では、UiPathとAutomation Anywhereの2社が先行しており、自動化のあらゆる手順 (発見、分析、設計、自動化、測定、モニタリング、再評価) のほぼすべての機能を提供しています。特に、先進的な機能であるプロセス発見の部分では、UiPathは「Process Mining」「Task Mining」「Task Capture」という3つのツールを提供、Automation Anywhereも「Discovery Bot」というツールを提供しています。
また、2020年は人とロボットがチャットボットやウェブ、モバイルアプリなどの、人が比較的扱いやすいインターフェイスを通して協働で動く「デジタルアシスタント」の仕組みの実装が流行りました。WinActorには「WinActor Brain NaRuKami」が、UiPathには「UiPath Action Center」が、Automation Anywhereには「Automation Anywhere Robotic Interface」が、Blue Prismには「Blue Prism Interact」が登場しました。
関連ニュース
- 2020/11/12: ガートナー、2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表
- 2020/9/15: RPA「WinActor®」の拡張機能チャットサービス「WinActor Brain NaRuKami®」を販売開始
- 2020/2/27: 【UiPath】UiPath社、現場業務の「見える化」を実現するUiPath Explorer Expertを日本で提供開始
- 2020/5/27: 【UiPath】UiPath社、ハイパーオートメーションを自社クラウド上で展開
- 2020/9/15: 【WinActor】RPA「WinActor®」の拡張機能チャットサービス「WinActor Brain NaRuKami®」を販売開始
- 2020/7/29: 【UiPath】UiPath社、AIとRPAを組み合わせた新製品群でAIの民主化を加速
- 2020/10/20: 【Automation Anywhere】業務向けのデジタルアシスタント「AARI」を発売
- 2020/10/13: 【Blue Prism】Blue Prism、Blue Prism Interactを提供開始
#4 WinActor Ver.7.x が登場~合計5,600社に導入
2020年頭にWinActorがメジャーバージョン7に上がりました。Version 6まではNTT研究所が10年にわたって開発してきた資産を引き継いできたのを、フルリメイクしたものだということです。処理速度の大幅な高速化に加えてシナリオ編集画面が一新され、どことなくUiPathに似た雰囲気になりました。夏にはVersion 7.1が提供開始され、幅広い層に対応できるように、上級プログラマー向けシナリオエディタと専用言語「WinActor Scenario Script」が提供されました。いままでのWinActorの進化の中でも特に大きなマイルストンなのではないかと思われます。
また、導入社数も秋の段階で約5,600社、約700社のパートナーを通じた販売とサポートを行っているとのことです。
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- 2020/1/28: メジャーバージョンアップ版WinActor® の第一弾 Ver.7.0を販売開始~フルリメイクによる高速化とUI/UX改善で、カスタマーサクセスを実現!~
- 2020/8/24: RPAツール「WinActor®」の新バージョンVer.7.1.0を販売開始
#5 UiPathがクラウド型Orchestratorを提供!ライセンス体系を大幅変更
UiPathユーザーの間で話題になっているのが、5月に発表されたライセンス体系の大幅な変更です。クラウド版Orchestratorが提供開始になったのに伴い、クライアントアクセスライセンスとなり、ロボットライセンスに含まれて提供されるようになったため、Orchestratorを使う場合のライセンスコストや環境構築コストが下がった一方、ロボットライセンスについてはNode LockedおよびConcurrent Userのライセンスモデルが廃止され、Named Userのみとなりました。これによりデバイス固定、同時アクセス数を絞って利用していたユーザーのライセンスコストは上がることになります。旧ライセンス体系では、2021年3月まで追加・更新が可能であり、既存ユーザーも2021年中に新しいライセンス体系に移行する必要があります。
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#6 Blue Prismがクラウド版のオファリングを強化
Blue Prismもクラウド版のサービス充実を進めています。2019年に買収したThoughtonomyの製品をBlue Prism Cloudとしてリブランドし、運用管理コントロールセンター「Blue Prism Cloud Hub」、デジタルアシスタント/有人自動化「Blue Prism Cloud Interact」、ワークロード自動調整機能「Blue Prism Cloud IADA」などをリリースしました。日本でも秋から本格的に提供を開始しました。
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- 2020/1/16: 【Blue Prism】Blue Prismが新しいSaaSオファリングをリリース
- 2020/10/8: 【Blue Prism】Blue Prism、クラウドサービス Blue Prism Cloudの日本市場への本格提供を開始
#7 BizRobo!が中間規模のパッケージやクラウド版を追加
BizRobo! は2020年夏に新バージョン10.7.4を提供開始しつつ、いままで「mini」と「Basic」の2つで提供してきたパッケージ形態に中間規模の「Lite」「Lite+」の提供を開始しました。また、クラウド環境上ですぐにスタートできる「BizRobo! as a Service」(B!aaS)の形態も提供を開始しました。これにより、さらにより多くのユーザーがRPAに手が届くようになりそうです。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。今年も一年、様々なニュースがありました。特に新型コロナは誰にも予想できなかった100年に一度の世界的なパンデミックとなってしまいました。
一年前のRPA Advent Calendar 2019のまとめ記事『2020年のRPAに必要なこと、3つの重要なキーワード』を改めて見返してみると、去年寄稿していただいた皆様の考えている方向性が割と当たったのではないかと思います。今年もRPA Advent Calendar 2020 で様々な寄稿を楽しみにしています!