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【AWS Lore #SAA-29】変わらん熱、変わる影(Unchanged Heat, Shifting Shadow)

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Last updated at Posted at 2026-04-28

--第28話はこちら

■ 影の揺れ

部屋の片隅で、空気がふっと揺れた。

熱い。
けれど、敵意はない。
ただ、胸の奥をくすぐるような“温度”だけが混ざる。

私は思わず足を止めた。

「……今の、何?」

ミリアが小さく肩を震わせた。

「……あれ……?
 なんか、胸のあたりが……」

その瞬間、ミリアの胸元から
“ふわっ”とワサミが一体、浮かび上がった。

ミリアは驚いて目を丸くする。

「えっ……で、出てきた……?
 なんで……?」

ネリアお姉様は静かに目を細める。

「これは……理の揺れではありません。
 もっと、人の感情に近い……温度ですね」

リミラさんは影の奥をじっと見つめた。

「……来はりますえ」

ルミエラは端末をぎゅっと握りしめる。

「ニ、ニカさん……っ
 あ、あの揺れ……なんだか……嫌な……」

私は喉がひりつくような感覚に、息を呑んだ。

この温度を、私は知ってる。
忘れたくても忘れられない、懐かしいあの“熱”だ。

■ 影が形を持つ

部屋の片隅で、影がゆっくりと熱を持って形を成していく。

ゆっくりと足音が近づく。
重く、でも迷いのない足取り。

赤黒い髪が揺れ、
どっしりした体格が光の中に現れた。

そして──
その男は、私を見つけた瞬間、
ほんの少し照れたように、歯を見せて笑った。

「……なんや、元気しとったんか」

私の胸の奥が跳ねた。

ミリアがぽかんと口を開ける。

「ニカ姉?この人……知り合い?」

私は視線をそらしながら答えた。

「……まぁ、昔ね」

男──アクスは、耳まで赤くしながらむくれた。

「“昔ね”やなかろうもん……」

その声を聞いた瞬間、
胸の奥にしまい込んでいた“言葉”が、
勝手に浮かび上がってくる。

■ 再会の温度

アクスは腕を組み、わざとらしくため息をついた。

「お前は昔からそうやった。
 気づいたらどっか行っちゃ、気づいたら戻ってきて……
 俺がどんだけ──」

「はいはい、アクスわかったちゃ!
 あんたは昔っから話が長いっちゃ!」

アクスの目が一瞬だけ揺れた。
懐かしさが滲むような、そんな表情。

「……変わっとらんねぇ、そこは」

「は?何が変わっとらんっち?」

アクスは照れ隠しのように鼻を鳴らした。

「そげん言うとこが、もう、昔のまんまやん……」
そう言いながら、アクスの頬がさらに赤くなっていく。

ミリアがくすっと笑う。

「なんか……いいね、二人とも」

ネリアお姉様は優しく微笑む。

「長い時間を共にした人の空気……ですね」

■ 空気が笑いに変わる

ルミエラはテンパりながら手を振る。

「に、ニカさんっ、あ、あの……
 お二人……えっと……その……!」

リミラさんが静かに肩をすくめる。

「……まぁ、そういう関係なんやろねぇ」

「ち、違うっちゃ!!そんな、リミラがいうような関係やないっちゃ!」
アクスが、照れながらも否定しているのか、肯定しているのかわからない感じで応える。
そんなアクスを見ながら私は、
「はいはい、落ち着きっちゃ」
私の言葉に、アクスは……、
「ニカぁ……!」
ほんっと、昔といっちょん変わっとらん……。

そのとき、アクスの熱がふっと揺れた。

ミリアの膝ががくりと落ちる。

「わ、わさみ……あったか……ふにゃ……」

傍にいたネリアお姉様が、ミリアをすぐに支える。

「大丈夫ですよ。アクスさんの熱に反応しているだけです」

ルミエラが、慌てて端末を操作する。

「に、ニカさんっ……!
 ミリアさんの理が……あ、あわわ……!」

リミラさんは静かに言った。

「……ほんま、ミリアはんは、敏感なお人やわぁ」

リミラさんの言葉に反発するように、アクスはむっとした顔で言い返す。

「ちゃーんと、安定しとるっちゃ!昔とは違うけん!」

そのアクスの言葉に、私は思わず笑ってしまった。

「その言い方が、昔のまんまなんよ」
アクスは頬から、耳の先まで真っ赤になった。

■ 影獣の気配

その瞬間、部屋の外でぐにゃりと“影”がうねった。

うねった周囲から空気が一転して徐々に冷たくなる。
ミリアがワサミを抱えたまま震える。

「……やだ……なんか冷たい……」

ネリアお姉様が表情を引き締めて、どこからか杖を取り出し、構える。

「……来ます。影獣です」

ルミエラが震える声で分析を始める。

「ニ、ニカさん……っ
 あ、あれ……理が……乱れて……
 ひ、ひどい……」

リミラさんが静かに告げる。

「……本物どすな……」

私は息を呑んだ。

■ やっぱ、あいつは変わっとらん

アクスは一歩前に出て、トンファーを構えた。

「任せとけ。
 昔の俺とは違うけん」

前に出るアクスに、私は思わず言い返す。

「……あんた、そういうとこ、ほんっと、変わっとらんっちゃ……」

アクス
「変わったっちゃ!見とけ!」

アクスの周囲の温度が上昇し、一気に熱が跳ね上がり、
トンファーに赤い揺らぎが走る。

そんな、アクスの状況を、ルミエラがテンパりながら叫ぶ。

「に、ニカさんっ……!
 あ、あれ……理が……ふ、増えたり減ったり……!」

ネリアお姉様が優しく補足する。
「つまり……アクスさんの“熱”が高まるほど、
 力が増すということですね。珍しい理です」

リミラが静かにまとめる。
「……ほんま、ややこしい理ですわ……」

そのリミラの言葉にアクスが反論する。
「ややこしくなかろうもん!わかりやすいっちゃ!」

昔とほんと変わらない、突っ走るアクスを見て、私は、
「はいはい、わかっとるけ、アクスは落ち着きっちゃ」

呆れた私の声に、
「そんな目で、見んでよ!!」
アクスが涙目になりながら、反論する。

■幕開け

影獣が、通路からゆっくりと姿を現す。

アクスが一歩前へ出る。
私もアクスの後ろに、一歩踏み出す。
ミリアはワサミを抱えて震え、
ネリアお姉様は静かに杖を構え、
ルミエラは静かに息を呑み、
リミラさんは目を細める。

「……来ますえ」

影が吠えた。

――To Be Continued.


熱が理を揺らし、影が形を持つ。
変わらん想いが、変わる世界を照らす。
――第29話、幕が上がる。

--第2部全話はこちらから

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