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AngularJSのCompileとLinkってなぁに?

Last updated at Posted at 2014-07-18

はじめに

AngularJSのDirectiveについては、カスタムディレクティブの作成方法含め、おおよそ理解していたつもりであったが、CompileとLinkについて、若干自信が無い部分があったので、勉強がてら少し厚めに書いてみた。

なお、公式の開発ガイドにも、Oreillyの書籍でも書かれているが、カスタムディレクティブを開発することがあっても、殆どのケースでは、Linkの処理のみを気にするだけでよいため、あんまりこのエントリは役には立ちません。

おさらい

AngularJSのDirectiveを理解する」にも書いているが、ざっくり言うと、Angularのディレクティブがテンプレートから実際のViewを描画する際は、Compile → Linkの2フェーズに分かれている。

  • Compile:ディテクティブのテンプレート(html文字列ではなく、DOMオブジェクト)から、Link関数を生成する.
  • Link:生成されたLink関数とディレクティブのScopeオブジェクトを紐付けて、View(HTML要素)を完成させる.

ディレクティブを作成する際、Compileフェーズを意識した記載方法として、↓のパターンがある.

myModule.directive('myDirective', function(){
  return {
    // templateやrestrict等は割愛.

    // Compile関数はLink関数を返却するように実装する.
    compile: function(tElement, tAttr){
      return function postLink(scope, element, attrs){
        // DOMとscopeの双方向バインディング処理.
      };
    }
  };
});

何で分けてんの?

https://docs.angularjs.org/guide/compiler#an-example-of-compile-versus-link- に、CompileとLinkの2フェーズに分割されている理由が書かれているので、ざっくり意訳。

ng-repeatの例

Hello {{user.name}}, you have these actions:

  • {{action.description}}
```

ngRepeatはジレンマを抱えている。

user.actionsコレクションに含まれている全てのactionオブジェクトに対して、<li>要素を複製しなくてはならない。これは、Viewの描画後にuser.actionsコレクションに対して、オブジェクトの追加/削除が発生することを考えると、少し複雑である. 描画後変更に耐えうるためには、複製の元となる(綺麗な状態の)<li>要素を保持しておく必要がある.
 (中略)
素朴な実装は、コピー元要素の<li>を複製して、<ul>へinsertし、{{action.description}}部分をコンパイルし、scopeの値の評価を行う方法である. しかし、この方法は非効率的である。複製した<li>要素の全てにおいて、<li>内要素をトラバースして、内包されるディレクティブを探索することとなる。この探索処理は、コンパイル全体を重たくする原因となる。

この問題を解決するため、コンパイルを2つのフェーズに分離する.

ディレクティブのコンパイル全体のうち、「scopeの値に依存する・依存しない」の違いがCompile/Linkの違いとも言えよう.

  • Compile:テンプレートのhtmlが読み込まれる際に1度だけ実行される
  • Link:user.actionsの要素数繰り返される. user.actionsにオブジェクトが追加された場合も実行される

これを考えると、カスタムディレクティブを作成する上で、compile関数の引数にはscopeは存在しないが、link関数の第1引数がscopeである点も得心がいくと思う。

また、開発ガイドや書籍で「殆どのケースではCompileとLinkを使い分ける必要はない」と書かれているのは、scopeに応じて、テンプレート内の要素が描画後に複製されるようなケースでない限り、Compile/Linkに分割した・しないが関係無いからである。

ngRepeat 以外で、CompileとLinkの意識が必要となるのは、思いつく範囲では、下記あたりか。

擬似的にコードで解説

折角なので、上記の「素朴な実装」版と「2フェーズ版」のrepeat風ディレクティブを書いてみた。

素朴な実装
angular.module('myApp').directive('myNaiveRepeat', ['myCompiler', function(myCompiler){
  var childTemplate = angular.element('<li>name:{{child.name}}, vendor:{{child.vendor}}</li>');
  return{
    scope:{
      myNaiveRepeat: '='
    },
    link: function(scope, element){

      //  描画関数.
      var rendering = function naiveRendering(collection){
        element.empty();
        collection.forEach(function(child){
          var cs = scope.$new();
          cs.child = child;
          //  ★子テンプレートをコピーし、コレクション内要素と結合.
          //  (myCompilerはディレクティブ探索とscope評価をする関数を仮定. 実際のangularにはそんなものない.)
          element.append(myCompiler(childTemplate.clone(), cs));
        });
      };

      // 初回描画
      rendering(scope.myNaiveRepeat);

      // コレクションに変更があれば、再描画する.
      scope.$watchCollection('myNaiveRepeat', function(newCollection){
        rendering(newCollection);
      });
    }
  };
}]);
2フェーズ版
angular.module('myApp').directive('myTwoPhaseRepeat', ['$compile', function($compile){
  var childTemplate = angular.element('<li>name:{{child.name}}, vendor:{{child.vendor}}</li>');
  return{
    scope:{
      myTwoPhaseRepeat: '='
    },
    compile: function(){
      // ☆テンプレートからリンク関数を作成しておく.
      var childLinkFunc = $compile(childTemplate);
      return function(scope, element){

        //  描画関数.
        var rendering = function linkedRendering(collection){
          element.empty();
          collection.forEach(function(child){
            var cs = scope.$new();
            cs.child = child;
            // ☆リンク関数を実行して、コレクション内要素と結合.
            childLinkFunc(cs, function(clonedElement){
              element.append(clonedElement);
            });
          });
        };

        // 初回描画
        rendering(scope.myTwoPhaseRepeat);

        // コレクションに変更があれば、再描画する.
        scope.$watchCollection('myTwoPhaseRepeat', function(newCollection){
          rendering(newCollection);
        });
      };
    }
  };
}]);
  • 素朴版:
    ★部分で<li>要素内の子ディレクティブ探索とscope評価を一緒くたに処理している(なお、myCompilerなんていうServiceはAngularJSには存在しない)
  • 2フェーズ版:
    compileフェーズでテンプレートから$compile関数でLink関数 childLinkFn を作成し(ここで<li>内探索は済ませる)、描画時(Linkフェーズからよばれる)は childLinkFn の実行のみを行う.

ちなみに $compile(template) 戻り値のLink関数 linkFn の使い方であるが、引数の与え方で結合後の要素の取り方が違う.

  1. var viewElement = linkFn(scope); の様に、scopeの値のみを引数にした場合、templateにしたDOM要素自体に、scopeの評価値がセットされたDOMエレメントが返却される.
  2. linkFn(scope, function(clonedElement){...}); の様に、第2引数に関数を仕込むと、元のテンプレートDOMを汚さずに、scopeが評価された描画用要素を clonedElement 経由で取得可能.

折角なので効果がどの程度か実験.

  • 1つ <li> 内に<input ng-model="name" />{{child.name}}を10個ずつ
  • scopeのコレクション要素数を0→1000に増幅

のボリューム条件を与えて、素朴版と2フェーズ版双方で描画に要した時間を計測してみた.

ちなみに、素朴版のmyCompilerは以下のサービスコードを作成:

素朴版用コンパイラ
angular.module('myApp').factory('myCompiler', ['$compile', function($compile){
  return function(template, scope){
    return $compile(template)(scope);
  };
}]);

Chromeのprofilerで計測した結果が下記:

  • 素朴版:描画関数部分で約4.8秒
    naive.png

  • 2フェーズ版:描画関数部分で約3.8秒
    twoPhase.png

2フェーズ版の方が、1秒くらい速い。要素数やDOMの状態でも変わるだろうが、20%程度の性能向上効果がある、ということだ。

なお、実際のngRepeatはもっと色々な工夫がされているので、上記の2フェーズ版より全然速い。

まとめ

  • Compile/Linkの分離はテンプレート要素がscopeに応じて複製されるようなディレクティブを作成するケースで有効.
  • カスタムディレクティブ内で適切に使いこなせば、AngularJSアプリの性能が上がる.
  • Compileはテンプレート解釈時に一回呼び出され、Link関数は紐付くscopeに応じて複数回呼び出される.
  • Link関数には、linkFn(scope, function(clonedElement){...}); の形式で複製済み描画要素としてscopeと結合できる.
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