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【あるある】小学校音楽会練習のカオスをエンジニアリングで解決してみた話

Last updated at Posted at 2025-04-20

なんの記事なの?

この記事では、公立小学校の教員から転職した私がエンジニアになろうと思ったいくつか原体験のうちの一つを紹介します。

この記事は私が転職活動時に作ったYu's Portfolioの記事のブラッシュアップバージョンです。

はじめに

みなさん一度や二度、小学校の音楽会を任されたことがあると思います。
任された当時、ピアノなんて弾けず文明の利器であるCDに頼って音楽の授業をしていた私が、音楽会の発表に向けて6年生を2回指導した経験をもとに書きます。

一人じゃ回らない現場 分身の術を本気で習得したい日々

初めての音楽会に向けての練習。ベテランの先生の指導を見学し、見よう見まねで取り入れてみましたが、子どもたちをうまく教えることができなかったです。

特に練習のし始めは、全体指導よりも個人練習&個別指導の割合が高く30人を超えるクラスだと、一人について教える時間も、指導できる人数も限られてしまいます。

当時の現状は、

  • 30 人を超えるクラスで困っている子たちを 1人で個別指導するには体がいくつあっても足りない
  • 楽譜と曲の対応が理解しづらい(この小節はどんな音?)
  • どのように練習をしたらいいのか分からず遊びたくなる児童がいる(その気持ちわかる、完全に指導力不足)

まさにカオスですね。

楽器の得意な子たちが、ほかの子の練習を手伝ってくれて大変ありがたい。そんな環境でも自分の指導力じゃ1人で回りませんでした。
本当に、自分が分身して個別に練習をサポートしたいと悩む日々。

このような困り感を抱えた私は、問題解決のため、指導用の動画を作成することにしました。

エンジニアリングの本質は『問題解決』である

と聞いたことがあります。
タイトルの通りエンジニアリングで問題解決します。(強引)

どんなものを作ったの?

音源と楽譜をつなぐ架け橋となる動画です。

左に表示されているアルファベットが練習番号、右に表示されている数字が小節番号です。
【参考】小節番号や練習番号のお話

楽譜の練習番号と小節番号を動画で表示することで、その音源がどこの小節を再生しているのか容易に分かるようになります。繰り返しも動画を見れば一目瞭然です。
練習番号・小節番号を頼りに、子どもたちはシークバーを動かし、自分が練習したい場所をすぐに表示できます。

jyonetsu_example.gif

必要なもの

この方法で指導するために、必ず用意すべき物があります。

  • 音源付き楽譜
  • 動画編集ソフト
  • 1人1台のICT 端末(ありがたや~)
  • 児童数のイヤホン

必要なもの ~音源付き楽譜~

楽譜に対応した音源が必要です。パート別の音源があればなお良しです。

私の場合
ドレミファ器楽(ドレミ階名付き)の「情熱大陸」メインテーマ【ドレミ階名付き】とパート別音源 CD を購入しました。

https://www.music8.com/products/detail17099.php

必要なもの ~動画編集ソフト~

私の場合、普段から仕事で活用している iPad に LumaFusion という動画編集ソフトを入れて動画を作ってきました。

必要なもの ~1人1台のICT端末&イヤホン~

コロナによる休校の影響で GIGA スクール構想に拍車がかかり、1 人に 1 台の ICT 端末(タブレット PC など)が配備されました。

動画を共有ドライブに保存しておき、児童それぞれがアクセスし再生できるようにしました。
動画をイヤホンをつけながら視聴することによって、様々な音が飛び交う音楽室で児童は、自分の音に集中しながら練習に取り組むことができました。

なお、イヤホンは 100 均で一括購入し、後日集金する形で購入させていただきました。

ちなみに初めての実践のときには、メルカリで買った ANA の機内のアメニティのイヤホンを購入し、使いました。しかし児童にとってイヤホンが大きく、耳に合わず、音質も悪いので、イヤホンに関してはいまいちな結果に終わっています。

作り方

第一段階

まず初めに楽譜を徹底的に読み込みます。その際楽譜に何小節あるかや繰り返しを確認します。

次に、パート別の楽譜の全てに小節番号を振ります。動画と楽譜をつなぐ下準備が終わりました。

第二段階

動画を作成していきます。動画の作成にあたり、1 番大事な事は曲の速さの確認です。

私が今回作った情熱大陸の動画の場合テンポは ♩ = 120 でした。それはつまり 四分音符 1 つが 0.5 秒で演奏される計算になります。情熱大陸の楽譜は 4 分の 4 拍子なので、1 小節に が四分音符が 4 つ入る計算です。

つまり 1 小節を演奏するのに 2 秒かかる計算です!!!(キリがよくて動画が作りやすいです。)

ここまでできれば後は簡単です。2 秒ごとに小節番号を 1 つ増やしていけばいいのです。
曲の進行に合わせて繰り返しなども考慮に入れつつ、曲の終わりまで練習番号と小節番号のフレームを追加していきましょう。

effective-teaching-32.png

第三段階

すべてのパートの動画を作成していきます。

大変かと思いきや、そんなことはありません。
一度作ってしまえば、後は音源を入れ替えるだけなので、作業は少なくて済みます。

今年作った情熱大陸の動画は 15 パートありました。

第四段階

それぞれのパート別の動画につき、動画の再生速度の異なるものを 3 つ作成しました。

66% 75% 100%と3パターンの再生速度を変えた動画をパート音源別に作成します。
これにより児童は自分のスキルに応じて再生速度を選んで練習できます。

もしパート別の音源が 15 個あった場合、且つそれぞれの動画の速さを 3 段階に分けて作った場合
15×3=45
つまり 45 個もの動画を作成することに途方もないように感じます。しかし効果は絶大です。先行投資と思って頑張りました。

すべての動画を書き出す作業は 1日から 2日かかることがあります。夏休み中の作業をお勧めします。

動画で授業を進めてみて

初めは動画を使って個人練習する方法をみんなで勉強しました。

困っている子が再生速度を遅い動画を選択して、
自分のペースに合わせて練習している様子
苦手な小節を繰り返し練習している様子
などなど、動画を活用してくれているようでうれしかったです。

動画作成のメリットは以下の3つです。

メリット 1 | 児童の自立

子どもたちは自立して練習を取り組めるようになりました。音楽と楽譜の結びつきを助ける動画が、練習の助けになっています。
作った動画が学級の演奏力の基礎を固めることに寄与できたと感じました。

メリット 2 | 指導の効率化大幅アップ

ほとんどの子が自立して練習できるので、教員は本当に楽器を弾くのが苦手な子をサポートすることができます。

それにより全体のレベルを、1 人で動画なしで指導するときより、
短時間で高レベルに引き上げることができたと思います。

メリット 3 | 全体指導のしやすさ

全体練習の時、序盤は音源をかけながら合奏することが多いです。(自転車の補助輪のようなイメージです。)
その際、練習記号や、小節番号を介して、動画と楽譜がリンクしているので、途中の小節からの練習も容易になります。
演奏指導の経験が浅い私にとって、本当にありがたかったです。

学び

この記事では、日々のちょっとした困りごとに向き合う手段として「エンジニアリング」という言葉を使いました。
大げさな道具や技術がなくても、身の回りの課題を小さな工夫で解決できることがあります。
それがうまくいったときって、やっぱりちょっと嬉しいですよね。

エンジニアに転身して1年。
今後は、ソフトウェア開発というフィールドの中で、この「困りごとに工夫で向き合う」姿勢をもっと活かしていきたいと考えています。

たとえば──

  • 手作業の多い業務フローを自動化して、時間とストレスを減らす
  • チーム内での情報共有を効率化する小さなツールを作る
  • 「使いやすさ」を考えたUI設計で、誰でもスムーズに操作できる仕組みを整える

今の時点で、できていることはあまりないですが精進していきたいです。

教育現場でもエンジニアの現場でも、「ちょっと困った」を「ちょっと工夫」で変えていく視点を持ち続けていたいなと思います。

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