▶ 今回紹介するサイト: NovaSolver — CAE技術情報アーカイブ
700以上の物理シミュレーターを無料公開中。ブラウザだけで動作します。
はじめに
こんにちは。機械系のエンジニアをしています。
いきなりですが、私はWeb系の技術を何も知りません。
HTMLもCSSもJavaScriptも、サーバーもドメインも、ほぼ触ったことがない。普段の仕事は有限要素法や流体解析で、コードを書くとしてもPythonでポスト処理するくらい。
そんな自分が、Claude Code(AnthropicのAIコーディングツール)を使って、Webサイトをゼロから公開しました。
しかも、ただのサイトではなく、730以上のインタラクティブな物理シミュレーターを搭載した、おそらく世界最大級の無料CAEシミュレーターサイトです。
学生の頃に「あったらいいな」と思っていたもの
大学で構造力学や流体力学を勉強していた頃、こんなことを思っていました。
「この数式、パラメータを変えたら結果はどう変わるんだろう?」
教科書には式と導出が載っている。でも、「じゃあ実際に値を入れてグラフで見たい」と思ったとき、ExcelでゴリゴリVBAを書くか、MATLABのライセンスがある研究室まで行くしかなかった。
もっと気軽に、ブラウザを開くだけで、スライダーをいじればリアルタイムにグラフが動く。そんなツールがあれば、物理の直感がもっと早く身につくのに——。
それを作りました。 NovaSolver です。
例えばこんなシミュレーター
二重振り子のシミュレーターを紹介します。
二重振り子は、カオスの入門として有名な系です。初期角度をほんの少し変えるだけで、運動の軌道が全く違うものになる。教科書で「初期値鋭敏性」と読んでもピンとこないけど、実際にスライダーで0.1度ずらして、軌跡が全然違うのを目の当たりにすると、「カオスってこういうことか」と腹落ちします。
こういうシミュレーターが、構造力学、流体力学、熱解析、電磁気学、制御工学、材料力学……あらゆる分野で730個以上あります。
海外にはあったが、日本にはなかった
こういった物理シミュレーターのWebサイトは、実は海外の大学にはいくつかあります。MITやスタンフォードの研究室が作ったもの、PhET(コロラド大学)のプロジェクトなど。
でも、全部英語です。
そして、網羅的にCAEの全分野をカバーしているものは、どこにもなかった。
構造だけ、流体だけ、というサイトはあっても、構造も流体も熱も電磁気も振動も材料も制御もV&Vもカバーしているサイトは、世界中を探しても見当たらなかった。
Claude Codeで作って驚いたこと
作れること自体は、エンジニアとしてわかっていました。物理の方程式を知っていれば、JavaScriptでCanvas描画するのは原理的には難しくない。
驚いたのは、速度とコストです。
Claude Codeに「レイノルズ数の計算ツールを作って」と指示すると、数分で完成品が出てくる。HTML、CSS、JavaScript、レスポンシブ対応、MathJaxの数式表示まで全部入り。
サーバーの設定もそうです。Nginx、SSL証明書、ドメイン設定——自分では何もわからなかったけど、Claude Codeに聞きながら一つずつ設定していったら、普通に動いた。人間がやるべき部分(サーバー契約、ドメイン登録、DNS設定)だけ自分でやって、あとは全部AIに任せた。
結果として、700以上のシミュレーター × 3言語(日本語・英語・中国語) = 約2,200ページが、驚くほど短期間で完成しました。
実務でも使える
このサイトは教育用途だけではありません。
実務のエンジニアリングでも、物理の方程式を使って考える場面は日常的にあります。
- 配管の圧力損失をサクッと概算したい
- 梁のたわみが許容値内か、FEMを回す前に手計算でチェックしたい
- 熱交換器のNTUを変えたら効率がどう変わるか見たい
- ボルトの疲労寿命をGoodman線図で確認したい
実際、いろんな会社で、各々のエンジニアがExcelやPythonでこういう簡易ツールを自作しています。NovaSolverは、それを誰でもブラウザで使える形で公開したものです。
これからのこと
シミュレーターの品質向上
現在、730個のシミュレーターの挙動を一つずつデバッグしています。数式の実装ミス、UIの不具合、モバイル対応の崩れ——地道な作業ですが、やっています。
ただ、正直なところ、新しいAIモデルが出たら一瞬で全部直せるんじゃないか、とも思っています。AIの進化速度を見ていると、今の手作業が近い将来まるごと不要になる可能性は十分ある。
ものづくり × AI
ソフトウェア業界ではAIの活用が急速に進んでいますが、製造業・ものづくりの世界にも、確実にAIが波及していくと思います。
CAEの自動メッシング、最適化の自動探索、実験データからの物理モデル同定——すでに研究レベルでは始まっています。それが実務に降りてくる日は、そう遠くないでしょう。
今後の世の中を、エンジニアとして純粋に楽しみにしています。
ブラッシュアップ予定
NovaSolverはまだ発展途上です。シミュレーターの追加、UI改善、コンテンツの充実を続けていきます。
クラウドファンディング実施中
NovaSolverの運営・開発を継続するため、クラウドファンディングを実施しています。
**「こういうサイトがあってよかった」「学生の頃にほしかった」**と思ってくださった方、ぜひ応援いただけると嬉しいです。
▶ NovaSolver クラウドファンディング(CAMPFIRE)
リンク
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