本記事ではクラウド導入フレームワークのパースペクティブについて説明していきます。かなりややこしいので大枠を掴める用に簡潔な説明を心がけます。
ビジネスパースペクティブ
戦略管理
クラウドが長期的なビジネス目標をどのようにサポートおよび実現できるかを検討し、目標達成を加速させます。
ポートフォリオ管理
ビジネス戦略、運用効率と提供能力に従ってクラウド製品と取り組みに優先順位を付けることでビジネス目標達成を加速させます。
イノベーション管理
クラウドを活用して新規または既存のプロセス、製品の開発や改善を行います。クラウドではリソースのプロビジョニングやシャットダウンをすぐに行えるため、価値を実現するまでの時間を短縮し、イノベーションにかかるコストとリスクを削減できます。
製品管理
顧客に製品としてライフサイクル全体で繰り返し価値を提供するデータおよびクラウド対応製品を管理します。 データおよびクラウド対応の製品を中心にチームを編成することで俊敏性を高め、より顧客中心になることができます。
戦略的パートナーシップ
クラウドプロバイダーとの戦略的パートナーシップによってビジネスを創出または拡大します。
データの収益化
データを活用してビジネス上の利益を得ます。クラウドは大量のデータの収集、保存、分析を容易にします。
ビジネスインサイト
リアルタイムインサイトを得てビジネス上の課題を解決します。リアルタイムの詳細なインサイトにより業績の追跡、意思決定の改善、運用の最適化が可能になり、データ収益化戦略の実施に役立ちます。
データサイエンス
実験、分析、機械学習を活用して複雑なビジネス上の問題を解決します。予測分析と処方的分析により運用の有効性、意思決定、顧客や従業員のエクスペリエンスの改善が可能になり、データ収益化戦略の実施に役立ちます。
人員パースペクティブ
文化の進化
DXの目標、俊敏性、自律性、透明性、スケーラビリティのベストプラクティスにより組織の文化を評価し、段階的に進化させ体系化します。
トランスフォーメーションのリーダーシップ
リーダーシップ能力を強化し成果重視の横断的な意思決定を可能にします。クラウドトランスフォーメーションを成功させるには、リーダーはテクノロジーと同じくらい人員の変革に重点を置く必要があります。
クラウドフルエンシー
自信を持って効果的にクラウドを活用してビジネスの成果を加速する人員の能力を高めます。最も大きな課題は、テクノロジー自体ではなく、才能、知識、経験を備えたパフォーマンスの高い人材を雇用、育成、維持し、モチベーションを高める能力です。
ワークフォースのトランスフォーメーション
人材を育成、役割をモダナイズ、重要な能力を自律的に高めることができるデジタルフルエンシー、パフォーマンス、適応力の高い人材を育成します。
変革の促進
現在から将来の状態への移行時の人員、文化、役割、組織構造への影響を特定して最小限に抑えるプログラムによる変革促進フレームワークを適用することで、新しい働き方の導入を促進します。
組織設計
新しいクラウドの働き方に合わせて組織設計を評価し、トランスフォーメーションの取り組みを進めるにつれて進化させます。また、変革の事例を確立し、ビジネスの成功にとって重要な要素であると判断した望ましい行動、役割、文化が組織設計に反映されているかどうかを評価します。
組織の連携
組織構造、ビジネスオペレーション、プロセス、人材、文化の関係を確立、企業が市場に迅速に適応し、新しい機会を活用できるようにします。クラウドの価値実現を推進するために、組織の連携がテクノロジーとビジネス戦略の架け橋となり、テクノロジーの変革がビジネスの成果を生み出すビジネスユニットへ受け入れられるようにします。
ガバナンスパースペクティブ
####プログラムおよびプロジェクト管理
相互に関係するクラウドの取り組みを柔軟かつ調整された方法で提供します。複雑で横断的なクラウドトランスフォーメーションの取り組み では、慎重な調整が必要です。これらの相互関係の多くはその時々でのみ明らかになるため、プログラム管理は特に重要です。
利益管理
クラウドへの投資によるビジネス上の利益が確実に実現され持続するようにします。トランスフォーメーションの成功は、その結果として生じるビジネス上の利益によって決まります。必要な利益を事前に明確に把握しておけば、クラウドへの投資に優先順位を付けて、トランスフォーメーションの進捗を長期的に追跡できます。
リスク管理
クラウドを活用してリスクプロファイルを低減することができます。インフラストラクチャの可用性、信頼性、パフォーマンス、セキュリティに関連する運用リスクと、評判、ビジネスの継続性、変化する市場に迅速に対応する能力に関連するビジネスリスクを特定して数値化します。
クラウドの財務管理
クラウドの支出を計画、測定、最適化します。
アプリケーションポートフォリオ管理
ビジネス戦略をサポートするために、アプリケーションポートフォリオを管理および最適化します。効果的なアプリケーションポートフォリオ管理機能によりアプリケーションの無秩序な増加を最小限に抑え、アプリケーションのライフサイクル計画を促進しクラウドトランスフォーメーション戦略との継続的な整合性を確保します。
データガバナンス
ステークホルダーの期待に応えるため、データに対する権限と管理を行使します。
データキュレーション
メタデータを収集、整理しデータカタログにデータ製品のインベントリを整理するために使用します。データカタログはデータコンシューマーが該当するデータ製品をすばやく見つけて出所や品質などのコンテキストを理解できるようにすることでデータの収益化やセルフサービスの分析を促進します。
プラットフォームパースペクティブ
プラットフォームアーキテクチャ
クラウド環境のガイドライン、原則、パターンを確立して維持します。Well-Architected によるクラウド環境は、実装の迅速化、リスクの軽減、クラウドの導入の促進に役立ちます。
データアーキテクチャ
目的に合ったデータおよび分析アーキテクチャを設計して進化させます。適切に設計されたデータおよび分析アーキテクチャは、複雑さ、コスト、技術的負債を低減するとともに、急速に増えるデータから実用的なインサイトを得るために役立ちます。
プラットフォームエンジニアリング
セキュリティ機能が強化され、パッケージ化された再利用可能なクラウド製品を使用して、コンプライアンスに準拠したマルチアカウントクラウド環境を構築します。
データエンジニアリング
組織全体のデータフローを自動化します。自動化されたデータおよび分析のプラットフォームとパイプラインは生産性の向上と市場投入までの時間の短縮に役立ちます。
プロビジョニングとオーケストレーション
承認済みのクラウド製品のカタログを作成および管理してエンドユーザーに配布します。組織が拡大するにつれインフラストラクチャのプロビジョニングの一貫性をスケーラブルで繰り返し可能に保つことは難しくなってきます。
モダンアプリケーション開発
Well-Architected によるクラウドネイティブのアプリケーションを構築します。
継続的インテグレーションと継続的デリバリー
従来のソフトウェア開発プロセスやインフラストラクチャ管理プロセスを使用している組織よりも速くアプリケーションやサービスを進化させ、改善します。
セキュリティパースペクティブ
セキュリティガバナンス
セキュリティ上の役割、責任、説明責任、ポリシー、プロセス、手順を策定、維持、伝達をします。
セキュリティ保証
セキュリティプログラムとプライバシープログラムの有効性を継続的に監視、評価、管理、改善します。
アイデンティティおよび許可管理
アイデンティティと許可を大規模に管理します。効果的なアイデンティティおよびアクセス管理は適切なユーザーやマシンが適切な条件で適切なリソースへアクセスする環境構築に役立ちます。
脅威検出
潜在的なセキュリティ上の設定ミス、脅威、予期しない動作を把握および識別します。セキュリティ脅威について理解を深めることで、保護管理の優先順位付けが可能になります。効果的な脅威の検出により、脅威により迅速に対応し、セキュリティイベントから知見を得ることができます。戦術的、行動的、戦略的なインテリジェンスの目的と全体的な手法について合意します。関連するデータソースのマイニング、データの処理と分析、インサイトの周知とオペレーション化を行います。
脆弱性管理
セキュリティの脆弱性を継続的に特定、分析、対応、評価します。脆弱性は、既存のシステムへの変更や新しいシステムの追加によっても発生する可能性があります。
インフラストラクチャの保護
意図しない不正アクセスや潜在的な脆弱性からワークロードのシステムやサービスを保護します。
データ保護
データの可視性と管理、組織内でのデータのアクセス方法と使用方法も維持します。意図しない不正アクセスや潜在的な脆弱性からデータを保護することは、セキュリティプログラムの重要な目的の1つです。
アプリケーションのセキュリティ
ソフトウェア開発プロセスでセキュリティの脆弱性を発見して解決します。アプリケーションのコーディング段階でセキュリティ上の欠陥を見つけて修正するため、時間、労力、コストを節約でき、本番環境での稼働時にはセキュリティ体制に自信を持つことができます。
インシデント対応
セキュリティインシデントに効果的に対応することで、潜在的な被害を減らします。
オペレーションパースペクティブ
可観測性
インフラストラクチャとアプリケーションのデータから実用的なインサイトを得ます。
イベント管理 (AIOps)
イベントを検出し、その潜在的な影響を評価して、適切な対応を決定します。ノイズの除去、優先度の高いイベントの重視、差し迫ったリソースの枯渇の予測、アラートとインシデントの自動生成、考えられる原因と是正措置の特定が可能になることで、インシデントの発見と対応にかかる時間を短縮できます。
インシデントおよび問題管理
サービスの運用を迅速に復旧し、ビジネスへの悪影響を最小限に抑えます。
変更およびリリース管理
本番環境へのリスクを最小限に抑えつつ、ワークロードを導入および改善します。
パフォーマンスおよびキャパシティ管理
ワークロードのパフォーマンスをモニタリングし、キャパシティが今後の需要を確実に満たすようにします。
構成管理
すべてのクラウドワークロードの長期にわたる正確かつ完全な記録を保持します。効果的に管理しないとクラウドリソースのプロビジョニングの動的かつ仮想の性質により構成ドリフトにつながる可能性があります。
パッチ管理
ソフトウェアの更新を定期的に適用します。ソフトウェアの更新は、新たなセキュリティの脆弱性に対処し、バグを修正し、新しい機能を導入します。パッチ管理の定期的なアプローチにより、本番環境へのリスクを最小限に抑えつつ、最新の更新のメリットを得ることができます。
可用性および継続性管理
重要な情報、アプリケーション、サービスの可用性を確保します。
アプリケーション管理
アプリケーションの問題を一元的に調査および是正します。アプリケーションのデータを単一の管理コンソールに集約することで運用の監視が容易になるため、アプリケーションのトラブル対応が迅速化されます。
参考文献