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【AWS Lore #SAA-8】交わる理

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Last updated at Posted at 2026-04-02

このシリーズでは、AWSの各サービスや概念を物語の世界に置き換えて解説していきます。

第8話となる今回は、
Public と Private──二つのサブネットが持つ“理(ことわり)”と、
NAT Gateway が担う“橋の理”が初めて交わる回です。

ガルド(Public)、エルドさん(NAT Gateway)、ネリアお姉様(Private)。
三人の技がそれぞれの理に従って発動し、ひとつの戦いを形づくります。

そしてその夜、焚き火を囲む中で、
私は初めて……。詳しくは、本編をお楽しみください。

【AWS Lore #SAA-8】交わる理

まだ薄暗い部屋の中で私は目を覚ました。
胸の奥で光粒がふわりと揺れ、緊張と期待が混ざったようなざわつきを生む。
布団の端を握りしめて深呼吸していると、
扉の向こうから小さなノックが聞こえた。
扉を開けると、ルミエラが顔を覗かせる。
「ニカさん、おはようございます……今日、楽しみですね……」
その柔らかい声に、胸のざわつきが少しだけ落ち着いた。
ほどなくしてネリアお姉様が迎えに来る。
「ニカさん。お弁当を女将さんに頼んだので、受け取ってきていただけますか?」
静かで優しい声だった。
任されることが嬉しくて、私は小さく頷いた。
食堂に行くと、女将さんがランチボックスを用意してくれていた。
中には、光牛の香草焼きと風鶏の卵サンドイッチが詰められていた。
光牛の香草焼きは、香草の香りが鼻をくすぐり、食欲をそそる。
風鶏の卵サンドイッチは、ふんわりしたパンに挟まれた卵が甘い香りを漂わせていた。
お昼が楽しみだと感じた。

「はい。じゃあ、お弁当5人前ね。お代はネリアさんからいただいてるから、気にしなくていいよ」
女将さんは優しい笑顔を浮かべて、私に5人前のランチボックスを包んでくれた。
「……えっと。ありがとうございます。」
私は疑問に思って、首をかしげながら受け取った。
受け取ったランチボックスを持って、部屋に戻るとネリアお姉様とルミエラが待っていてくれた。
「あの……5人前って……」
ランチボックスをネリアお姉様に渡しながら、私は疑問を投げかける。
彼女ははぐらかす様に、微笑んで
「ふふふ。行けばわかりますよ」

私は首をかしげたが、ネリアお姉様は優しい笑顔で受け取った。
胸の奥に小さな違和感だけが残る。

◆旅立ち

内綺門へ向かうと、
門の前にグラン翁が立っていた。
白銀の髯を上下にゆっくりとしごきながら、東北訛りの、深みのある声が響く。
「……んだば、気ぃつけで行ぐんだぞ……」
私はその言葉の意味がわからず、ぽかんと固まってしまった。
ルミエラがそっと耳元で意味を教えてくれる。
「“気をつけて行きなさい”って言ってます……!」
ネリアお姉様は微笑み、静かに頭を下げた。
グラン翁の後ろから、二つの影が現れる。
ガルドが元気いっぱいに手を振り、笑いながら声を掛けてくる。
「よっしゃ行くでぇ!今日もバッチバチに護ったるわ!」
エルドさんは寝癖のついた髪をかきながら欠伸をしながら言う。
「朝早うから、おまんらも大変やの……まぁ、護衛は任せちょき」
「……ありがとうございます!」
私は思わず頭を下げた。ここで、やっと宿屋の食堂での出来事に合点がいった。
ネリアお姉様は優しく微笑んだ。
五人の影が、光粒の道へと伸びていく。

◆ 休憩

しばらく歩いたところで、ガルドが大きく伸びをしながら言った。
「腹減った〜!もう無理や〜!」
ネリアお姉様が小さく息をつき、
「ガルドったら……仕方ないわねぇ」と呟く。
「……少し休憩しましょうか」と提案してくれた。
5人が腰を下ろすと、光粒がふわりと舞い、
昼前の柔らかい風が頬を撫でる。
ランチボックスをネリアお姉様が荷物から取り出して広げると、
光牛の香草焼きの香りがふわりと鼻をくすぐり、食欲をそそる。
風鶏の卵サンドイッチからは、パンの香りがふわっと広がり、
私の緊張が少しずつほどけていく。
ルミエラが嬉しそうに目を輝かせた。
「わぁ……美味しそう……!」
ガルドはよだれを垂らして、
「うっまそう……ちょっと一口……」
とつまみ食いを狙って手を伸ばす。
そんな彼の手はネリアお姉様に軽くさえぎられる。
「ガルドさん。みなさんの分ちゃんと用意してますからね」
「は、はい……」
二人のそんなやり取りを、私とルミエラは顔を見合わせてくすりと笑った。
エルドさんは火のついていない小枝を弄びながら、ぼんやりと空を見上げていた。
その緩い空気に、私の肩の力がまた少し抜けた。

私は、風鶏の卵サンドイッチを一口かじってゆっくりと咀嚼して飲み込み、
胸の奥に残っていた小さな不安をそっと口にした。
「……あの……私たちって、どこに向かってるんですか……?」
ルミエラがぴたりと動きを止め、目を泳がせながら言葉を探す。
「……えっと……危険な場所に、ニカさんを連れて行く訳では無いので……
 その……安心してください……」
声が少し震えていて、その優しさが逆に胸に刺さる。
その横で、ネリアお姉様が静かに補足してくれる。
「大丈夫です。危険な場所へは連れていきません。
 ニカさんが不安にならないよう、私たちが必ず守りますから、安心してください」
彼女の優しい言葉と微笑みで、胸の奥の光粒がふわりと落ち着いた。

◆ 戦闘 ――交わる理

食べ終わって立ち上がった瞬間、
光粒の道が濁り、空気がざわりと冷たくなる。
影がゆっくりと重なり、影の獣が三体、地面から滲み出るように姿を現す。
ネリアお姉様が私とルミエラの前に出て、静かに詠唱する。
「光よ……護りなさい」
綺域結界が展開し、影獣が飛び込んでくるが、爪が触れた瞬間に弾かれる。
ガルドは綺紋鍵を構え、踏み込む。
「開け、綺紋──! 綺爆紋!」
爆風が吹き荒れ、影獣を吹き飛ばす。
しかし影獣の体は霧散し、すぐに黒い霧が集まり、また獣の形をつくる。
物理では散らばるだけで倒しきれない。
ガルドが綺紋鍵を振り下ろした態勢から、よろけた瞬間、影獣が鋭い爪を伸ばして飛びかかる。
「……風よ、通れ──。貫風弾」
乾いた銃声が響き、エルドさんの拳銃から放たれた弾丸が影獣の胸を貫く。
黒い霧が激しく噴き出し、致命傷を与えたことがわかる。
しかし影獣は最後の力でエルドさんへ襲いかかる。

彼は一歩も動かず、拳銃を腰に戻すとその手を静かに刀へ添えた。
「風よ──通せ! 風刃一閃!」
しゃん、と遅れて音が響き、影獣の体がエルドさんの背後で崩れ落ちる。
彼の刀は既に鞘に戻っていた。
エルドさんの背後から別の影獣が襲い掛かる。

そこへ、ガルドが跳び込み、詠唱と共に技が奔る。
「切り裂け、綺紋──! 綺烈斬!」
光が奔り、切り裂かれた影獣がぼろぼろと崩れ落ちる。

残る一体が私たちへ向かって跳びかかってくる。
ネリアお姉様の光粒が強く輝き、詠唱が響く。
「穿て──光槍」
光の槍が一直線に走り、影獣の胸を貫く。
黒い霧が弾け、影獣が形を保てずに消滅する。

それを見たエルドさんが珍しく口元を緩めて言う。
「……さすがやね、ネリア」
ネリアお姉様は、それに優しい微笑みを浮かべ、
「エルドさんも、さすがですわ」
そんな二人を見て、ガルドは口を尖らせる。
「ちぇっ、ワイの決め、全部持ってかれたやんけ……」
そんな彼もルミエラから
「ガルドさんも、すごかったですよ……!」と褒められ、
すぐに曇った表情が明るくなる。
「せやろー!ワイもやるときゃやるっつうことよ」
そんなガルドを見て、私とルミエラは顔を見合わせてくすりと笑った。

◆ 夕暮れと焚き火

戦いが終わると、光粒の道は再び静かに澄み渡った。
五人でふわりと光粒が揺れる道を並んで歩きながら、他愛もない話をして笑い合う。
夕陽が差し込み、光粒が黄金色に染まる。

やがて小さな広場に着き、そこで私たちは一夜を過ごすことにした。
ガルドとエルドさんが薪を集め、ルミエラが火を起こし、
私も小さな枝を拾って手伝う。
火が灯り、ぱちぱちと音を立てる。
焚き火にネリアお姉様が持ってきていた鍋を掛ける。
鍋の中には、風鶏と野菜の優しい香りが漂い、食欲をそそる。
橙色の光が揺れ、五人の影が寄り添うように重なった。
ガルドが満足そうに息を吐く。
「ふぅ〜……やっぱ焚き火はええなぁ……」
エルドさんは火の向こうで、眠そうに目を細める。
「……今日はよう動いたき。これくらいの休みは必要やね」
ルミエラは火を見つめながら微笑む。
「焚き火って……落ち着きますね……」
私はその隣で、胸の奥の光粒が静かに揺れるのを感じていた。
ネリアお姉様が私の方へ視線を向ける。
「ニカさん。今日は……本当によく頑張りましたね」
その言葉に私は胸がきゅっと熱くなる。
「わ、私は……ただ、みんなの後ろにいただけで……」
私の言葉に、彼女は優しく微笑む。
「後ろに立つことも、勇気がいることです」
ネリアお姉様は静かに続けた。
「怖くても、逃げずに立っていた……それだけで十分です」
火の音が、ぽんと弾けた。
ガルドが笑いながら言う。
「せやせや!ニカはよう頑張っとったで!
 あのビビり方、逆に可愛かったしな!」
「か、可愛……っ……!」
私はガルドにからかわれて、思わず声が裏返る。
ルミエラが慌てて手を振って私を庇う。
「ガルドさん、からかわないでください……!
ニカさん、本当に頑張ってました……!」
エルドさんも、火を見つめたままぽつりと呟く。
「……怖いのは普通やき。立てちょっただけで、十分や」
その言葉は、焚き火の温かさと一緒に胸の奥へ染み込んでいった。
光粒が舞う広場の夜風は少し冷たかったけれど、
焚き火の光とみんなの声がそばにあるだけで、不思議と寒さは感じなかった。
こうして、
私たち五人の静かな夜が、ゆっくりと更けていく。

--第9話へつづく
--第1部全話はこちらから

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