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[AWS re:Invent 2025] Opening Keynote - 前編: 生成AIモデルとAI開発ツールの進化

Last updated at Posted at 2025-12-02

はじめに

AWS re:Invent 2025のOpening Keynoteをオンラインで視聴しました。本当はラスベガスの現地で、あの熱気を直接感じたかったのですが、今回は直前にMicrosoftのIgniteにも参加していたので業務上の都合で叶わず。ただ、Youtubeでの視聴にも良さがありました。特に技術的な発表が多いセッションでは、一時停止してスライドをじっくり確認したり、重要な部分を繰り返し視聴できるメリットを感じました。

今回のKeynoteは、AWS CEO Matt Garmanが「The future belongs to developers」というメッセージとともに、開発者を中心に据えた大きな発表を行いました。特に印象的だったのは、生成AIモデルの大幅な拡充と、AI開発を加速させるための新しいツール群です。

この記事では、前編として生成AIモデルとAI開発ツールに焦点を当てて、視聴して得られた気づきをまとめます。

Matt Garman CEO登壇

開発者へのメッセージ: "The future belongs to developers"

Keynoteの冒頭で、Matt Garmanは力強いメッセージを送りました。「The future belongs to developers」。このメッセージは、単なるスローガンではなく、今回発表された一連の機能に一貫して流れるテーマなのかなと感じました。

The future belongs to developers
開発者がAIを活用してより創造的な仕事に集中できるように、AWSはインフラからモデル、ツールまで包括的に提供する姿勢が見えました。個人的には、この「開発者ファースト」のアプローチは、Next.jsやPythonでAI関連の開発を行っている立場として、非常に共感できるものでした。

AWS Trainium: AI開発を支えるカスタムチップ

生成AIモデルの話に入る前に、Garmanはまずハードウェアの話から始めました。AWS Trainiumという独自開発のAIチップです。

AWS Trainium

Trainiumは、大規模な言語モデルのトレーニングに最適化されたカスタムチップで、コストパフォーマンスと性能のバランスを重視して設計されているとのことでした。視聴していて感じたのは、AWSがモデルの提供だけでなく、その基盤となるハードウェアレイヤーまで自社で最適化しているという点です。

これは開発者にとってどういう意味があるのか考えてみると、結局のところ、より高性能なモデルをより低コストで利用できる可能性につながります。特に、大規模なAIアプリケーションを構築する場合、推論コストは無視できない要素なので、この取り組みは実践的な価値があるのかなと思いました。

Amazon Bedrock: 選択肢の拡大

Keynoteの大きな柱の一つが、Amazon Bedrockで利用可能なモデルの大幅な拡充でした。

Amazon Bedrock モデル一覧

画像を見ると分かる通り、AI2、Amazon、Anthropic、Cohere、Deepseek、Luma、Meta、そして新たにGoogleとHimiも加わり、さらにNVIDIAの新モデルも追加されています。これだけ多様なプロバイダーから選択できるというのは、開発者にとって本当に魅力的だと感じました。

実際にAIアプリケーションを開発していると、タスクによって最適なモデルは異なります。例えば、コスト重視の場合、高精度が必要な場合、リアルタイム性が求められる場合など、要件は様々です。Bedrockが単一のAPIで複数のモデルにアクセスできる仕組みを提供していることで、モデルの切り替えやA/Bテストが容易になるのは、開発効率の面で大きなメリットがありそうです。

ただ、選択肢が増えすぎると、どのモデルを選ぶべきか判断が難しくなる可能性もあります。それぞれのモデルの特性や得意領域を理解した上で選定する必要があり、このあたりは開発者の腕の見せ所になりそうだなと思いました。

Amazon Nova 2: Amazonの新世代モデル

今回の目玉発表の一つが、Amazon Nova 2シリーズです。

Amazon Nova 2

Nova 2は、Lite、Pro、Sonicの3つのバリエーションで提供されます。

Nova 2 Liteは、日常的なワークロードに対応する、高速でコスト効率の良い推論モデルとして位置づけられています。一般提供が開始されているとのことで、すぐに試せるのは嬉しいポイントです。

Nova 2 Proは、最も高性能な推論モデルで、複雑なワークロードに対応するとされています。現時点ではプレビュー版として提供されているようです。

Nova 2 Sonicは、リアルタイムの人間らしい会話AIのための音声基盤モデルで、一般提供が開始されています。これは音声インターフェースを持つアプリケーションにとって興味深い選択肢になりそうです。

個人的に気になったのは、これらのモデルがどの程度他社の主要モデル(例えばClaude、GPT-4など)と比較して性能やコストで競争力があるのかという点です。Keynoteでは具体的なベンチマーク結果には触れられていなかったので、実際に試してみて評価する必要がありそうです。

Next.jsでフロントエンド、PythonでバックエンドのAIアプリケーションを構築する場合、Nova 2 LiteやProをBedrockのAPIを通じて統合するのは比較的容易だと思います。特にLiteは、コスト効率を重視したプロトタイピングやMVP開発で活躍しそうな印象を受けました。

Amazon Quick: ノーコード/ローコードなAI活用

もう一つ印象的だったのが、Amazon Quickの発表です。

Amazon Quick - 3つの機能

Quickは、Quick Research、Quick Sight、Quick Flowsという3つのコンポーネントから構成されています。

Quick Researchは、文書やデータから素早くリサーチを行うツールのようです。これは、大量のドキュメントから必要な情報を抽出する際に便利そうです。

Quick Sightは、データ分析とビジュアライゼーションに特化したツールで、ダッシュボード作成が簡単にできる印象を受けました。

Quick Flowsは、ワークフローを自動化するツールで、AIエージェントと組み合わせることで、複雑な業務プロセスを自動化できる可能性があります。

これらのツールは、ノーコード/ローコードでAIを活用したいビジネスユーザーや、プロトタイピングを素早く行いたい開発者にとって価値があるのかなと思いました。ただ、本格的な開発になると、やはりBedrockのAPIを直接使う方が柔軟性は高いので、用途に応じて使い分けるのが良さそうです。

データとモデルの関係性: "The right model + all your data"

Keynoteの中で繰り返し強調されていたのが、「適切なモデル + すべてのデータ」という考え方です。

実際にAIアプリケーションを開発していると、モデルの選定よりもデータの準備や前処理に時間がかかることが多いです。AWSが提供しているのは、単にモデルへのアクセスだけでなく、データの統合やRAG(Retrieval-Augmented Generation)のような仕組みを通じて、既存のデータをAIに活用するためのエコシステム全体なのだと感じました。

特に、企業内の既存データ(データベース、ドキュメント、ログなど)をAIに活用する際、セキュリティやプライバシーの懸念があります。Bedrockがこれらのデータを安全に扱いながら、モデルに文脈として提供できる仕組みは、実用的なAIアプリケーション開発において重要な要素だと思います。

実装を考えてみて

実際の適用シーン

Amazon BedrockとNova 2を活用した具体的なユースケースとして、以下のようなものが考えられます。

カスタマーサポートの自動化: Nova 2 Sonicを使った音声対応のチャットボット。リアルタイムで人間らしい会話ができるため、ユーザー体験の向上が期待できます。

ドキュメント分析システム: Nova 2 Proを使って、大量の社内文書から必要な情報を抽出・要約するシステム。RAGと組み合わせることで、精度の高い情報検索が可能になりそうです。

コスト最適化された推論パイプライン: Nova 2 Liteを使った、大量のテキスト処理。コストを抑えながら、一定の品質を維持できる可能性があります。

実装時の考慮点

実際にこれらの技術を適用する際、いくつか注意すべき点があると感じました。

モデル選定の基準: 複数のモデルから選択できる一方で、どのモデルが自分のユースケースに最適かを判断するための評価基準を明確にする必要があります。精度、レイテンシ、コスト、トークン制限などを総合的に評価する仕組みが必要そうです。

コスト管理: 生成AIは従量課金なので、想定外のコスト増加を防ぐためのモニタリングと制限の仕組みが重要です。特に、ユーザー向けのアプリケーションでは、悪意のある大量リクエストへの対策も考慮する必要があります。

レイテンシとユーザー体験: リアルタイム性が求められるアプリケーションでは、モデルの推論速度が重要です。Nova 2のそれぞれのバリエーションがどの程度のレイテンシを持つのか、実際に計測してみる必要がありそうです。

データプライバシーとセキュリティ: 企業データをAIに活用する際、データがどこに保存され、どのように処理されるのかを明確に理解する必要があります。Bedrockがデータを学習に使用しないという点は重要ですが、それでも機密情報の取り扱いには注意が必要です。

Next.js + Pythonでの実装パターン

私が普段使用しているNext.jsとPythonの組み合わせで、これらの技術をどう活用できるか考えてみました。

アーキテクチャ例:

  • フロントエンド: Next.js (App Router)
  • バックエンドAPI: Python (FastAPI)
  • AI推論: Amazon Bedrock (Boto3 SDK経由)

このパターンでは、Next.jsがユーザーインターフェースを担当し、PythonのFastAPIがBedrockとの通信を処理します。この分離により、AI処理の複雑さをフロントエンドから隠蔽でき、メンテナンス性が向上します。

ストリーミングレスポンスが必要な場合(例: チャットアプリケーション)、BedrockのストリーミングAPIとNext.jsのServer-Sent Events (SSE)を組み合わせることで、リアルタイムなユーザー体験を実現できそうです。

まとめ

前編では、AWS re:Invent 2025 Opening Keynoteで発表された生成AIモデルとAI開発ツールについて、視聴して得られた気づきをまとめました。

主なポイント:

  • Amazon Bedrockが提供するモデルの選択肢が大幅に拡充され、開発者の柔軟性が向上
  • Amazon Nova 2シリーズの発表により、Amazonの自社モデルが本格的に競争力を持ち始めた可能性
  • AWS Trainiumによるハードウェアレベルでの最適化が、コストパフォーマンスの向上に寄与
  • Amazon Quickによるノーコード/ローコードなAI活用の選択肢
  • データとモデルの統合が、実用的なAIアプリケーションの鍵

後編では、AIエージェント開発の新しいアプローチと、DevOps・Security領域でのAI活用について取り上げます。Amazon Bedrock AgentCoreや、AWS DevOps Agent、AWS Security Agentなど、実際の開発・運用に直結する発表が続きますので、ぜひご覧ください。

参考リンク

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