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はじめに

こんにちは!
リンクアンドモチベーションの大塚です!
現在はリンクアンドモチベーションの各プロダクトの認証/ユーザ/組織情報を管理するマイクロサービス開発チームのテックリードをしております!
また今年は生成AIの進化に伴い、自チームの開発手法もアップデートしようということで、チームへのAI導入などの活動もしてきました!

この記事では、
「AIツールを入れたけどチームに定着しない」
「AI活用を推進しているが、成果が見えない」
といった悩みを持つ開発者向けに、

2025年を通して
• 何をやって
• 何に失敗し
• どこから流れが変わったのか

を、Q(四半期。リンクアンドモチベーションは1~3月が1Q)ごとにまとめて書いていこうと思います!

2025年1Q ~AIをなんとなく使い出す期~

メンバー間でAIへの関心がバラバラ

この時期は「AIどれだけ役に立つんだ?」「AI便利じゃね?」「自分で書いた方が早いわ!」などメンバー内でAIに関する関心や活用度合いにかなり差がある時期でした。
ツールもCopilot, Cursor, Clineなどメンバー間で使っているものもバラバラで、ちょっと便利な使い方や不満があったらtimesなどで呟くだけで、ナレッジなども蓄積されていきませんでした😅

このままじゃやばくね?

ある時、リンクアンドモチベーションのプロダクトであるモチベーションクラウドは組織診断サーベイで組織に対する期待度/満足度を可視化できるのですが、「将来に向けた試みができているか?」というニュアンスの項目についての満足度が低いこと判明しました。
この結果について、チーム内で話し合ったところ、「これだけAIが発展しているのに自分たちは、その発展についていけていないのではないか?」「世の中のプロダクトがAIを活用した機能を出してきているのに、自分たちは今のままでそれらに打ち勝つ魅力的な機能を開発できないのではないか?」など様々な意見が出ました。

チームで計画を立て、動き出す!

そこでまずは半年かけて**チーム全員がAIを当たり前に活用できるようにしよう!**という目標を掲げ、
数値的にはPull Request(以下PR)の60%以上はAIを使って開発できている状態を目指しました。

そしてその状態を作るために何が必要か?を議論していきました。

2025年2Q ~AIの推進者としてチームに布教活動をするも爆死~

勉強会を通してチームへ知見を共有する

メンバー間でAIに関する関心/活用度合いに差があると前述しましたが、まずは全員が同じレベルでAIを利用できるように勉強会から始めました。
この勉強会は週1ペースで、メインの話者は私で、慣れてきたらメンバーで交代しながらAIの活用方法を共有していきました。

image.png

例えばCursorやClineなどのRuleがリリースされた時期だった時は、それらのルールファイルの使い方やチームでの運用方法を紹介したり、

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バイブコーディングが流行り出した時は、実際に全員がバイブコーディングを体験できる準備をしたりしました。

image.png

AIを使う土台を整備する

勉強会だけではなく、AIがドメイン固有の知識を考慮しながらコーディングできるようにリポジトリにドメインモデル/ユースケース/要件を追加することで、人間がAIに渡す情報をなるべく最小限にしたり、チームの大多数のメンバーが利用するようなMCPなどはローカルコンテナ内ですぐに利用できるようにするなどをすることで、誰もが手軽にAIを使ってコーディングできる状態を作っていきました。

思ったよりもAI浸透してなかった

ここまでAI活用の推進をしてきて、内心「流石にもう全員AIマスターだろ」「最強の開発環境を作ってしまったかもな、」と息巻いていました。
ところがいざメンバーにアンケート形式でヒアリングしてみると、実際のAIの利用率は当初目標の60%からは程遠く、10%程度であることがわかりました。

理由として

  • 自分が課題と思っていたことをベースにドキュメントや仕組みのアップデートをしてきたため、自分だけにとって使いやすい環境になってしまっていた
  • メンバーからの意見の吸い上げる機会を全く作らず、気が向いた時にヒアリングするだけだったので、クリティカルな課題がわかっていなかった

などがありました。

この時に学んだのは、

「正しいこと」よりも「使われること」を設計しないと、
チームには何も定着しない
ということでした。

自分が「これは便利だろう」と思って整えた環境は、
必ずしもメンバーの課題とは一致していませんでした。

2025年3Q ~ようやく定着の兆しが見え始める~

ちゃんと計測し出す

先Qの反省を踏まえて、ちゃんと計測した上で、改善活動できるように、仕組みを作りました。
具体的にはPRにAIの利用率に対して適切なラベル付をする運用を開始しました。
これにより週次で現在のチームでのAI利用率を計測できるようにしました。

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計測結果から現在のAIが弱い部分を検出する

AI利用率のラベルの運用を開始すると、今度はPRの差分とAIが使えていないラベルの関係から、現在のAIでは実装しにくい機能、モジュールなどがわかるのでは?と考えました。
そこでGithubActionでPRの差分を分析させ、どんな修正が加えられたか?がわかるようなラベル付を自動でするようにしました。

image.png
※ ラベルのイメージ

これにより週次でAIが利用できなかった変更を計測 -> その箇所をAIが実装できるようにドキュメントを整備していく活動が始まりました。

image.png

※ 全体イメージ
※ この取り組みの詳細はこちら

本当にチームにAIが浸透し出してきた

これらの活動を繰り返していくことで、3Qの後半には60%~70%のPRは全てAIが実装している状態を作ることができました🎉

image.png

2025年4Q ~「浸透」から「活用」を目指す(道半ば)~

目標を置き直す

当初の目標である「PRの60%以上はAIを使って開発」は安定して達成できるようになり、もはやコーディングにAIはなくてはならない状態となり、「浸透」はできたと言えます。
そのため次はしっかり開発の速度や品質に寄与できるよう状態を目指したいと考え、新たな目標としてPRのリードタイムを50%にし、しっかりとAIを「活用」できたと言えるようにアクションを取り始めました。

実装以外でAIを使い、生産性に繋げる

PRのリードタイムを削減するため、プロセスに目を向けて、AIを活用できないか試行錯誤しています。
直近ではレビューにAIを活用できないか、AIが利用するドキュメントを自動で最新化できないかなどをチーム一丸となって取り組んでいます。
まだ劇的な変化は生まれていませんが、AIの「浸透」ができている今のチームの状態では活用に関する意見交換も多くなり、「活用」できる予感は感じています笑

2025年の振り返り

一言でまとめるとちゃんと「設計」しようぜ。です

ここで言う「設計」とは、
ツールや技術を選ぶことではなく、
• 何を目標にするのか
• 何を計測するのか
• どこを改善するのか

を、最初に決めることです。

1Q~2Qに関しては一定の効果はあったものの、正直闇雲に活動してしまったと痛感しています😢
これは何を目標値として、目標のためには何を計測して、何を改善していくのかが設計できていないことに起因していました。
実際に計測する仕組みを整えた3Qから、AIに関する取り組みが、正常に動き出し、結果にも現れるようになりました。

4Qから取り組んでいる「活用」に関する取り組みには、より設計力が求められるので、AIという技術に溺れず普段の開発と同じく設計した上で活動していきたいと思います。

おわりに

2025年は、
生成AIの進化に振り回されながらも、チームで食らいついた1年でした。

2026年は、リードタイムの削減はもちろんのこと、
「AIを使った品質向上」に関する取り組みをリードし、成果をしっかり社内外に証明したいと思います。

この記事が、
• AI導入で悩んでいるテックリード
• これからAI前提の開発に向き合う人

の参考になれば嬉しいです。

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