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【AI時代のための言語化術(#02 具体↔抽象)】

Last updated at Posted at 2025-12-08

【言語化アップデートシリーズ Vol.2】

前回の Vol.1 では、まず土台として
定義を揃える」というテーマを扱いました。

定義が揃っているチームでは、
仕様整理・議論・AI 活用が一気に滑らかになる──そんな話でした。

そして今回の Vol.2 は、その続きとして
具体 ⇄ 抽象の往復」という “構造の扱い方” を掘り下げます。

Qiita でもよく語られる「抽象化」「一般化」「分解」といった技術は、
本質的にはすべて “具体と抽象の行き来” の話です。

・仕様の意図が噛み合わない
・議論で「それって何の話?」が発生する
・タスク化すると急にブレる
・日常の相談でも話がズレる

こうした コミュニケーションの摩擦 のかなりの部分は、
具体と抽象を行き来できていないことが原因 だったりします。

本記事では、エンジニアの現場や日常の例から、
「往復のコツ」をシンプルに整理します。

Vol.1 が「言葉の定義をそろえる」話だったとすれば、
Vol.2 は 「その言葉でどう構造を取り出し、また戻すか」 の話です。


■まず「抽象」と「具体」の往復が弱いと何が起こるか

抽象と具体の往復が弱いと、
表面上は会話になっていても “基準がズレたまま前に進んでしまう” 状態になります。

“往復できていない例”を見てみます。

●往復が弱い会話(悪い例)

A「もっと丁寧にしてほしい」
B「わかった!(=自分の中の“丁寧”で判断)」
A「いや、これじゃあ丁寧じゃない…」

このやり取りでは、

  • A:抽象(印象ベース)だけ提示
  • B:具体の基準を確認しないまま動く
  • 往復が発生していない

つまり、抽象 → 具体 の橋渡しが 1回も行われていない のです。

往復が弱いと、結果として:

  • 同じ言葉でも 異なる基準で勝手に解釈される
  • アウトプットがズレ、「そうじゃない」の応酬が続く
  • 会話が噛み合わず、摩擦とモヤモヤが累積する

これは日常会話だけでなく、
仕様調整・レビュー・デザイン相談・チーム連携など、
あらゆる場面で発生します。

Vol.1 の「定義を揃える」とも強くつながる部分です。


■よくある“具体のズレ”の例

相手の前提条件を取り除いてしまう問題

▼悪い例:プロダクト編

PM:
「ここの導線、初回ユーザーは迷いやすいので 最初だけ説明モーダルを出したい

エンジニア:
「モーダルは邪魔なので無しでいいです」

PM:
「えっ…?」

ここで起きているのは、

“具体案の議論の中で、相手の抽象的目的そのものが失われている”

という状態です。

エンジニアは「モーダルが邪魔」という具体的懸念を重視するあまり、
PM の意図である 「初回の迷いを減らす」 という抽象目的をまとめてキャンセルしてしまっている。


▼悪い例:日常会話編(LINE)

A:「返事が雑すぎる」(=抽象。何がどう雑なのかは不明)
B:「どのメッセージ?」(=具体の特定)
A:「あれ全部」(=再び抽象)

この状態では、

  • A の不満の 中身が具体化されない
  • B は 改善ポイントを掴めない
  • やり取りは 抽象 → 抽象 のままループ

という構造的なすれ違いが起きます。

「なんで伝わらないの?」
「いや、何を言ってるのかが分からない…」

こうした摩擦は、ほぼこの構造です。


▼改善例(抽象を保持したまま具体を再設計)

プロダクト編

PM:
「ここの導線、初回ユーザーは迷いやすいので ‘最初だけ’ 説明モーダルを出したい」

エンジニア:
「初回の迷いを減らしたいという目的は理解しました。
モーダル“以外”でも同じ目的が達成できる方法を検討してみていいですか?

例:

  • 初回のみガイドバッジで示す
  • スクロール位置に応じた軽いチュートリアル
  • ユーザー操作を邪魔しないヒント UI

ここでは、

抽象(目的)を保持したまま、具体(手段)を再設計する

という正しい往復が起きています。

日常会話でもこれは同じで、
目的を尊重しつつ、手段を調整する” と衝突はほぼ消えます。


日常会話編

A:
「返事が雑すぎる。」(抽象)
B:
「ごめん、既読だけしたやつ?それとも昨日の相談の返事?」(具体の候補提示)
A:
「昨日の相談のほう。絵文字だけ返すと、ちゃんと聞いてるのか不安になる…」(具体)
B:
「なるほど。じゃあ相談のときは文章で返すようにするね。」(抽象の意図を踏まえ具体化)

このように、

抽象 →(具体化)→ 具体 →(抽象の意図を再構築)

という往復が成立すると、誤解が一気に減ります。


■まとめ:抽象を落とさず、具体から抽象を“取り出す”

  • 具体だけを否定すると、目的(抽象)ごと否定してしまう
  • 抽象だけで語ると、相手は動けない
  • 強いエンジニアは「抽象(意図)を保持したまま具体(手段)を再設計できる」
  • この技術は日常会話にもそのまま適用できる

補足すると、
「具体から抽象を取り出す」とは、

目の前の言葉・出来事の“裏にある目的・法則・価値観”を読み取ること

です。

▼例
「通知多すぎて疲れる」
 → “自分のペースを取り戻したい”

「このボタンをここに置きたい」
 → “重要操作を分かりやすくしたい”

表に見える言葉(具体)の奥から
共通構造(抽象)を取り出すことで、
初めて 本当に解決すべき問題 が見えてきます。


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今回は「具体・抽象の構造」に視点を置きましたが、「理解はできたけど、いざやってみるとどうすれば…?」
という人も多いと思うので、次回は

  • 具体 ⇄ 抽象ループをどう回せばいいのか(方法)
    または
  • “定数と変数”という構造の話

を扱おうと思います。

引き続きよろしくお願いします。

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