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【AWS Lore #SAA-7】行先の理(Route Table)

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Last updated at Posted at 2026-04-01

王都の空に夕暮れが落ちる頃、
ニカの胸元で揺れる光粒は、いつもの柔らかい明滅を失っていた。
前回の出来事で心が沈んだニカを支えるため、
ルミエラとネリアお姉様はそっと寄り添い、
温かい食卓と優しい言葉で彼女の心をほぐしていく。
そして翌日。
三人は “内綺門” の奥に住まう門綺守官──を訪ねることになる。
そこでニカが目にするのは、
光粒の道を示す“行先の理(Route Table)”。
しかし、その中でただひとつ──
ニカ自身も気づいていない"異変"があった。
そして“あの方”とは誰なのか。
物語は、次の段階へ進み始める。

第7話 行先の理(Route Table)

夕暮れの王都は、桃金色の光が街を包み込み、
石畳に落ちる影を柔らかく染めていた。
風に乗って流れる光粒は、夕日の色を映して揺れている。
ルミエラは胸の前でぎゅっと両手を握りしめ、
沈んだ光粒を連れて歩いていた。
「ニカさん……大丈夫かな……」
小さく漏れた声は、夕暮れの風に溶けていく。
先ほどの出来事がルミエラの胸に重く残っていた。
ニカに説明がうまくできなかったことが、彼女を自責の念で締めつけていた。
「……ちゃんと、伝えなきゃ……」
小走りになると、光粒が慌てて後ろからついてくる。
ニカたちが泊っている宿の灯りが見えたところで、ルミエラは深呼吸をひとつ。
「よし……」
決意を胸に、扉をそっと開けた。

静かな部屋……

部屋の中は静かで、
ニカは窓辺に座り、沈む夕日をぼんやりと眺めていた。
彼女の胸元の光粒は不安げに小さく震えている。
「ニ、ニカさん……!」
ルミエラが駆け寄ると、光粒がぱたぱたと揺れた。
彼女はゆっくり振り返り、弱い笑みを浮かべる。
「……ごめんね、ルミエラ。ちょっと……考えすぎちゃって」
その表情は少し暗かった。
あの時に見せてくれた明るさが、ワクワクする心の明るさが見当たらない。
「ち、違います! ニカさんは悪くないです……!」
言葉が詰まるルミエラの背に、そっと温かい手が触れた。
ネリアお姉様だ。
「ニカさん……大丈夫ですよ。焦らなくていいんです。」
その声は、光粒の揺らぎと同じ温度をしていた。
ネリアお姉様がそっと優しく彼女の傍に寄り添い、柔らかく手を包む。
彼女の胸元の光粒がふわりと温かく揺れた。
「……ありがとう。二人とも……」
まだ弱い声だけれど、そこに少しだけ光が戻っていた。

夕食

宿に併設された食堂は、夜の灯りがぽつぽつと灯り始め、
木のテーブルに温かい影を落としていた。

店主が湯気の立つ皿をそっと置いていく。
光粒スープは淡い金色の光を揺らし、
風鶏(この地方でよく食べられる鳥)と根菜の優しい香りが広がる。
ルミエラの光粒がぱたぱたと嬉しそうに揺れた。
焼きたてのハーブパンは、
外は薄くパリッ、中はふわふわ。
ネリアお姉様が私の皿にそっと置く。
「このパン……私のおススメなの」
風鶏のローストは香ばしい匂いを漂わせ、
光粒の塩がほんのり甘い風味を引き立てていた。
私は一口だけ口に運ぶ。
胸元の光粒がふわり……と明るく揺れる。
「……おいしい……」
その一言で、ルミエラはほっとして涙目になり、
ネリアお姉様は優しく微笑んでくれた。

最後に出されたのは、
夜風の香りを閉じ込めた温かいお茶。
夜風茶。
すっきりとした香りの中に、ほんのり甘い香りが漂う。
口に含むと、胸の奥がふわっと軽くなる。
3人で湯気を囲むと、
光粒がその湯気に溶けるように揺れた。
私の表情はまだ完全ではないけれど、
静かに、だけど確かに“戻ってきた”気配があった。

内綺門への訪問

翌朝。
王都の空気は澄んでいて、光粒が朝の光を受けてきらきらと舞っていた。
私、ルミエラ、ネリアお姉様の三人は内綺門の奥へと続く道を歩いていた。
内綺門は近づくにつれ、空気が静まり返っていく。
光粒の揺らぎも、どこか緊張しているように感じる。
「うぅ……なんか……空気が重いです……」
ルミエラが小さく震える。
彼女の周りを舞う光粒がぱたぱたと不安げに揺れた。
ネリアお姉様はそっとルミエラの背を撫でる。
「大丈夫ですよ。私たちがいますから。」
私も頷き、ルミエラを励ます。
「うん……行こう。」

三人は静寂の奥へとゆっくり、でも一歩ずつ進んでいった。

導綺守官 グラン・オルド・フォルゲン

内綺門の最奥に、重い足音が響き、
小さな影がゆっくりと姿を現す。

白銀の髯。綺麗にまっすぐに伸びた髯は正に美髯。
沢山の知識と理が刻まれたような深い皺。
小柄な体躯なのに、その場の空気を支配する圧倒的な存在感。
光粒が彼の周りだけ道を開けるように揺れていた。
老ドワーフは一歩前に出る。

私の心に、彼の存在が伝わる。
--内綺門・導綺守官 グラン・オルド・フォルゲン

金色の波紋が光粒の海となって周囲に広がる。
私の胸がずしりと震える。

ルミエラが慌てて間を取り持とうと、わたわたとしている。
周りに揺れる光粒がぱたぱたと彼女の心情を反映しているのか、何ともルミエラらしい。
ネリアお姉様が、そっと私の手を包んで支えてくれた。
それだけで、私は自分の居場所を感じることができた。

行き先の理(Route Table)

グラン翁が静かに空へ手をかざすと、
光粒が集まり、淡い白金色の“理の板”がすうっとそこに現れた。
そこには──
光の道がいくつも走っていた。
迷いなくまっすぐ伸びる道。
行き先を迷う様に曲がる道。
幾重にも交差して分岐する道。
外側から大門へ続く道。
内側から大門の外へと出る道。
「光が来たら、この理を見で……どこさ通すか決めるんだべ。」
ルミエラが慌てて翻訳する。
「えっと……つまり……今見てるのは、“どこへ進むか”を決める地図です……!」
ネリアお姉様が優しく微笑んでルミエラの言葉を補足する。
「迷わないように導く仕組みなんですよ。」
私は小さく頷く。
胸元の光粒がそれを聞いて納得したのか、ふわりと反応する。

行き先を決める

理の板の上に、
ひとつだけ“何も描かれていない場所”があった。
そこに私の光粒がふわりと浮かぶ。
しかし──
道はどこへも繋がらない。
「……ほれ見ろ。おめぇの行先は、まだ描がれてねぇ。白紙だ。」
ルミエラの光粒が震えて、グラン翁の言葉を補足する。
「ニ、ニカさん……あなたの行き先は、まだどことも繋がっていません……」
ネリアお姉様が私の手を包み、温かく優しく微笑む。
「大丈夫ですよ。繋がっていないということは……行き先を自由に選べるということです。」
行き先が白紙……。私の胸がその言葉を確かめる様に、妙にざわつく。
でも、寄り添ってくれる二人の温かさで、胸の中のざわつきが落ち着いていく。

次の行き先……

グラン翁は美しい白銀の髭を揺らしながら言った。
「……この白紙の意味は、“あの方”に聞ぐのが早ぇべ。」
ルミエラが息を呑む。
「“あの方”……まさか……。ルリエ=アゼリア様……」
彼女の言葉に、私の胸の中で光粒がふるりと震えた気がした。
それは、喜びなのか、不安なのかはわからない。

ネリアお姉様が私の手をそっと握り、静かに告げた。
「ニカさん……明日、少し遠出をしますよ。」
お姉様の優しさに反応するように、光粒が優しくふわりと揺れた。

お姉様の言葉の意味を、その時の私はまだ知らなかった。

--第8話へつづく。
--第1部全話はこちらから

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